本音と建前

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2009年03月11日 11:16

本日、中村利仁先生がエントリーなさっている読売新聞記事の件
「誤報」ではないと思います。
でも、「誤報」であることにしないと、警察が脱法行為をしていることになります。


あれ、最近どこかで同じ構図を見たような???

麻生首相、「誤報」発言を撤回 漆間氏発言問題


前者の例で言うと
強制捜査に着手したならば必ず送検しなければなりませんので
警察が「任意」の形で捜査を行っていることは往々にしてあります。
だから、その実態に即した記事です。
ただ、これは法の趣旨から言うと脱法行為であり
それを記者が、当然のこととして扱ってしまったら大問題だと思います。
これまでは一種、メディアと警察との間の共犯関係として
見て見ぬふりで留めていたレベルの話ではないでしょうか。


後者の場合も
検察から、連絡が政権中枢に行ってないとは誰も思ってないでしょう。
だから記者も「カマ」をかけて訊ねてみた。
そうしたら、つい副長官が本音で喋っちゃった、と。


建前が建前としてすら機能しなくなっているのは
やはり社会構造が限界以上に疲労していることの証左でしょう。

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コメント

 取り敢えず、読売新聞社に下記のようにメールしてみました。

***

ロス手術高3死亡 心臓外科医を書類送検
(小林泰明)
(2009年3月10日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ibaraki/news/20090310-OYT8T00021.htm

「ただ、警察はすべての医療事故を書類送検するわけではない。重大な事故でも、反省し、再発防止策が取られていれば、書類送検されないケースもあるという。」

 これは刑事訴訟法を甚だしく逸脱しています。

 誤報と思います。

 裁判員制度も始まろうというこの時期に、警察の主張もしないことで予め読者に有罪推定をしてみせるというのは、御社はどういう体制で記事化しているのでしょうか。

 是非とも釈明いただきたいと思います。

川口様
>強制捜査に着手したならば必ず送検しなければなりませんので
>警察が「任意」の形で捜査を行っていることは往々にしてあります。

刑訴法の下部に連なる規則規定の一つとして、国家公安員会規則に「犯罪捜査規範」があります。こうした捜査に関する法令上では逮捕などの身柄拘束や、令状での捜索・差押えなどの「強制」捜査以外に、任意の捜査についても規定されています。

任意捜査については、同規範99条にて刑訴法の規定する「捜査」に含める主旨で、捜査手順についての定めが作られています。また内偵についても同規範101条にて、捜査の一手法として規定されております。

いわゆる任意の内偵捜査であっても、法令の上では「捜査」であり、その捜査の結果について検察庁に捜査結果の書類を送致(送検)しなければならない規定になっております。

川口様の仰る送検の対象としない「任意」での形の捜査とは、警察内部で記録や報告書に記録を残さない、捜査着手するかどうかの、いわゆる「内々の内偵」とか「情報収集」と呼ばれる段階のことを指していると思われます。

しかし今回の記事となった医療事故では、警察は心臓外科の専門家などから意見を聴くなどの「捜査」に着手しておりますので、送検を警察の独自判断で見送ることは有り得ません。

(7人の医師に直接意見聴取していなくても、少なくとも意見が記載された書面などを取り寄せ、読み込んで検討したことが警察内の記録に残されていると思われます。これは既に内々の内偵とか情報収集の段階を超えており、現実に「捜査」した事実があるということです)

単にこの読売の記者とキャップが刑事訴訟法や警察捜査に対する基本的な知識を欠いたまま、生半可に聞きかじった「微罪処分」を独自に拡大解釈して記事を書いただけの、報道機関としては恥ずべき誤報だと思います。

>法務業の末席様
ご丁寧にありがとうございました。
恥ずかしながら大変勉強になりました。
自分自身も実際に警察を担当していた時
そこまで突き詰めて見てはいなかったこと
むしろ情報をいかにもらうかが優先していたことは白状せざるを得ません。

 いま見ると、記事がWEB上から消えています。

 読売新聞の通常記事は1年間、速報記事でも2週間はWEBに残ることになっているようですが、掲載からわずかに10日、記事検索にも全くヒットしません。

 事実上の記事取り下げのようです。

 ただ、メールに対しては何の返事も来ないので、記事取り下げなのかどうなのか、取り下げだとして社としてどう考えているのか等、一切わかりません。単に機械的なトラブルで記事の消えている可能性も否定できません。

 こういう跡形も残さない過去の操作は、いったい誰のために行われているんでしょう。オーウェルのディストピアが思い起こされてなりません。

 小林記者は、また別の記事を署名入りで書いているようです。少なくともweb上は誤報の件について何のコメントもありません。ジャーナリストとしての矜持というものが感じられないのですが、どういうお人柄なんでしょうね。

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