学費と偏差値

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年08月07日 14:48

ビジョン会議3の資料の中で
委員たちを苦笑させたものが一点あった。


そのうち厚労省のサイトにも資料が出てくると思うので
ぜひ現物をご覧いただきたいのだが
大熊由紀子委員の提出したもので
私大医学部の学費をタテ軸に入学偏差値を横軸にプロットしてみたら
見事に右下がりの相関があったという。


経済原則から考えると当たり前の話ではあるが
成績が悪いのに医師になるのはケシカランという文脈ではなく
大きな元手をかければ医師になりやすい状態を放置すると
そういう経済原則に忠実に従うマインドを持った医師ほど
かけた費用を大きく回収しないといけなくなり
不要な医療行為を惹起しかねないという文脈で
社会的にも深刻に考える必要がありそうだ。
そう言えば川崎医大と埼玉医大の大学関係者が受験生の父兄と面談し
それを斡旋した人間が4500万円受け取っていたなんてのもあったな。

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コメント

いかにも、大熊さんらしいですね。辛らつですね、でもわたし、そういう資料を恥ずかしげもなく、堂々と提出する大熊さんも好き(笑)。
医者なら、みんな認識していることですが。

ついでに国立大医学部(入学金と授業料は全国一律)と私立大医学部の偏差値と学費を較べた資料も提出してほしかったですが・・さすがに、そこまではなさらなかった(残念)。
ま、必ずしも偏差値が高いから臨床医として優秀だとは断言はできませんが、強い正の相関関係はあります。

前にも書き込みましたが、欧州各国の国公立大学医学部の授業料は無料か極めて低額です。
EURYDICE
http://www.eurydice.org/portal/page/portal/Eurydice/EuryCountry
の各国別のtertiary educationのセクションのtution and registration feeのところを読むと、
授業料無料=スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、スコットランド(イギリス)、フランス、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、など13カ国。
授業料低額(年間10万円以下)=ベルギー、オーストリア、スイス、
授業料低額(年間20万円未満)=オランダ、

欧州では、医師の養成を国費で学費無料または低額で行うところは日本とは違います。
医師は社会機能を維持するための職業であり、国費を投入して当たり前(財源は高い税金)という考え。
日本は、国立大学医学部でも年間50数万円の授業料を払わされるでしょう。

そうですかね。

>偏差値が高いから臨床医として優秀だとは断言はできませんが、強い正の相関関係はあります。

 私の個人的経験では、私立でもまじめで優秀な先生多いですよ。
 最近の学会・研究会での報告数を見ても、私立の報告が多いことが判ります。

>hot cardiologist先生、一内科医先生
コメントありがとうございます。
私学がどうこう、国立がどうこうと言うつもりはなくてですね
お金をたくさん出せば医学部に入りやすくなる
という因果関係があるのは
社会的に見てよろしくないということです。
因果関係がなければ
とやかく言う筋合いはないと思います。

川口様のおっしゃるとおりですね。

 ただですね、ご納得いただけないかもしれませんが、医学部は入学してからがきつい。4年生あたりでは各学期20以上の学科数があるところもある。
 さらに、国家試験に合格して研修医として働いてから、これはご存じのようにきつい。私なんぞも家に帰った日数の方が少ない。
 そうして身についた経験と技術ですから忘れようがないということも言えます。
 たいていの医師全員が、そのようにしてトレーニングさせられているわけです。それは大学入学時の学力ともまた違うのではないかなとも思います。そういう貴重な2年の研修期間中をスーパーローテートとか言って、3ヶ月毎に他の科に回すというのは、戦力ダウンするべく作られた研修システムなのではないかなあという気がして仕方がありません。

一内科医さま。

>そうですかね。
>私立でもまじめで

私立がどうの、国立がどうの、といっているわけではなく、偏差値の高い医学部を出た人には、きちんとした臨床医も多いとことです。相関という言葉にしたのは、関連性という意味です。
100%そうだと言い切るのは間違いになりますからね。

日本の医者の過半数は国公立大卒の医者(勤務医に限定すると7割が国公立大卒医師だそうです)ですから、学会や研究会、病院勤務医、などでは、どうしても国公立大卒の医師のほうが目立ちます。
あくまでも卒業生数が多いから、比率で考えたら、ってことです。

わたし自身は欧州の国立大のように、日本の国立大医学部も授業料無料になったらいいのに、と思います。
社会的人的資源の育成という観点で。
欧州と日本とは、公教育への国の投資の考え方が違いますね。

 実は以前、自分の所属する教室の大学院生の一人が、医学部の入学偏差値と医師国家試験の合格率との相関を見たことがあるのですが、…出なかったですね、有意差。もちろん、逆相関もなかったです。

 いろいろ解釈の余地はあろうかと思いますが、安く医者になろうとした奴の中には、真面目に勉強しようとしない者もいるなんて解釈も可能です。

 診療報酬の在り方としては、厳格に医学的必要と患者さんの希望を摺り合わせて頑張れば一番報われるというのが良いわけです。

 報われ方が歪んでいるから、医者の行動も歪むのだと考えているのですが、如何でしょうか。

hot cardiologist 様

おっしゃるとおり国の教育にかける熱意が違うのだと思います。なんでも最近は日本の教育費はOECD最低レベルだとか。
医学部においては、文科省と厚労省の両面支配を受けているわけですが、そうであっても個人の負担額は大きい。
さらに、私学の学費は高いようですが、高くても黒字を出しているわけではない。国公立は、そのほとんどが税金よりまかなわれているわけですが、本来、医学生の教育にはお金がかかるものなのです。
しかし人材を育てるのこそ国の根幹にかかる部分ですから、しっかりとしたビジョンを持ってほしいものですね。

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