死因究明検討会5 |
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投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2007年07月13日 12:35 |
本日は平河町の都道府県会館会議室にて。
ただし、その後で
帰郷するロハス・メディカルのサポーターさん
の壮行会みたいなことをするので
傍聴記のアップロードは少し遅れるかもしれません。
あしからずご了承ください。
では、とりあえず壮行会へ出発するまでに
書けるだけ書いてしまいます。
この日は
これまでの議論で参考人や委員から出された意見を
事務局が試案の柱立てに沿って箇条書きにした
「これまでの主な議論」という資料が出てきて
これに沿って委員が議論を深めるという議事次第。
いつものように
資料は厚生労働省サイトにアップされるのを見てほしい。
事務局の佐原康之・医療安全推進室長が25分ほど説明してから
議論に入った。
前田座長
「多くの論点を忠実にまとめていただいていると思う」。
確かに検討会の場に出たものは幅広く拾っている。
しかし、あの膨大なパブリックコメントは一体どうなった?
参考人や委員は厚生労働省が選んでいるのだから
厚生労働省の意に沿わない意見は
議論の俎上から消えてしまったことになる。
今日の議論がシャンシャンだったら
この点をネチネチ書くところかもしれないが
この日は委員の方々が本質的なことを述べあって
実に有意義だったと思うので
あまり茶々を入れずに報告していきたい。
前田座長
「だんだんまとめの段階に入ってくるので
できるだけ全員にお話しいただきたい。
まずは、『策定の背景』から。
これまでの所、特に議論はなかったが追加があれば」
鮎澤委員(九大准教授)
「冒頭が『患者・家族にとって』という文言で始まっているけれど
同じことが医療従事者にとっても願いである。
今後の書きぶりの中に
共通の願いであるということを加えていただきたい」
前田座長
「事務局よろしいですね」
いきなり事務局へ振った。
事務局がすべて作文していることを語るに落ちてしまうと
思ったか、佐原室長
「ここに書いてあるのはご議論の結果だから
そのようなご議論を積み重ねていただければ」
前田座長
「そのような発言があったわけだから」。
ごもっとも。
そして佐原室長の
「文言を入れたければ発言せよ」という言葉が恐らく契機となって
いきなりここから事務局にも座長にも制御不能の本質論へと
入っていく。
樋口委員(東大教授)
「繰り返しで恐縮だが、『真相究明』の言葉の意味が
この組織が何を目的にするかによって全て異なる。
刑事責任を考えるなら疑わしきは罰せずが原則で
謙抑的でないといけないので真相も限定的なものになるだろう。
被害者救済に目的があるなら疑わしきは救済という話で
真相にズレが出る。
再発防止だとすれば、その時点では専門家の判断として
仕方なかったかもしれないが
数か月とか年とか経って考えれば
こういう選択肢があったのでないか
今考えれば本当はこちらだろう、そういうことまで考えたうえで
真相究明ということになる。
真相がキーワードだが多義的なもので
あらゆる真相究明をしようと第三者機関に何でもやらせると
結局何にもできなくなる
その難しさの認識は共有した方がいい」
確かに樋口委員が初回の検討会で整理して
そのままになっていた。
前回の検察・法務からの意見聴取もそうだが
こんな「そもそも」の話を残したまま
本当にとりまとめるつもりだろうか。
前田座長
「再発防止だけというわけにはいかない。
刑事・民事にもどう使えるか考えないと。
再発防止だけと大上段にやっちゃうと止まっちゃうというか
刑事はまったく別という話になると
刑事に原則行かないようにするというもくろみが外れる。
真相究明は確かにマジックワードで複雑だが
広い意味での真相究明を目指すしかないのでないか」
苦しいっ! だが、まだ座長の権威は保たれていた。
高本委員(東大教授)
「鮎澤委員の発言に付け加えたい。
患者・家族と医療従事者が二つに分離しているが
医療とは、そもそも両者が共につくりあげる事業だと思う。
こういうコンセプトの方がいい。
医療者側は患者や家族に十分説明しないといけないし
その代わり患者も医療に責任を持たなければいけない」
明らかに記録に残すことに意義を見出した発言と思われる。
前田座長も心得たもので
「資料は今までの議論を忠実にまとめたものだから
今のご指摘は重要なことで
次回の議論につないでいきたい。
『背景」はそれくらいにして
『組織』について議論を進めて参りたい。
評価組織にご遺族が参加することの可否について
もう一歩議論が深まっていないので今回ぜひ発言していただきたい。
監察医制度を充実させる件についてはまだ整理がついていない。
この問題は難しいので強い意見がない限り
今回はこれに留めさせていただきたい。
いかがか」
誰も何も発言しない。
この後に起きたことを考えると、まさに嵐の前の静けさだったと思う。
前田座長も余裕があった。
「特にこちらから指名するというのはしないので、どなたでも。
私は刑事の専門だから裁判のことで言うと
被害者を入れなければいけない方向で動いているのだが
公正なジャッジができるのか、という意味では非常に難しい」
ここで豊田委員(医療事故被害者)
「遺族で参加したいという方はいらっしゃるだろうが
解剖に立ち会うようなことはほとんどできないと思う。
それよりも参加したいという言葉の裏には
病院の調査委員会が信用できないという思いがあるので
第三者組織の公平性が保たれているのなら
必ずしも遺族が参加する必要はないと思う。
調査段階で弁護士の代理人を頼んでいる人は少ないので
代理人に入ってもらうと言ってもなかなか難しいが
信頼できる誰かに第三者的に入ってもらえるなら
遺族も納得・理解はできると思う。
私の場合も、調査委員会を開く前に聞き取りされなかった。
それが信用できないという思いにつながった。
きちんとされていれば必ずしも遺族が入る必要はないと思う」
前田座長
「調査機関が信頼感を得ることができる
遺族からも刑事からも
そのことが最終的には重要。
一番根底にあるのは公明・公正・フェアな組織ができれば
ほとんど解決すると思う。
それを目指していくべきだろう」
組織を構成する人間の人柄に依存せず
システマティックに
そんなことを保証できるものだろうかという疑問はある。
が、法律家だから、こういう抽象論でいいのだろう。
この続きは明日。