懲戒処分を受ける医師は予測できる? |
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投稿者: 新井裕充 | 投稿日時: 2009年04月05日 15:55 |
「無責任」「批判を受け入れられず理屈っぽい」などと評価された医学生は、医師になって懲戒処分を受ける確率が3倍―。こんな海外の論文を九州大学の吉田素文教授が紹介しました。
4月3日に文部科学省で開かれた「医学教育カリキュラム検討会」でのことです。
吉田教授は、懲戒処分を受けるような問題のある医師は学生の段階から予測が付くと主張。「21世紀米国医学教育の最前線」(エレン・M・コズグローブ著)を引用し、「プロフェッショナリズム」として、①倫理的実践②内省/自己認識③行動に対する責任④患者への敬意⑤チームワーク⑥社会的責任―の6つを示しました。
その上で、「医学生時代の問題行動が、医師として懲戒処分を受けるような問題に結びついていた」などと、臨床実習中の評価と卒後の懲戒処分に関する海外の論文を紹介しました。
吉田教授はまた、「学生による授業評価を記入しなかった学生が、プロフェッショナリズムに関わる問題を起こしていた」「指導に従わずに予防接種を受けなかった学生も同様の問題を起こす可能性が高かった」「無私の行いをしようとしなければ、臨床に進んでから問題を起こす可能性が高い」などとする海外の論文も紹介しました。
さらに、「カナダの医師国家試験に合格した医師の追跡調査」と題する項目では、「コミュニケーションスキルの成績」の部分を赤字で強調しました。コミュニケーションスキルの成績は、苦情を受ける可能性を予測するそうです。
吉田教授は最後に、次のように述べました。
「臨床実習に入ってからでは遅い。臨床実習に入る前の段階で、一番いいのは、入試で(問題のある学生を)はじいてしまうのが良いのだが、今の入試の方法でやるのであれば、われわれが医学教育の中で、低学年の段階で、『人と接するのが苦手である』ということを評価して、苦手であるならば臨床には進めないことを示して改善していく必要があるのではないか」
この発言に対して、委員から特に意見は出ませんでした。2時間の会議の中のわずか10分程度のプレゼンで、足早に議題をこなしたという印象です。この日のメーンテーマは研修医へのヒアリングでしたから、他の傍聴者もこのプレゼンを特に意識していないように見えました。寝ていた記者もいます。
同日のヒアリングでは、研修医が「患者と接したくないと話す研修医がいる」などと発言しました。委員の関心もそこに集まり、研修医は現在の医学教育が知識重視の詰め込み式であるとか、もっと人と接するような教育に変えるよう提案するなど、議論が盛り上がりました。
しかし、ヒアリングの後に吉田教授がプレゼンした時、「あれ?」と思いました。「医学生時代の問題行動が、医師として懲戒処分を受けるような問題に結びついていた」といった話を聴きながら、「うまく仕組まれているなぁ」と感じたのです。
なぜ、研修医のヒアリングと吉田教授のプレゼンを同じ会議にぶつけたのか、とても気になるところです。まさに、「シナリオ通りの医学教育改革」といったところでしょうか―。
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コメント
統計の解釈に明らかに誤りがあります。
得られたデータから相関性を見ること自体は問題ありませんが、1)因果関係を確かめられた関係性、2)強く推測できる関係性、3)面白いが根拠がわからない関係性、4)そうであったら良いなと思った関係性、5)絶対おかしいと思うが数字的に表現された関係性、以上5つのパターンに分けて考えなければなりません。統計が使えるのは1)2)だけです。
今回吉田教授は3)または4)であるべき結論を1)のように使用したこと、およびさらにその推論をまるで白か黒かのように扱って試験における判断材料として使おうとしていることです。
試験の判断材料に使うといえば、ボランティア活動も、授業への参加も、明らかに変化するでしょう。でもそれは間違った方向です。学生が積極的に授業に参加しないのは、半分は講師の責任です。学生時代に社会性が低いと判断すれば、それを教育するのは大学の仕事です。
明らかに問題があって教育できそうもない人はしかたありませんが、教育できるはずの人を教育しないとなると、助けられる可能性がある人を診療せずに見捨てるのに等しいでしょう。しかも将来問題を起こす確率が仮に5%から15%にあがったというようなデータ(この数字は本文献にあたったわけではありません)だとしたら、とても酷い意見でしょう。たとえ30%と100%としても、教育介入で改善できないことを日本人の十分な数のデータをもとに判断するのでなければなりません。
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商売に使って悪いとは思いませんが、どうせであれば広告として出稿しては如何でしょうか。
>「うまく仕組まれているなぁ」と感じたのです。
新井君のすぐれた観察力と適確な推理洞察力は記事を読んでいて頼もしい限りです。今後の取材が楽しみです。
>前々期高齢者さま
ありがとうございます。
最近、どのような書き方でお伝えしたらいいのか迷っていましたので、
とても励みになりました。
今後とも、よろしくお願いいたします。