NHKインサイダー報道と医療事故調

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年01月19日 11:23

NHK記者のインサイダー株取引事件で
報道各社がいろいろ書いている。
けしからんとか
再発防止には倫理の強化とか何とか。
アホちゃうか、と思う。


どんな組織にも必ず一定数の不心得者はいる
普段は善良な人間であっても魔が差すことはある
これが人間という弱い存在の業であり
そういう弱い人間が邪心を起こさないよう
起こしてもトータルで社会の被害を極小にするよう
システムを組まなきゃ意味がない。


この「実にけしからん」と彼らが言う事態の
再発防止だけを目指すなら
憲法上の問題はさておき
「報道機関職員は
 その名義を問わず有価証券取引を一切行ってはならない」
と自主規定を定め
違反した職員を免職すれば済むことでないか。
メディアで働かない自由もある中でメディアを選んだ以上
個人の財産権の侵害だと主張するのはお門違いも甚だしい。
そんな職員のいるメディアは受け手の信頼を失う。
いたってシンプルである。


こういう単純なことを言えないところに
日本のマスメディアの宿痾が現れていると思う。
メディアに携わる人間が他業界の人間より倫理観が高いなんて
どこの誰が言ったのだろう。
むしろ逆じゃないか?


今回の話はここで終わらない。
もう少し書き加えたいことがある。
インサイダー取引を防ぐことだけが目標なら
上記の解決策で十分であるが
そもそも報道機関に期待されていることとは何なのか
情報に迫らなければインサイダー疑惑もありようがない。


それから、当然のことながら
高給取りの多いメディア業界人の株取引規制をしたら
資本市場への資金の出し手が枯渇し
健全な資本主義が破壊されるという懸念もあろう。


要するに、あちら立てれば、こちらが立たずで
1)報道機関内の情報流通の自由度
  =国民の「知る権利」との関係。
2)報道機関職員の財産権
  =健全な資本主義との関係。
を天秤にかけて
どの辺でバランスを取ると社会の被害が一番少ないかね
と検討しないと実効性などあるわけないのである。
白か黒かみたいなデジタルな話ではないのだ。


だからマスメディアがなすべきは
不心得者が何かしてしまってもなお
マスメディアはあった方がよいのだ、ということを
身をもって証明することしかないのだ。
倫理観がどうのこうのという話ではないのである。


こういう濃淡のある話のバランスを取るということが
日本のマスメディアって本当に苦手だなあと思う。
だから、医療事故調の問題でも
本当は何が問われているのか国民に伝わらないのだと思う。

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コメント

自分でコメントをつけるのもどうかと思いますが
くしくも内田樹先生が同じ日にブログでこの問題を取り扱っているのを発見いたしました。
なるほど、おっしゃる通りだなあ
私の思考はまだまだ浅いなあと思ったので
ここに記しておきます。
http://blog.tatsuru.com/2008/01/19_0927.php

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