電子レンジ(2)

投稿者: 真木魔愛 | 投稿日時: 2006年08月29日 21:34

今日は、電子レンジ~院長室編~です。

院長室には、生活必需品はたいてい揃っていました。
冷蔵庫、乾燥機、洗濯機やオーブン電子レンジもトースターも、それから、マッサージチェアとか、クローゼットは言うまでもなく・・・です。

入職した直後、院長が通信販売で購入した(ちょっと高そうな)、冷凍ピザを焼いてくれと言われて・・
焼きました。
説明書きにある通りの時間と温度で、オーブンレンジを設定しました。

スタートボタンを押して・・・

それから、電話や書類の処理で目を離すと・・

秘書室裏の狭い台所から、強烈な焦げた臭いと、もくもくと煙が・・
急いでオーブンレンジの扉を開けると、ピザは真っ黒け・・

アァ~~、一体何がおこったのか、こんなはずじゃあ・・

「腹減った、腹が減って死にそー。ピザはまだか」

と院長室で唸っている声に、思わずその黒こげを捨てて、別の冷凍ピザを焼きなおそうとしたら、
それに気づいたらしい院長が、いつになく静かに怒るのです。

「戦争で食べ物がなかった時代に育った人間の前で、あなたは食べ物を粗末に捨てるのですか!それに、腹が減ってもう待てない。あなたはピザ一枚まともに焼けないのですか。私は非常に哀れな上司です」と・・・

「ああ、でも、こんな黒こげを召し上がっていただくわけには・・・」
しどろもどろの私の手から、捨てようとした黒こげピザをもぎ取って、お皿に乗せて、院長室でパリパリほおばり始めました。イカ墨じゃあるまいに、唇を黒くしながら。

「あの、お体に良くないと思いますが・・・」
「あなたは、医者に説教するのですか」

そこに、アポのあった用度課長がやってきて(院長はいつも職員の前で会議しながらご飯を食べてました)、お歯黒のような顔でピザを食べる院長を一瞥してから、私を冷ややかな目で睨みました。

もォ・・・どうすれば・・

何がいけなかったのかと、オーブンレンジをもう一度点検しようとしたら、

「それさ、前から調子悪くてさ。壊れてるんだよ。もともと・・・」

そう、院長は知っていてピザを焼けって言ったのです。

その翌日、用度課長が新品のオーブンレンジを院長室に届けてくれました。
(用度課は病院の物品や薬品の購買を担当する部署です)

自宅の電子レンジは、部品代300円、15分で完治しました。
出張費、修理代を含めて支払いは8900円なり。
まあ、買いなおすより、はるかによかったです。
やれやれ・・

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コメント

院長先生に少し接近出来そうになりました。素晴らしい資質もお持ちだった事に気付き、思わずふきだしました。物を大切にする教育の一歩、なかなかの人物、今日始めて院長先生と握手をしたくなりました。
真木さんの情景描写にも脱帽です!!
食糧難の時代、原色だの砂糖がどうだの、全く関係なし、お腹に入る物なら何でもカム、カム、でしたよ!!

マメちゃん、
「院長室の愉快な仲間たち」っていうのはどう?

拝啓、のんち殿、
院長室の愉快な仲間達。素晴らしいタイトルと絶賛致します。

>m,n。様 のんち様

タイトル、いいかも!!

確かに、今となればみんな愉快な出来事でした。

関心を寄せていただき、ありがとうございます。

m,n。様
拝復、賞賛のコメントありがとうございました。
ブログってこんな風に対話できる楽しいものだったのですね。