科研費詐欺

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2009年03月20日 15:21

全国医師連盟から下記のようなリリースが送られてきました。
昨日、毎日新聞が1面で書いてた特ダネ記事とその続報の関連です。

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【厚労省による補助金運営の不正発覚に関する全国医師連盟執行部の見解】

厚生労働科学研究費補助金の外部評価委員に対して、厚労省担当者 が特定の研究に対する評価点数を水増しするよう要請していた事実が 各種報道により判明した。巨額の社会保障費を管轄する厚労省の運営 体質が信頼出来ないことが明らかとなった。

科学研究費補助金は、競争的資金であって、公平な評価に基づいて
交付されるものであり、厚労省の判断で行われる研究費の補助は本来
別枠の予算を設けるべきである。管轄元の厚労省が特定の対象者の研
究に対して加点するよう外部評価委員に対して要請していた事実は、
事前評価委員会の意義を蔑ろにし、国民と研究者の信頼を裏切るもの
である。

事実が発覚した後、厚労省は審査を白紙に戻してやり直すと説明し
ているが、謝罪の表明や、真相を究明するといった報道はなされてい
ない。公平であるべき科学研究費補助金の審査において、厚労省の担
当者が加点を要請した行為は、一見公平にみえる委員会を隠れ蓑にし
た、典型的「審議会行政」である。この報道が正しければ、本件は、
国の財政を歪める重大な行政法規の違反であり、詐欺的で職権を著し
く逸脱している。

このような行為の発覚に対して反省が表明されないことは、厚労省
自体の体質を現すものであり、厚労省には、管轄する巨額の社会補償
費をはじめ、大きな制度や予算を動かす当事者能力はない。中医協で
の診療報酬決定過程や医療事故調査委員会の創設に関しても、同様の
疑念が生じる。

全国医師連盟は、厚労省が今回の不正の真相を究明するだけでなく、
恣意的な審議会運営を防止するため、各種審議会の委員選定から審査
の過程等を随時公表することを求める。

平成21年3月20日 全国医師連盟執行部
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ずいぶん全医連も機敏になってきたなあと思います。
もう少し文章を柔らかくすると、なお伝わりやすいかなあと。


それはそれとして、これってリリースにも書いてある通り、選考をやり直して済むような話ではないですよね。


手続きの中に定められた外部評価を歪めさせて、公金の使い道を変えたわけです。これって犯罪じゃないんでしょうか。


厚労省の皆さん、公務員には、犯罪を知った場合に告発の義務がありますからね。以下、刑法の条文を挙げておきます。
(公務員職権濫用)
第百九十三条 公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

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コメント

うーん。
毎日新聞の記事の上さんのコメント以上のことは言わない方がよかったのではないかな〜

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090319ddm001010022000c.html

科研費審査:点数水増し 外部委に厚労省要請

 公立大教授が申請した来年度の厚生労働科学研究費補助金をめぐり、厚生労働省が審査に有利になるよう外部の事前評価委員会委員に点数の水増しを依頼していたことが18日、分かった。教授の申請課題は同日の審査で採用が内定した。研究内容を評価し採用する審査には公平性が重要で、厚労省の肩入れに批判が集まりそうだ。

 厚労科研費は保健医療などを進めるため、研究者に交付。年約1400件の研究課題を採択、約400億円が投じられている。委員は申請された研究課題を点数化。上位の申請者からヒアリングし、採用の可否を決める。

 加点依頼したのは、「臨床研究・予防・治療技術開発研究事業」の一分野に申請した東日本の公立大教授の研究課題。乳幼児から発熱を繰り返す自己炎症症候群の研究で、4000万円を申請した。

 当初、教授の評価は「研究計画の具体性が乏しい」などと低かった。この分野の応募は13件で、厚労省担当者は今月、委員に「点数不足でヒアリングに呼ぶのが難しい。提出済み、またはこれから提出する点数に少々加点してもらえないか」と電子メールで依頼。教授の研究課題は10点満点中5・9点で書類審査を通過し、18日の評価委員会(10人)のヒアリングに出席した。採用は内定し、支給額は今後決める。委員の一人は「こんな例は初めてで、国民を愚弄(ぐろう)する行為だ」と憤る。

 教授は毎日新聞の取材に「(厚労省の行為を)初めて聞いた。未承認の高価な薬を患者に無償提供できるので、厚労省に(採用を)お願いした。だが『第三者が決める』と断られた」と話す。

 厚労省は「今までにない、まれな病気に関する研究なので、指定したかった」と釈明する。

 上昌広・東京大特任准教授(医療ガバナンス)の話 事前評価委員会の人事権は厚労省が持ち、委員が厚労省の意向に反対しにくい土壌がある。防止には審査過程を公開する仕組みが必要だ。【河内敏康】。

 

依頼に応じて点数を水増しした委員たちが複数いるわけで、こんな例は初めてで、国民を愚弄(ぐろう)する行為だ」と憤る委員さんは反対したのでしょうけど、他の委員さんは唯々諾々と従ったわけですよね。彼らは刑法第193条には抵触しないでしょうけど、情けない話です。

行うべきことは透明性の確保であって、こういうことをする官僚がいるから厚生労働省は信用できないということは論理の飛躍と感じます。

川口さま、

文科省の科研費を貰っている研究者の一人に意見を聞いたところ、「その委員さんたち、普通だったら研究者としての生命を絶たれたも同じですね。官僚の要請とはいえ、外部委員会の委員が不正をしたことがあきらかになれば、我々の世界だったら信用なくしてしまいます。お医者さんたちって優しいんですね。」ということでした。

文部科学省・学術会議の方は厳しい運営をしているようですね(クレームも多いようです)。

>富僧也先生
ありがとうございます。
それだけの大それたことを厚労省の担当者が(証拠の残る)メールで依頼して
さらに複数の委員が唯唯諾諾と従ったという状況を見ると
今回が、本当に「異例」なのかという疑念を抱かざるを得ません。
担当者が依頼をしたのは全10人のうちの5人ですから明らかに人を見たと感じます。

> 明らかに人を見たと感じます。

 結局は人を見誤っているわけで、そんな点も心配です。

川口さま

確かに、今回の担当者の行為は軽率だったかもしれませんが、医師連盟の主張も少し違和感があります。厚生科学研究が国民の税金で賄われる以上、「国民への還元」とか「国民の期待への対応」という評価基準があってしかるべきと思います。
要は、そうした事項を全体の評価基準の中でどうウェイト付けしていくかということかもしれません。

以前、こんな記事もありました。
川崎病の全国調査が継続困難に 厚労省、研究費を不採択 (2004年10月19日朝日新聞)

>パンダ様
ありがとうございます。
応募が、この教授のものだけであれば、そういう見方もあると思います。
しかし他にも応募者はいたのであり
その中で外部評価の順位が低かったということを忘れてはならないはずです。
どういうものの中で選ばれたのか公表されていない以上
担当者のこの行為によって、救済対象から外れてしまった疾患があると考えても
不当ではないはずです。

川口さま
今回の問題については、おっしゃる通りです。
しかし、タックスペイヤーが、こうした研究に税金を使ってほしいという要望があったとするならば、それに応えていくのはパブリックサーバントとしては当然の行為である筈で、あらかじめそうした事項を評価基準に加えておけば結果もおのずと変わってきたのではないでしょうか?

>パンダ様
ありがとうございます。
ごもっともです。
ただし、ここ2年ほど審議会・検討会を傍聴してきた身からすると
現時点で、霞が関に取り扱われている「国民の声」が本当に国民の声なのか
官僚が都合のよいよう抽出してきたものなのでないかという疑念は拭えません。
指標の取り方までひっくるめて情報公開が望まれますし
それがなされない間は、推定有罪で見る人もいるだろうと思います。

独立行政法人からの科研費はそのプロジェクト以外にも使っていいのですか?

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