10・03中医協傍聴記

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2007年10月03日 12:43

本日も「エコノミー席」にぎゅうぎゅう詰めにされて参りました。
行われたのは
診療報酬基本問題小委員会と薬価専門部会。
特に前者が、突っ込みところ満載の面白さだったので
ご報告します。


定刻午前10時の1分前に土田会長が
「1分前ですが皆さん揃いましたので」と開会を宣言。
非常に合理的でステキ!。


土田会長
「まず7対1看護について、特に地方の医療機関に大きな影響を与えていると多くの報道がなされ、当協議会でも建議書を出したところです。その実態について、看護協会に調査を依頼してありますので、まずはその報告から」


なぜ看護協会に頼むのだろう
厚生労働省が自ら調査すべきでないか、というのが素朴な疑問。
誰がどう考えても利害関係者から公平な調査結果など
出てくるはずがない。
医師についても、製薬業界についても
たぶん同じことをやっているに違いないとにらむ。


で、その報告書がどのような代物であったか。
いつもは厚生労働省サイトにアップされるのを待つところだが
現物がないと始まらないので、とりあえず見ていただきたい。


総論


回答率の低さは気になるものの
これだけ見ると7対1は結構な話のようである。
ところが、その根拠を見ると、オイオイと言いたくなる。
まず、これ。


看護職員を確保できた割合


看護職員を確保できた割合は7割?
この数値を素直に見れば
全国の病院が募集した数に対して充足したのが7割であって
7割の病院が看護職員を確保できたのとは全然違うだろう。


断っておくが
個人的には7対1看護は素晴らしいことだと思うし
私が入院するのでも、そういう病院の方がありがたいと思う。
ただし、
「理念が素晴らしいのだから、現状も素晴らしいのだ」式の
報告書を出すのが果たして誠実な態度と言えるのか?


理念は素晴らしいけれども運用がマズいということは
世の中で多々起きることであり
正確な事実認識からスタートしなければ
せっかくの理念さえ、その輝きを失ってしまう。


発表の後で委員たちから突っ込みの入ったものを並べておく。
理由の上
理由の下
離職者増減


では、発表後に委員たちからどのような突っ込みが入ったか
書きとめていく。
病院側の委員(誰か不明)
「7対1看護達成のために一般病床が2万床削減されたという事実がある。全国的にも病棟の閉鎖・縮小の話はよく聞く。それでも看護師7万人が足りない。7対1看護はもちろん理想だが、私たちなりの問題意識でお尋ねしたい。看護職員確保対策の実施割合だが、7対1のところとその他のところを比較しているのでなく、7対1と全体とで比較しているので、ボヤケていないか。配置基準の引き上げか現状維持希望が96%だということだが、医療機関が引上げを希望するのは当たり前で、この結果にどういう意味があるのか。確保できた要因の第一位が「教育研修」になっているが、これは元からあったのか、それとも新たに作ったのか。(中略)一方で確保できなかった病院が挙げる理由の第一は「給料」。これについてどう考えるか、ご説明願いたい」


看護協会
「給与水準に関してはデータを出していない。看護協会では4年に1度、大規模な病院諸調査というのを行っており、次回のものをこれからやっていこうという段階。「引き上げる」が希望を述べているだけというご指摘だが、そういうこともあろうが、4月で前年の採用が決着ついた段階での聴き方なので、結果との相関はあると捉えている。回答者はあくまでも看護管理者や人事担当者であり、被採用者ではないので、採用する方が考えている要因だが、確保できなかった理由としては①給与②知名度③確保対策が乏しかったということだった」


西沢委員(全日本病院協会会長)
「私たちの感覚からすると、回答してくれる病院というのは比較的いい病院だと思う。その意味で回答率の%が低い。回答しない、できない病院にこそ悲惨な病院があると思われるので、その点に留意してもっと調査してもらえないか。それからこの解析結果は誤解させている部分があると思う。離職が減ったと言うけれど、離職が増えた病院の数も同じくらいある。もともと看護協会は離職者が多いという問題意識で提言されてきたわけだから、離職者が減ったのは27%に過ぎなかったと見るべきなのではないか」


看護協会
「回答率に関しては、これが調査の限界であり、調査結果から何を抽出できるかしかないと思う。私も管理者をしたことがあるけれど、病院というのは大抵募集人員を膨らましているものなので、募集の7割から8割確保できれば何とか廻る。その意味で平均値が7割ということ。離職率は必ずしも低くないが、それが減ったところに注目してみたいと思った結果、配置と相関があるとの見方になった。逆に増えたの方は、特に格差が読み取れない」


こんなに開き直っても許されるものなのだろうか。
うん、たぶん許されるんだろう。
何しろ看護協会が身銭を切って調査したんだから
どう調査しようが、ある意味勝手。
文句を言うなら、自分たちで調査しろということだな。
でも、こういう調査っていくらかかるのだろう?
腰ダメで弾いても1億円はかからないよな。
何兆円の使い道を話し合うのに
何千万円の調査費を惜しむというのも妙な話だ。


土田会長が
「2005年との比較はないんですか」と問い
看護協会の代表者が
「ちょっと手元にない。そういう切り口では調査していないので」
と廻りくどく答えようとしたところで
「あっそうですか、はい」と、ブッタ切ってこの説明は終了。


次に事務方が
看護師配置と看護必要度の相関について抽出調査した結果を説明。
現行、ICU管理料やHCU入院医療管理料を算定する際に
用いている処置内容のA得点、生活上の世話のB得点で
測ってみたという。
こちらも回答率が異様に低いのであるが
看護師配置と看護必要度との間に
全然相関がないという結果になったらしい。
それを受けての委員の発言である。


鈴木委員(日本医師会常任理事)
「中医協として建議書を出し、実情に配慮すること、節度をもった看護師募集を呼び掛けたにもかかわらず効果があまり表れていない。建議書が尊重されていないことが大きな問題だ」
まことに失礼ながら
中医協そのものに人々を従わせる力があると
勘違いしていないだろうか。
厚生労働省が人々を従わせようという意思の元に
中医協の名前を使うだけであって
厚生労働省が具体的なアクションを起こしていない段階で
中医協が何を言おうが世の中が従うはずがない。


さらに鈴木委員の発言は続く。
「06年からの1年間で一般病床が18111床消失している。大学病院は6月から7月にかけて7対1を取得していることが多いので、調査時よりさらに7対1は増えたのでないか。これ以上混乱を招かないよう看護必要度で評価と明確に打ち出すべきだ。特定機能病院はDPCなのだから7対1に走らなくてもよいような仕組みに知恵を絞るべきでないか」


保険者側の委員(誰か不明)
「調査の対象のバラつきがA得点については差がなく、B得点についてはむしろ逆転していることか。これをどう考えるかだが、協力を得られた病院の割合が少ないので、ひょっとすると実態を現わしていないのでないか。そう考えないと理解できない。どう解釈しているか。」


医療課長
「回答率が悪かったのは事実。配置基準によって、病床規模や患者さんの特性が変わっているので、年齢が上がれば介護度にあたるB点数が高くなるところが出てきたのだろう」


再度同じ委員と思われる(誰か不明)
「7対1には13対1より5割くらい高い金額を払っているのに、支払い側として一体何をやっていたのかということになる。7対1というのが、単に看護師さんが多くついているだけのことで患者さんの状態が変わらないのなら、基本から考え直さないと」


病院側の委員(誰か不明)
「DPCの時も特定機能病院に限って始まったはずなのに、気づけば全病院に適用が広がってしまった。この問題も、きちんと議論しないと。10対1に残っている54の病院が7対1になったら大変だ。特定機能病院には、運営交付金も委託研究費も入っているのに、それが一般病院と同じように行くことを容認していいのか。基本に立って考え直すべきでないか」


保険者側の委員
「患者をたくさん抱えると配置基準が下がる。だから患者を受け入れないということが起きていないか。それは医療難民につながらないかと思うのでデータを出してほしい。民間の経営判断なら、そうなる」


医療課長
「その指標は病床利用率になろうかと思う。最近の報告では90万床のうち75%程度しかないので患者が入れないという状況は全国的に見ればないのでないか。部分的にはあるかもしれないが。ただ患者さんを減らして7対1にするのがよいのか、増やして10対1にするのがよいのかは、他の医療も含めて考えることでどちらがよいとは限らないのでないか」


再度同じ委員
「データを出してもらってから話しましょう」


別の保険者の委員
「7対1自体が悪いことではない。プラスの面も評価すべきで、限られた看護師の中でどう実情に配慮するかということなんだろう。ベッド数が減っているのは7対1より医師不足の方がもっと大きくないか。今は過程の話であり、点数が妥当かとか必要度がどうかとかはまだ検証されていない段階だと思うので、もう一度議論すべきと思う」


誰か不明
「地域的な分析や機能別、病棟ごとのデータがあれば」


土田会長
「まだ議論続くので、現段階のことをある程度集約しておきたい。そのうえでさらに何かあるということならお聴きする。(中略)A得点、B得点の基準で検証してもらうと明確な差異が出てこない。本当に差異がないのか基準の取り方が悪いのか、もう少しキメの細かい調査を行ったうえで改めて看護必要度について議論したい、ということで集約したい。よろしいか」


看護協会の代表(?)
「今日の調査でも分かる通り、一般病床の状況を拾わないと(意味が理解できず)」


土田会長
「では、次の議題。その前に事務局には調査を早急に進めていただくよう」


議題は、小児科へさらに加算を行うべきでないかという件に移る。


病院側の委員
「常勤医師が20人、30人いるところに加算するということだが、その加算を取れるとすれば県立こども病院くらいしかない。集約化して地域の中から医師がいなくなっている。小児科の特徴として専門特化した施設より地域の中にあることが求められる。

(順次更新します)


<<前の記事:仕掛けより人    配置病院で手に入らない方へ:次の記事>>