アメとムチ

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2009年03月22日 14:24

先週、周産期医療整備を巡って連日2つの要望・提言が、舛添厚生労働大臣に対して出されました。


それぞれ、昨年の墨東病院での妊婦さん死亡から始まった一連の議論の、部分的な結論ということになると思います。


まず16日の月曜日に、「救急部門と周産期部門との連携強化に資する具体的手法に関する研究」なる厚労科学研究の分担研究者、海野信也・北里大教授から(こちら)。
ついで17日の火曜日に東京都の猪瀬直樹副知事から「NICUの整備促進に関する国への緊急要望」。


これらを見ていると色々なことが分かるのですが、何はともあれ驚くのは、東京都の要望の中に示された周産期医療の絶対的赤字構造です。こんな状態を放置しておきながら、それでいてNICUを1.5倍に増やせというのは、無責任極まりない話だと思います。


逆に、こんな悪条件の中で、官営でもないのにNICUを持っているというような医療機関というのは、その医療機関が赤字を引っ被っているわけですから、地域の行政や住民はいくら感謝しても足りないのでないでしょうか。


ただし多数の人間が関与する関係上、周産期分野の1件あたり診療報酬額は大きいので、「保険医療機関に対する共同指導・特定共同指導」の監査対象として目を付けられやすい面もあるようです。この監査、目的は「保険医療の質の向上と適正化」となってまして、いわばアメとムチのムチにあたるものだと思うのですが、ほとんど因縁づけとしか思えないようなのもあるとの声が聞こえてきます。逆らってさらに嫌がらせされたら医療機関が潰れてしまう以上、ひれ伏すしかないのでしょうけれど、アメが足りない中でムチだけ当て続けていると、暴動が起きるか、対象者が逃げ出していなくなるということは歴史が教えています。


なぜNICUが増えないのか、こういう観点からの検討も必要ではないでしょうか。それから地域の住民も、自分たちの地域の医療機関が不当に苛められてないか気にかけた方がよいと思います。

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