周産期は妊産婦だけのものにあらず。 |
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投稿者: | 投稿日時: 2009年02月27日 11:16 |
来る3月1日、東京で「周産期・救急医療専門家会議」なるものが開催されるという話を聞きました。主催するのは、昨今の妊婦搬送問題を受けて厚労省が急遽発足させた研究班。急な開催にもかかわらず、共催には、日本産科婦人科学会、日本救急医学会、日本小児科学会、日本麻酔科学会、日本周産期新生児医学会の5学会が揃って名前を連ねており、現場の医師たちの”焦燥感”が伝わってきます。
すでに日本産科婦人科学会のホームページで会議の論点が公開されていたので、ざっと目を通してみました。専門家でない私にはなかなか難しい話ながらも、気になったことがいくつかありました。
そのうちのひとつが、「新生児診療機能から見た周産期センターの分類案」と題した論点の中で報告されている現状です。
「・・・既存の総合・地域周産期センターの施設基準は、ハイリスク妊娠・分娩・新生児管理における質と量を基に規定されており、母体に妊娠合併症以外の機序による救命救急処置が必要となった場合に対応可能であるか否かは勘案されていない。一方で、救命救急センターの設置には、対象となった患者が早産期妊婦であり、早期の胎児娩出が必要である場合に必要となるNICU機能の有無は勘案されていない。・・・」
要は、
①総合・地域周産期センターでは、妊娠にともなう合併症以外の救命救急処置が必要になった妊婦(脳血管障害、大動脈解離など)に対し、適切に対応できるかはわからない。
②救急救命センターでは、出産とは別の事由で救急搬送された妊婦が早産を余儀なくされたとしても、その際に必要なNICU(新生児集中治療室)が備わっているとは限らない(備えてある必要はない)。
ということです。それぞれの設置目的を考えればごく普通のことにも思えますが、実際、上記のような局面が各地で見られるからこそ、結果として救える命が救われない事態も発生し、妊産婦救急搬送・受け入れ先確保が社会問題となっているのです。妊娠・出産の高齢化に伴い、このままでは状況はますます悪化します。
私がまず気になったのは、こういうことがどの程度一般に認識されているかです。あまり深く考えずに「救急車が来て、ある程度大きな病院に連れて行ってもらえば、たいていのことはなんとかなるだろう」と思いがちではないでしょうか。ところが蓋を開けてみたら、そうではなかった。搬送先を探して、受け入れられるまでにまた時間がたってしまった。そんな事態が普通に起こる、起きている、ということです。
もちろん、妊娠・出産は、ある日突然降りかかってくる怪我や病気と違い、当事者や近い未来に当事者となる可能性がある人は、世の中のほんの一握り。“明日はわが身”ではなく、他人事というのもわかります。ただ、これは私の実感であり憶測ですが、普通に結婚し、普通に妊娠を、と考えている女性でさえ、自分の地域の周産期医療の実態は、妊娠するまではまず正確に把握していないだろうと思うのです。
救いは、現場の医師が危機感を持ち、行動していることです。今回の会議もそのひとつ。(救いというより、そんなぎりぎりのところまで来ている、ということでもあるのですが。)
そして今回、もうひとつ思ったことは、タイトルにあるとおり「周産期」という言葉についてです。周産期と聞くと、“お産の前後”という言葉の響きから、妊産婦さんを思い浮かべる方が多いでしょう。でも実際、“生まれる前後”の胎児・新生児についての対応も含まれるのは当然ですよね。(だって生まれて出てくるんですから!)
上記の論点「新生児診療機能から見た周産期センターの分類案」は、まさにその点を問題意識として扱ったものでした ←今回は一部分しか引用していませんが。周産期医療の問題は、分娩台の上だけで起きているわけではありません。今度の会議のテーマである救急との連携もそのひとつです。そうやって少しずつ視野を広げて考えていく必要があるんですね。
そして私個人としてはいつも、さらに広い視野からもとらえるようにしています。つまり、周産期医療を「安心して子どもを産み、育てることのできる社会・環境整備」の一環、すなわち少子化問題への対応の一環として見たとき、そこにまたいろいろな考えや思いが浮かんでくるのです。