こども病院のナゾほか。

投稿者: | 投稿日時: 2009年04月25日 02:04

今日のニュース(と思って途中で違うことをしていたら、日付が変わってしまいました。昨日のニュース、ですね)「重症の小児患者、『助かる命が救えない』」で取り上げられているように、厚労省の「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」の第3回会合が行われたそうです。


子どもを持つ親として、この問題はまさに他人事ではありません。そう思って、先日も、この検討会についてこのブログで取り上げさせていただきました(「幼児死亡率は先進国ワースト1レベル。」)。周産期医療の問題もさることながら、本当に安心して子どもを産み育てることができる世の中のためには、小児医療の整備は不可欠です。←もちろん、医療だけが必須事項なのではない、ということは以前も触れたことがありますが・・・。

たしか3月の会合の際には、「PICUの整備について5月末にも見解を出す」とのことだったので、今どういう議論になってるんだろうと漠然と思っていたところでした。

思ったことをそのまま挙げてみたいと思います。


>全国214か所の救命救急センターは「小児を含むすべての重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる」とされているものの、小児救急の専門病床があるのは、2007年12月1日現在でわずか6か所(19床)しかない。

これほどまでに少ないこと、普通に子育てをしているお母さんたちは、よく知らないでしょうね。何かあっても救急車で運んでもらって、受け入れてもらえたら、きっと大人と同じように適切に処置してもらえると思っていると思うのです。でなかったら、問題を指摘する声が市民団体などからもっとずっとたくさん上がってきそうなものです。


>一方、小児医療を専門に扱う「こども病院」など、大型の小児施設は全国に約30か所あるが、重篤な小児患者の集中治療を行える施設(PICU)を持っているのは、08年3月末現在で15施設。小児救急の整備が急がれるが、「小児医療の不採算性」が大きな壁になっている。

まず「こども病院」の定義って何でしょうか?よくわからなかったので検索してみたのですが、やっぱりよくわかりませんでした。同じ意味の言葉として、それらしきものが「小児総合医療施設」というもの。しかし、小児総合医療施設協議会というところのホームページにその定義がありましたが、どうも違うような気もしました。

それにしても、その名前には、どんな症状・状況でも対応してもらえそうな響きがありますよね。しかしやはりこちらも実際には、PICUがあるのは半分、全国でたった15施設とのこと。のこり半分の施設は、診療科はいろいろあっても、設備は街のお医者さんに毛が生えた程度だったりして・・・。この点も、全国のお母さんたちがもつイメージとはずいぶんかけ離れているのではないでしょうか。


>小児科医の不足が深刻化する中、さらに小児救急の専門能力を身に付けた医師を全国214か所(の救命救急センター)に配置することは可能だろうか―。

本当に、一番の問題はそこですよね。どうしてこういう検討会は、ハコモノの話ばっかりするんでしょうか。それも確かに大切なんだろと思いますが、現状で実現できそうもないんではどうしようもないですよね。


>中澤座長は「施設と医師、どこで育てるか。『こういう(小児救急という)専門分野があって、高い意義がある』ということを小児科医たちにイクスポーズする機会が少ない。逆に、トレーニングした者が『来たい』と言うか、この辺で意見は分かれると思うが......、いかがだろうか」と、さらに意見を求めた。

気になるのは、現段階で小児救急を行っている施設が少ない以上、救急対応ができる小児科医のトレーニングはどこで行われるんでしょうか、ということ。つまり、そういう患者さんがあつまってくる場所(記事で言う「小児救命救急センター」のようなところ)が今のところ極端に少ないわけで、でも、そういう施設でないと効率よくトレーニングはできないだろうなと思うのです・・・。だからといってハコモノを整備しよう、っていうのは目的が逆転していますが。


いずれにしても、小児科に人が集まってこないことには過重労働がまずありますから、そこをどうにかしていただくのと同時に、子を持つ親としては、自分たちがモンスターペアレントになったり、身勝手なコンビニ受診をしないよう心がけねばと改めて思うばかりです。また重篤な奨励を扱う小児救急救命センターのような施設の構想が進み、集約化が進んでいきそうですが、同時に救急搬送の体制をきちんと整備してもらうことが前提ですよね。そちらは小児に特有の(ICUでなくPICUがあるように)設備はいらないんでしょうか?集約化=すぐ近くでは診てもらえない以上、搬送についての不安も取り除いてもらいたいなあ、と思います。

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コメント

 小児救急の議論で欠けているのは、実数です。

 産婦人科の母体救急については、年間100人からせいぜい数百人程度ということから、専門診療分野としてではなく、連携によって対処することが当然と思います。

 ハコモノで全国展開して、専門診療分野として独立させて、果たして何人の子供達を救えるというのでしょう。

中村先生のおっしゃる「実数」とは直接には堀米記者も書いた
>そう思って、先日も、この検討会についてこのブログで取り上げさせていただきました(「幼児死亡率は先進国ワースト1レベル。」)。
の実死亡者数のことです。

また、「産婦人科の母体救急については、」(中村先生)
妊産婦死亡率は周産期の妊婦特有の疾病による死亡が「実(死亡者)数」のうちの殆どを占めており、妊婦を救命する目的で産科医が専門医的努力を積んできた結果現在は先進国中でも低く抑えられているため、この先産科医「実数」が少なくなっても集約して連携して対処することで妊産婦死亡の実数増加を予防できることがある程度以上期待できると。またそもそも総人口に比べて周産期医療の対象となる妊産婦の実人口(実数)じたい小さいですから、産科医療介入単独でも実死亡者数をコントロールしやすいと考えられます。周産期総合医療センター化政策の即効性が高く見込めるということですね。

これに対して乳幼児死亡率を下げる目的でPICUを全国にハコモノとして増やす政策は政策の即効性という観点からははるかに劣るだろうと考えられます。理由はそもそも対象(乳幼児)人口が大きいのに小児科医実数は少ない。乳幼児の死亡原因は疾病によるものより事故死が最も大きな比率である(堀米記者の「幼児死亡率は先進国ワースト1レベル。」参照)なら小児科医よりさらに少ない小児外科医を総合小児科医としてトレーニングする必要がある。この点に関して堀米記者の「(記事で言う「小児救命救急センター」のようなところ)が今のところ極端に少ないわけで、でも、そういう施設でないと効率よくトレーニングはできないだろうなと思うのです・・・。」懸念が成立します。

国民が即効策を求めている時に即効性とは程遠い迂遠な、しかも巨額の財政出動を要する政策であるPICU全国新設を、厚労省の「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」が「PICUの整備について5月末にも見解を出す」の来月末に直ちにGO!サインを出せる状況とは思えません。
5月末なら現実的には堀米記者の言う「集約化=すぐ近くでは診てもらえない以上、搬送についての不安も取り除いてもらいたいなあ、と思います。」に対する対策、すなわち救急搬送対策の範囲にとどまらざるを得ないのではないか、と外野で勝手に予想しています。

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