第8回

投稿者: | 投稿日時: 2006年09月06日 15:02

このころ、治療と平行し、
主治医の了解を得たうえでセカンドオピニオンを受けていた。

ここでも「上腸間膜動脈症候群」という稀な病名が診断されるまで、
何度も「まさか・・・」と疑われ、
その度にさまざまな検査を受けてきた。

改めて受けたCTでは、
放射線科のドクターも消化器内科のドクターも
上腸間膜動脈症候群であると診断し、

最終的には胃と食道の専門外科で十二指腸造影をしてもらい、
やはりそうであろうという結論に達した。

私は外科のドクターに懇願する。

「中心静脈栄養をせずに、いきなり手術をしてもらえないか・・・」

1ヶ月の休業をなるべく合理的に使いたかったのだ。

当然、答えは「NO」だった。
丁寧に、そして明確に治療の選択肢とメリットデメリットを説明したうえで、
「お腹を切らずに済むのであれば、切らないほうが患者も医者もハッピーでしょ」
と私をやさしく諭した。


これまで、誰もが一方的に中心動脈栄養療法を勧める中、
はじめて手術についてきちんと説明を受けたことで、
ようやく気持ちの整理がついた。

「まず、中心静脈栄養で体重を増やす治療をしてみよう」


ここまでの長い迷いは、

ドクターも私も、

まさか入院するほどのことでもないだろうと考えていたこと、
対症療法をしているうちに、痛みはいつかなくなるのではないかと考えていたこと、

そして、尋常ではない食生活に痩せていく危機感を持ちながらも、
人生最大の体重にして内臓脂肪を付けるという「フォアグラ療法」が、
私の中の狂った美意識を納得させることが難しかったこと
が理由だ。

人前に出る仕事ゆえ
「太ることは悪いこと」という潜在的な価値観に支配され、
治療に踏み切ることができなかったのだと思う。


上腸間膜動脈症候群とはじめて診断されてから4ヶ月、
長い道のりを経て、ようやく治療のスタートラインにたった。


<<前の記事:水に落ちた犬    おおきなルーヴルの小さな物語:次の記事>>

コメント

おー、手術するのかと思って
ドキドキしてしまいました。

森さま。

お辛い思いを経て、ご自分のお気持ちの整理をされてきたこと、すごいことと思います。