子育ては不衛生に?!

投稿者: | 投稿日時: 2009年02月26日 08:02

子どもを花粉症にしないための9か条」をご存知でしょうか?

いよいよ花粉の季節到来。私もこの数年は花粉症疑惑が生じているだけに、2歳の長男が今後どうなっていくのかも気にかかっている今日この頃です。そんな折に発表された9か条。ふつうの感覚からすると「えーっ」という項目のだったりするので、ちょっとご紹介したいと思います。


まずはさっそく9か条から。

● 生後早期にBCGを接種させる
● 幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる
● 小児期にはなるべく抗生物質を使わない
● 猫、犬を家の中で飼育する
● 早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす
● 適度に不衛生な環境を維持する
● 狭い家で、子だくさんの状態で育てる
● 農家で育てる
● 手や顔を洗う回数を少なくする

ちょっと知識のある人なら、抗生物質云々というのは「なるほどね」というところかもしれません。でも「適度に不衛生に」だとか「手や顔を洗う回数を少なくする」だとか、一見、常識に反しているようにも思えますよね。「犬猫を家の中で飼う」ことも、妊娠中は、トキソプラズマ感染の危険があるということで、むしろ避けたいことだったはずです。「狭い家で子だくさん」「農家」というのも、いまいち理由がわかりません。


キーワードは、項目にも含まれている「細菌」です。


実はこの話、少し前に、NHKスペシャルでも取り上げられていました。戦後生まれの日本人とそれ以前の生まれの人では、花粉症の罹患率が全然ちがうというのです。ヨーロッパでも、酪農家の子どもはサラリーマンのクラスメイトと比べて有意に罹患率が低いことから、研究が進んでいました。戦前の日本や酪農家に多く、現代の先進国の都市生活に少ないもの……それが細菌というわけです。


正確には、細菌が死んで残る「エンドトキシン」という物質の空気中の濃度が重要です。これが濃すぎればその毒性で人体に害が及びます。食中毒はこのパターン。でも生まれてすぐの頃から、酪農小屋を出入りして(家畜の糞からエンドトキシンが放出されています)、自然に適度に微量なエンドトキシンにさらされて育つと、花粉症にならない体質になることができるというのです。


ここで重要なのが、“生まれてすぐ”ということ。番組内では、「6ヶ月までに」と言っていました。(がーん、ウチの子どもは手遅れです!)


それは、花粉症をはじめとする「アレルギー」がしばしば、“人間が外界から身を守るための免疫システムの暴走”と説明されることと関係します。なかでもTリンパ球と呼ばれるものが関与しています。Tリンパ球はさらにTh1とTh2に分けられ、大まかに言ってTh1はウイルスや細菌から身を守り、Th2は抗体をつくって吸血ダニや寄生虫などから身を守るために働くよう、進化の過程で発達してきました。問題は、両者のバランスです。

赤ちゃんのTリンパ球は未発達で、生まれ落ちた環境に適応しながらTh1とTh2へ分かれて育っていくそうです。そして分化がおわり、割合が確定するのがおよそ生後6ヶ月。衛生状態が非常によい現代の都市生活ではTh1の出番は少なく、その頃までにTh2が多くを占めるようになっていると考えられます。そして実は、Th2が過剰になっていると、アレルギーを起こしやすいのです。花粉症すなわち花粉アレルギーは花粉に対して抗原・抗体反応が起きているものですが、これは、体がTh2を増やして準備したほどには、吸血ダニ等の本来の攻撃対象が現代の生活にいないせいでもあるからです。一方、住居の機密性が高まったことなどから、ホコリやダニなど、アレルギーを助長するものは増えています。


「生後6ヶ月なんて、今からじゃ間に合わない・・・・・・」、多くの人ががっかりされたと思いますが、朗報は、谷口氏の講演のタイトル「スギ花粉症ワクチン開発」にもあるように、上記の仕組みからすれば花粉症ワクチンの開発はそう難しくないと考えられていることです。現に研究が進んでいるようですから、近い将来に実現しているかもしれません。

いずれにしても、家の中のホコリやダニ、そして入ってきた花粉は掃除をこまめにしてきれいに、でも“抗菌”“除菌”ということにはあまり神経質になりすぎないほうが、体本来の機能を発揮させることになって、かえって健康に生活できるのかもしれないですね。

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