安心と希望のビジョン会議9(最初から)

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年05月31日 16:14

ハイライトから後ろを昨日のエントリーで記した。
本日は、最初からハイライトのところまで。


舛添要一・厚生労働大臣
「今日は大体の骨格についておまとめいただきたい。国民に安心・安全を提供するというのが内閣の大きな課題であり、医療ビジョンも大事な局面にある。よろしくお願いします」


野中博・野中医院院長
「はじめに、が大事。各論を議論する前に国民や社会において、医療がどういう意味を持っているか捉えておかないと。国が国民に対して保証する事業だと思う。それを国民みんなで国の指導のもと支えていこうということ。ぜひ、その視点を冒頭に入れていただきたい。そうすれば、やらさせるのではなく、自ら取り組む身になって考えられるだろう。国民皆保険には1人1人に役割がある」


松浪健太・厚生労働大臣政務官
「野中先生のおっしゃったことは最も重要だと思うのだが、安心というのが現在の、希望というのが将来への持続性、それをいかに国民に信じてもらえるか、そういった図をつくって事務局にも渡してある。

ここでは5項目になっているが、まとめると、医師数の問題、医療機関のネットワークの話、医療者と患者の協働の話であり、3つにした方が分かりやすいと思う。それから順番も大事で、最も最初に来るべきは医師数ではなく、医療者と患者の協働の話であり、それからネットワーク、最後が医師数でないか。並べ方がどうか。構成をしっかりすることが政策に反映されるので考え直すようお願いしたい」


矢崎義雄・国立病院機構理事長
「このペーパーは過去8回をよくまとめていただいているが、問題が羅列的で確かにインパクトが少なくなる面はあるかもしれない。今おっしゃられたように構成を組み換えていただいたりしたら。問題はすべて尽くされていると思うが」


辻本好子・COML理事長
「確認だが、検討、推進、普及、強化という文言が出てくるのだが、これの区分けはどういうことか」


事務局
「これまでの議論を踏まえて、若干は事務局の考えも入っているかもしれないが、議論の煮詰まり具合を表現したつもりだ。もちろん現実にどこまで進められるか、さらにご議論いただければ」


辻本
「検討、というのは検討会を開くという理解でよろしいか」


事務局うなずく。


西川京子・厚生労働副大臣
「私も順番の件は同感だ。結局、国民にも役割分担してもらうことが必要なのであって、一方的に行政だけが提示するものではないだろう。その意味では国民きちんとメッセージを出す必要がある。一方で書きぶりによっては、責任転嫁してんじゃないのという見方をされる危険性ははらんでいる。両側からというのが正しいだろう。3つぐらいにまとめた方が良いというのはその通りだと思うが、私は救急医療のことが一番身近で不安に感じていると思うので、もっと大きな柱でよいのでないか。

それから、これは大臣の考え次第ではあるが、財政の問題が全く出てこないのもおかしいと思う。議論はすべきだろう」


辻本
「ないな、ないなと探し回ってしまったのだが、学校教育の問題がすっぽり抜けてしまっている。ぜひ加えていただきたい。私自身の医療教育のことを思い返してみると、親が先生に盛んにおじぎをしているパターナリズムの後ろ姿を刷り込まれたところから始まっている。いくら患者本位の医療とおだてられても、刷り込まれた部分からの意識変化は難しい。逆に、これからの子供たちにどういう刷り込みをしていくかが将来のビジョンに大きな影響を与える。医療者をどう上手に活用するか、ということは小中高の教育でやっていけるのでないか。

これが省かれちゃったのは、文部科学省との関係があるからだろうかと思ってしまうのだが、公務員制度改革も明るい兆しが出てきた。人事異動も含めて積極的に行うよう、ビジョンに加えていただきたい」


舛添
「これからの方向性として、情報を国民と共有するのが当然。知らないものを医師が恵むなんてことにするとおかしいので、国民が知らないのは良くないとハッキリするべきだろう」


野中
「それは結局、患者さんの痛みに医療者がどうやって向き合うかなのであろうから、ぜひはじめに、に入れていただけると。というのが適切な効率的な受診とは何なのかということを考えた時に、コンビニ受診は患者にとって便利なのかもしれないが、実は患者にとって不幸なことをしないといけないから医療者は困るわけで、そこはきちんと啓蒙が必要。保険者が本来はそういった情報を提示する役割があると思う。

救急体制の充実も大事だが、やみくもに使うのは不幸。それから治すと支えるで言えば、充実すべきは『治す』の方だが、『治す』だけでは100%でないので、直している最中から支える観点も必要だということ。それから、そういったことを医療の恩恵を受けていない国民にも働きかけないとダメ。

短時間正職員を書き込んだのは大事なこと。医療者の担う責任を考えたら当然。しかし、一方で雇用する側からすると負担が大きな課題。どうやって実現するか考えると、どうしても費用が必要だと書いておかないといけないだろう。とはいえ、それを言い過ぎると金が欲しいというだけに思われてしまうので難しいのだが、しかし書き込んでほしい」


矢崎
「私は、すべてお金が欲しいの立場の病院を代表していて、そう申し上げなきゃいけないので恐縮だ。キーワードは2つあって、医療提供側の構造改革と受ける側の理解と行動変容だと思う。提供側としては、医療者側の業務分担見直しとサポートをお願いしたい。業務範囲の見直しだけでも、以前法律を書き直せば済むという話があったがそんなことはなくて、もの凄く費用がかかる問題。我が国のベッドあたり医師も看護師も少ないという問題があって、その時に病床数が多すぎて薄まってるという意見もあるが、800床くらいの急性期病院で比較すると、医師数も看護師数もアメリカの10分の1しかいない。なぜこんなことになるかと言えば、日本の病院は人件費比率が40〜50%でないとやっていけない。病院は労働集約型産業なのだが、日本の場合は労働倹約型になって、その結果として現場では過労が進んでいる。アメリカの場合、人件費比率は85%程度だ。病院の構成を考えていただかないとうまくいかない。

それから国民には救急医療が完備していないのが不安だという問題だが、これも地域の情報ネットワークさえしっかりしていれば『たらい回し』なんてなくなるんだという人がいるが、そんなことはない。現状を見ると二次救急が一番システムが遅れている。手上げ方式だから実力もバラバラだし、輪番制だからどこで何をしているのか分からない。二次救急が必要な患者は絶対に病院に受けられる体制が必要だと思う。その辺、ビジョンには書き込めないだろうが、具体的方法としては、中核病院に公費を入れて区分会計で救急専従のチームと病床を置かせればいい。医師が24人程度必要になると思うが、それで24時間交替の体制にする。区分会計にするのは、単に病院に入れると、どこへ行くか分からないから。それから、その中核病院に1次患者が集まるとパンクするので、サテライトの診療所で1次は受ける。将来のビジョンとしてシステム化したら、随分国民からは安心して信頼してもらえると思う。そういうことは前回大臣が言われたように政治の力でしかできないことなので」


舛添
「大項目の(4)の中に入っているけれど、構成として緊急医療体制の再構築として特出ししたらどうか。今おっしゃったことを書いた方がよいと思う」


野中
「救急は医療機関が救うという話ではない。地域の住民、行政がどう作るか考えていただけないと。そのためにも地域医療計画に魂を入れて体制を作っていく必要がある。その際にある程度の費用は必要。それから公的病院と私的病院の役割を明確にしないととも思う。公費を入れつつ競争させると私的病院に過剰な負担を強いることになり、経営が立ち行かなくなればかえって地域の安心安全が保てなくなる」


舛添
「今は医療機関の分担の話がいくつか分かれているが、地域で支える医療の推進の大きなものとして位置づけたらどうか。3はスキルミックスの話。4を地域で支える医療の話にして、その中に救急の話も整理すればよいだろう」


松浪
「二次救急は大事。北海道などは市町村合併が進んでいないので、その辺りの関係、自治省(ママ)マターではあるが定義づけていただくのは大事。副大臣おっしゃるように、協働関係を最初に書くのは押しつけと取られる危険はたしかにあると思うが、救急車使い放題というのはいかがなものか、調べたらアメリカでもどいつでもフランスでも有料。使い放題ではなく、限られたパイを分け合うしかないんだということを、誤解を恐れずに毅然とした態度で、2200億円は大臣はじめとするご努力で置いておくことはできるとしても順番については大臣はいかがお考えか伺いたい」


西川
「最初に理念を書くのは私も賛成。救急に関して言えば、消防の問題と病院の問題が一緒くたになっているけれど、搬送部分は有料にするというのを検討するくらいは一項目入れてもいいのでないか。それから今日はメディアの方が大勢見えているので、教育とメディアの報道ぶりが大きいということを言いたい。後期高齢者医療制度に関して言うとメディアのミスリードが実に大きい。メディアの役割として、メディアも協働してほしい。もっと分かったうえで報道してほしい。その辺のところもビジョンに書けないか」


松浪
「メディア出身の身として後期高齢者医療制度については副大臣と立場が少し異なる。老人会などでは事前に幹部へは説明していたが、その先につながらないという話だったし、辻本さんのところでも1年も前からシンポジウムなどをしていたが盛り上がらないという話だった。メディアに分かっていただきたいというのはその通りだが、後期高齢者医療制度に関して言えば、厚生労働省の側に大きな問題がある。このためには、メディア対応にあたる人材を順送りではなく、適正を持った人間を2、3人ずっとそのポジションにつけて一子相伝のようにノウハウを伝承させるようにしないと、センスのないメディア対応が続くことになる」


西川
「この際だからハッキリ言うと、新聞は時間とともに軌道修正してくれるからいい。問題はテレビが最初からセンセーショナルさだけ優先して伝えること。メディアの役割として行政・政府のチェックがあるのは分かるけれど、テレビで最初にそうされてしまうと、後からいくら正論を言っても全て言い訳としか受け取ってもらえない。本当に今回のことで地元で痛感した。メディアには啓発の役目もあるはずで、そこのところをきちんとしてほしい」

(ここから昨日のエントリーに続く)

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