恐怖と愛のレッスン |
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投稿者: | 投稿日時: 2008年01月27日 17:12 |
ご無沙汰しております。新年初投稿ですね。
僕は今、一ヶ月間の救急医学の実習の真っ最中です。
実は救急部をまわるまで、患者さんのご臨終の場面に立ち会ったことはなかったのですが、ここでは少なからぬ数の方が、必死の救命の甲斐なくお亡くなりになります。
ひとは一方でとても強く、しぶとい生き物だと思いますが、一方ではいとも簡単に死んでしまいます。
救急部の実習が始まってから、生きることと死ぬことについて自身の内奥から問いかけがじわじわと沸き起こってきて、久しぶりに僕のとっておきの本を取り出しました。
ライフ・レッスン
エリザベス・キューブラー・ロス著
角川書店(文庫でも出ていますが単行本のほうが僕は好みです)
著者のロス博士は僕が尊敬して止まない、ターミナル・ケアの専門家です。有名な死の五段階説、すなわち、人が死を前にしたときにたどる5つの過程について書いた「死の瞬間」はベストセラーになったので、ご存知の方も多いと思います。
彼女はとかく「死とその過程の専門家」と言われますが、ご自身は「生とその過程の専門家」を自負しています。
人は何故生まれてくるのか?その答えを一言で言うならば、魂の成長のためです。
そして、生きている間に学ぶべき14のレッスンがある、と彼女は言います。そのレッスンについて書かれたのが本書です。これは何度読み返しても読み飽きることがない、僕にとっての聖書です。
中でもみなさんに紹介したいのは、「恐れのレッスン」です。
人間には様々な感情がありますが、大きくはマイナスの感情とプラスの感情に分けられます。
マイナスの感情の根幹には、恐怖、とくに死への恐怖があります。プラスの感情の根幹は、愛です。
恐怖とはまったく恐ろしい感情で、人を駆り立てる暗い力になります。そして恐怖は恐怖を呼び込んで雪だるま式に成長します。また、溜め込まれた恐怖は怒りに変わります。
僕はよく、怒りに対して怒りで感情的に対抗してしまいますが、ロス博士はそれをいさめます。マイナスの感情同士がぶつかることは悲劇にしかならず、解決にはなりません(自己啓発本の元祖で有名なD・カーネギーも別の視点から同じことを言っています。対立する相手にどれだけ正しいことを主張しても、それが正しければ正しいほど相手は感情の対立を深めます。そういうときには一言、「あなたのお気持ちはよく分かります。私があなたなら、同じことを言うでしょう」と前置きすればよいのです)。
恐怖に打ち勝てるものは愛であり、愛以外にはないのです。
卑近な例で言えば、次のようなことです。
電車が遅れたことに腹をたてる→遅刻して会社で上司に怒られるのが恐い→信用を失って首を切られるのが恐い→社会から取り残されて死んでしまうのが恐い
こんなときには、次のように考えたらよいでしょう。
電車の運転手は、遅れたというプレッシャーに耐えながら一生懸命運転しているのだ。JRだって、電車が遅れたことによる経済損失がある。上司だって、部下がよい成績を上げられなかったら上層部から怒られるリスクにさらされている。つらいのは彼らだって同じなのだ。
そうすれば、怒りの中に慈悲の心がわいてきて、怒りが収まっていきます。他者に対し、また自分に対して慈悲の心を持つことで恐怖に打ち勝つことができるのです。
ロス博士は、人間が生まれながらに持つ自然な恐怖は、高所に対するものと、大きな音に対するものの二つだけだと明言します。あとの恐怖は、大人達から吹き込まれた人工的な恐怖なのです。人工的な恐怖は、無条件の愛によって消し去ることができます。
いまテレビをつければ、不安を駆り立てるような暗いニュースしかありません。世の中から不安や恐怖と言う感情がなくなったら、どんなに素敵でしょうか!
また、死ぬとはどういうことなのか?という疑問に対しては、ロス博士の次の本が参考になるでしょう。
死の瞬間と死後の生(death is of vital importance)。
(鈴木晶訳 中公文庫)
ここに書いてあることを受け入れるかどうかはみなさん次第ですが、受け入れるならば、人生がずっとラクに、楽しく生きられるようになりますよ☆
それではまた。
Matthew