後期研修班会議2(3)

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年10月12日 16:16

家庭の用事があったため1日空いてしまい申し訳ない。
飯沼日医常任理事との質疑応答から続きを記す。


土屋
「私も現役の頃には、毎月5ヵ所の医師会の勉強会に夜行っていた。色々な疾患について開業医の先生が幅広い知識、専門的な高度の知識もお持ちだと実感をもち、尊敬申し上げている。5枚目のスライド、賛成意見の3番目、長年専門医で大学病院で働いた医師が開業する際の習得というのは圧倒的にこのような方々が多いと思うが、長年地域医療をやってこられた、という方に比べ大学でやっていると他の分野は素人同然ということで緊急性あるが、認定コースで考えられているコース1は総合診療医を若い方をどう育てるかシステム的に問題で大きな課題だが、コース2,3,4は全国的に僻地に行くような方に教育するのに必要という解釈で良いか」


飯沼
「はい」


土屋
「葛西先生から意見あるが、中途編入者的な方が他分野の実技をどういう場で研修するか」


飯沼
「研修のところは非常に大切で、場所的なこともあるが、講義形式のものとEラーニングと、実習見学も考えねばならない。これから模索だと」


土屋
「山形では長年専門医として大学でやっていた方が開業するときに、特別なコースを大学病院で用意されて送り出すことを嘉山先生がはじめられたとお話されたが、医師会でもそのように協力してというようなことは」


飯沼
「検討させていただきたい」


土屋
「行き渡ったとして総数どれくらいか、毎年新規参入者どれくらいか、試算があったら」


飯沼
「試算はしていないが、本認定制度の対象は全科にわたり内科に限ったものではないと書いてある。なりたい先生には、なれるようそれなりの対応をしたいと考えている」

医師のための制度であって患者のための制度ではないと語るに落ちている。

川越
「日医がこういう教育に関して熱心だというのはうれしい。感謝したい。今回、後期研修制度をどうするかという話しの中で議論していて、今土屋先生が指摘されたことと関連するが、地域で働く先生方はもともと専門的なバックグラウンドを持ちつつ地域に入っていくのがほとんど。今後は専門家総合診療、かかりつけ医療かよくわからないが、専門性として地域に出て行く医師を育てるべきではないかという意見もある。従来の考えだと前期研修制度がしっかりやっていれば、地域に出られるという乱暴な意見があるが、先生が指摘されたかかりつけ診療は、専門性が高い分野なので、トレーニングの機会を作っていかねばならない。そうなると、後期研修制度は専門医制度なのでトレーニングが特に大事になってくる。地域医療ということになると教育する先生と教育を受ける方が離れてしまう場合がある。教育者は大学病院にいて、実際のトレーニングを受ける場所は地域ということで、日医の先生方が頑張っていただかねばということは現場から離れない意味で大事だが、実際のカリキュラムも一緒につくっていかねばならない」


飯沼
「先生のおっしゃる通りだが、方策としてはなかなか具体的にまだ出てこないので、これから名案が少しずつでてくると思う。良い案があったらお教えいただきたい」


阪井
「1つ伺いたいのだが、地域医療、保険福祉を担う幅広い能力という、医師が担う範囲には妊婦に対する診療や出産も入っているか」


飯沼
「カリキュラムのところで若干あるが、たとえば、性器出血や下腹部痛から早流産の可能性を見極め専門医に紹介、健康問題に対応」


阪井
「出産は入っていないのか」


飯沼
「入ってない」


葛西
「この研究班ができる元になったビジョン具体化検討会で、専門医としての家庭医が必要ということで、専門医の養成を考えているところだ。専門医というからには、国民の求める質レベルが重要で、名前がどうであれ、レベルに達することが大切だと思う。そのうえでカリキュラムを興味深く拝見した。コース1は、我々のつくって進めている3年の後期研修プログラムと同じものかなと思っている。この質のレベルをしっかりしたものにしようと思うが、コース2、3、4は会員の先生には内科が大部分を占めると思うが、臨床経験7年15年の人でも皮膚科や眼科などでスタートの経験知識がバラバラだと思う。その後の50単位、20単位の教育でレベルは揃うのか」


飯沼
「大切なところだが、実際は細かいところはこれから議論しようというところ。大枠こういう案はどうかということでお示ししたが、まだ機関決定もされていない。こうなるかなというところ。先生がおっしゃったのは非常に大切なところなのだが、詰めるところが詰まっていないのが現状。まだ日本医師会は機関決定していない。色々なファクターを説明しているだけで、コースに対しては全員50単位にしろという意見もある。ある年齢で論文というか報告書1通くらいで良いのではという先生も色々いる。最後は激論をかわすことになるが、意見を参考にしたい」


葛西
「良いきっかけになると思うので、手をあげていただいて国民のための総合医になりたいという人が入りしっかりした制度をつくれば、良い制度になる。資料見せていただいたが、福井先生がとりまとめ家庭医学会でもいくつか資料をだした。色々なことが入っているが、急性期の問題が57とか、これをどう選ばれたのか、諸外国の標準的なテキストをみると、家庭医の問題は150くらいなので、どう選ばれたのかききたい。やるべきことを項目としてリストアップされているが、カリキュラムとして誰がいつどうやって教えるのかはまだまだだと思うので。項目だけ羅列ではなく項目も盛り込んだものが良いと思うし、私も学会も協力して一緒につくれればよいかと思う」


飯沼
「100いくつかが57になった理由は、福井先生と三学会で議論する会には全部でているが、どこかに必ず入りこむようにはされていると思う。あとは先生のおっしゃる通り。これを現実の教育にするかは2年くらいかかると思うがやっていきたいと思う。試行錯誤もこれから」


渡辺
「葛西先生の質問とかぶるが、このカリキュラムの中で女性医療が抜けている、月経前症候群や更年期障害は精神科にいってしまったり産婦人科にいったり頭痛で神経内科にいったりするので入れてほしい。コモンディスイーズについては、漢方がかなりカバーするので入れてほしい。教育カリキュラムは、幅広いものをカバーするとなると、総合医なり家庭医というものがすべて教育を担うのか、サブスペシャリティの専門医が担うのか、どうお考えか。飯沼でも葛西先生でも」


土屋
「じゃ、葛西先生」


葛西
「日本より20年、30年進んでいる国でも、各科の先生の協力を得ながら、プログラムをつくっている。家庭医指導医が教育にかかわれるが、病院の中で科の進んだ診療の経験は病院の中でやっている。各科の連携が必要」


土屋
「アメリカのファミリーメディスンを想定しているのですか

葛西
「そう。アメリカに限らず、世界で行われているファミリーメディスン。それぞれの国や地域の実状にあわせてやっている」


飯沼
「専門の先生のご指導を受けながら、先輩の総合医が後輩を育てるシステムだと思う」


岡井先生
「日本医師会が考えている総合診療医は、厚労省が考えている総合科医と根本的には違わないと思う。それなのに、医師会が反発しているのは、その人達が、日本人の受診行動が外国に比べ統制されていない。あくまで医療を提供する側の人間をどう効率的に使うか考えたときに効率が悪い。ファーストステップは総合科医がみる。高度な診療が必要なときには専門医、という考えは厚労省にあると考える。そういう使われ方に反対されていると思う。日本医師会は。どうして反対なのか聴きたい」


飯沼
「フリーアクセスの制限がある。こういうものに保険点数のインセンティブを与えないのが基本なので、それが2つ。ゲートキーパーが即フリーアクセス制限にならないと言われるかもしれないが」


岡井
「患者の選択として総合医へ、という患者の自由選択を残せばフリーアクセスの制限にならないが」


飯沼
「が、僕らはゲートキーパー的なものになるとどうしても思ってしまう」


岡井
「標榜科はどうなるのか」


飯沼
「標榜どうするか、これから、考慮中。ノーとは言ってない」


土屋
「がん専門病院として、うちは完全予約制にしてしまった。本省ともナショナルセンターとして法律に触れないか患者権利の制限にならないか相談して詰めた。我々がフリーアクセスにすると、風邪でもかかって外来があふれて大変。紹介してもらって先生が必要と言うならかかってもらう、そうしないと。総合診療医がゲートキーパーという言葉は、大熊さんに怒られてしまうが、そういうインセンティブがついたほうが我々はありがたい、むしろ患者も増えるのではないかと思うが」


飯沼
「医師会がどう考えているか議論したことないので個人的な話だが、がんセンターのように特化した専門医の先生がそう考えていると開業医には伝えるが、ゲートキーパーになった方が患者が増えるという考えにはついていけない」


土屋
「うちの受診が減れば行くところは診療所しかないので、中央区医師会には反対がなかったが」


飯沼
「それは良いと思う。がんに特化した病院は、機能分担しなければならない」


土屋
「大学病院でも専門性の高い集団なので同じでは。診療の最初の段階では先生方に担ってもらったほうが良いと思う」


飯沼
「それは病診の機能分担の話で、今回の話とはちょっと違わないか」


阪井
「岡井先生のお話が本質で、フリーアクセスが大事というのは患者が言うことであって医師側が言うことでない。救急で具合が悪くなったのに、それこそなかなか診てもらえなくなって亡くなった方のご遺族と話をしたことがあるが、たとえ100キロ先であっても絶対診てくれるという方が絶対によい、誰でもどこへでもかかれるなんてとんでもないという話だった。患者がどう考えるかで、医者がフリーアクセスの方が良いと言うのはおかしい」


飯沼
「患者がどう思うかが一番大事。医師会が、制限するのはおかしいといっているのは、我々は患者の立場で言っている」


阪井
「私は、患者がそう言っていると言っている」


飯沼
「先生がおっしゃってるのは、小児科やがんの極専門的なもので、我々が言っているのはごく一般的な病院の話だ」


阪井先生の頭から湯気が出ているのが見えたような気がした。すかさず班長が割って入る。
土屋
「医者同士がやってるので傍聴の方、我こそは患者の立場だとご発言いただける方がいらしたら。おられなければ、では川越先生」


川越
「我々は後期研修制度に関する班で、専門医を育てる制度をディスカッションしている。地域医療は専門性が高い。介護保険の知識も持たねばならないので専門性が高まった領域だと思う。後期高齢者医療制度の中に地域医療をどう位置づけるか、まだまだディスカッションしていただきたいと思うのが一つ。もう一つは、産科、妊婦さんの検診が後期研修でどう考えるのかもある。後期研修制度は、こないだ安心と希望のビジョン会議でディスカッションされたのは、前期研修制度そのものは見直さねばならないということがある。研修期間と学部との連続。前期にもってくるのが適切かどうかという研修の場にも議論があったが、その中でも産婦人科、1カ月義務づけられているが、それで良いのかディスカッションがあった。前置き長くなったが、私は前期研修の見直しがなされているので情報交換をしっかりもたねばならないということと、個人的な意見だが、妊婦の診察は内診ができなければできないので、後期にもってくる内容であろうと。専門性をもった分野だと思う」


土屋
「時間が来たので、発言されてない山田先生と有賀先生、一言ずつ」
考えてみると直言居士の有賀先生が何も言ってない。


有賀
「興味深く拝聴した。先生先ほど認定制度の対象は全科に渡るとのことだった。私は、現職の前は地域医師会の学術担当理事をやっていて、医師会についてもある程度知っている。できるだけ多くの医師会員と言うけれど、これから開業の人と話をすると、こういう認定制度に興味を示す。しかし、既に長年やっている方はどうか。一定の勉強の後地域で開業され、福祉地域保健にどっぷりつかる。この制度にむりやり乗らなくても、診ている患者は良いあんばいに診れていると強く思う。なんとなく日本医師会の思考として、すべての開業医について等しくというのがあるのかもしれないが、既にやっておられる方については問題にしなくても、十二分に医師会の先生は生活していける。日本医師会にこれから入ってくる新しい方にどんどんやられる感じで、あまり今の人たちを対象にするより、後期研修における専門というようなドラスティックにどんどんやるほうが良い。今できている人は良い、という議論はあるか」

飯沼
「ある。コース4を含めて、やってる人はいい、という意見はある。逆に全員やれ、という意見もある。色々な意見もあるので最終的に討議する」


山田
「この会は後期臨床研修の制度設計的な問題を構築できるか検討しようと。一応大学を卒業した医師の開始時点として初期臨床研修2年終えて、その人達をどうキャリア形成、パスに分布配置させれば一番良い医療体制に向けて進めるか検討するのが基本的な視点だが、それと現実問題としてかかわる二方の立場を理解できる形で聴けた。個別的質問として現実的成果で、生涯教育推進委員会が平成18年19年で諮問をうけた。継続的に長年の生涯教育の有効性検証、そういう実績成果の検証効果の検証をに次に新らしいものを計画する重要なデータ、基盤になると思うので簡単に教えていただければ」


飯沼
「簡単にもうしあげると、20年間続けた生涯教育制度は、一時申告率が減って大変だというので、自主申告制にした。1時間でも50時間でもどちらでも申告しなさい、と。このために評価に客観性がないというのが共通の指摘だった。やる以上は、会員100%に勉強していただきたいというのと、勉強を客観的に評価できる内容にすべきだ、それが全ての始まりで、それなら認定性が良いとなった」
明らかに出発点がおかしい。しかも、おかしいという病識がない。

山田
「お聴きする機会がないので、日本医師会の立場として、今検討している後期研修、専門医研修、臨床研修に対して、全般的なご意見があれば聴かせていただきたい」


飯沼
「いわゆる後期研修について、日医でディスカッションしたことはない。前期の研修制度については問題点があるという事は存じ上げていて公式の会議、厚労省の会議にも出ている。文科厚労の合同会議にも出ていて正しく伝えると思うが、後期は難しい問題でまだ。医学教育、医師免許、前期研修が決まらないのに後期の話はまだ尚早」


土屋
「コース1と、2から4で言うと、おそらく2から4の方が緊急性が高いだろう。この部屋でビジョン具体化検討会の最後の会をやった時に、医師増員1.5倍は10年かかる、もっと緊急性の高い話にしてくれと厚労省から言われ、高久先生が乗りかかって危うく増員が消えそうになった。コース1は医師会と協力して行きたい。2から4も大事な問題だが、これが大事だから1は後まわしと厚労省に言われないよう準備しないといけない」
(了)

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