「基金」のねらい。

投稿者: | 投稿日時: 2009年04月25日 17:04

今日のニュース【「地域医療再生基金」を都道府県に設置―厚労省補正予算案】を読みました。

その中で一番目を引いたのは、最後にあった国会議員のコメントでした。「『基金』だと複数年度で予算が使えるので役人には扱いやすくなる。しかも、今回の補正予算案にはやたら『基金』設置が目立つ。結局役人の天下り先が増えるだけではないか」――ああ、そういうことだったのか、と妙に納得してしまいました。

そもそも、何で「基金」なんだろう、というのが、記事のタイトルを見たときの疑問でした。


読んでいると、【「補助金」でなく「基金」の形にすることで、複数年度にわたって予算をやりくりできることになる。】という説明が出てきたので、なんとなくわかったような気にさせられていましたが、よくよく考えるとやっぱり変です。

というのは、そこより前の記述に、【計画の期間は未定だが、「地域の実情に応じてということになるが、5年間ぐらいを想定している】とあります。また、後から、地域医療再生計画の内容として厚労省は【▽大学病院などと連携した医師派遣機能の強化▽地域内での医療機関の機能強化、機能・役割分担を進めるための連携強化▽メディカルクラークの集中配置など勤務医・看護師などの勤務環境改善▽短時間正規雇用制度など多様な勤務形態の導入による勤務医・看護師の確保・・・】といったことを挙げています。しかし上記のような具体策は、“5年くらい”を想定した一時的な財政支援によって行われるべきものでしょうか?本来は、診療報酬等、医療費の増額によって抜本的に、地域ごとでなく日本という国の医療制度そのものの見直しとして行われるべきではないんでしょうか?


だから記事を読んでいても、どうもすっきりしなかったんですね。それが最後の段落に来て、議員の一言で、突然からくりがわかった感じです。そう思って読み返してみれば、【都道府県が国から補助金を受けるための「補助金計画」とも言える】と、書いてありました。補助金といえば、官僚が権限の拡大(ひいては天下り先確保)によく利用するものというイメージがすっかり私の中には定着しています。さらに今回の場合は「基金」、つまり、毎年3000億円超の予算が5年にわたって投じられるということは、合計1兆5000億円(“補正”にしては、実はすごい額ですよね!)を上回るお金をその期間、管理する必要が出てきます。管理する「人」が必要になるわけですね。なんだそういうことかと・・・。


もちろん、地方自治体にしてみれば実際メリットもあるでしょう。ただでさえ地方は都市部より財政的に厳しいところが多いでしょうから、「2次医療圏」の抱える問題等(たとえば、先日の毎日新聞調査記事「2次医療圏:産科医、3割で負担過剰 分娩数、限界に」など)を見ても、それを国の援助なく解決する体力に乏しいこと、しかし対応は急務である、といった事情も想像に難くありません。その緊急措置として、地方の実情に応じて幅広い使途を認める点は、悪くないかなあと思います。


たしかに「結局役人の天下り先が増えるだけではないか」なんて考えると、かなり白けてしまいますが、「それはそれ」と割り切って、このお金を各地域には本当に有効活用してもらい、国レベルでの抜本的改善のほうも同時進行で議論を進めていくと。結局それしかないのかなあ、と思います。ちなみにこの「地域再生医療基金」、医療現場ではどれくらい評価し、期待しているんでしょうか?また実際、どれくらい実効性が期待できるんでしょうか?

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コメント

>今回の場合は「基金」、つまり、毎年3000億円超の予算が5年にわたって投じられるということは、合計1兆5000億円(“補正”にしては、実はすごい額ですよね!

コレって逆じゃないのかな?
今回の補正予算案の詳細情報を入手していないので、何とも言えないのだが・・・。

「5年間の基金として○億円」というアナウンスメントは、財政法14条の2に規定される「継続費」を適用して、○億円を5年間に分割して財政支出する、という意味かと思うのだが・・・。

毎年3000億円超の予算が5年にわたって「分割して」支出されるので、今年度中に支出する分は1/5の600億円(均等に分割した場合)で良いとするのが、財政法14条の2の「継続費」だと記憶しているが。この継続費での分割支出の期間は5年まで認められるので、「5年間の基金として○億円」という説明がピッタリ当て嵌まる。

私の推測憶測だが、今回の補正予算での「5年間の基金として総額○億円」という政府与党のアナウンスメントは、こんな意味合いじゃないかしら?
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取り敢えず平成21年度末(2010年3月31日)までに実際にお金を支払えるのは、○億円の1/5以下の金額だけど、基金としての5年間トータルすれば○億円ダヨ、スゴイでしょう国民の皆さん!
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もしこの推測憶測が当たっていたら、詐欺的商法の宣伝パンフも顔色無しだと思う。

政治部のベテラン記者に聞いてみれば、○億円×5年分が正しい解釈なのか、それとも5年間の総額が○億円で、初年度の今年は○億円の1/5以下なのか、ハッキリするのだが・・・。

喜ぶにしろ、ガッカリするにしろ、情報の確認がとれてからにした方が良いと思う。

>>今回の場合は「基金」、つまり、毎年3000億円超の予算が5年にわたって投じられるということは、合計1兆5000億円(“補正”にしては、実はすごい額ですよね!

>コレって逆じゃないのかな?
>今回の補正予算案の詳細情報を入手していないので、何とも言えないのだが・・・。

 「地域医療再生基金」で検索すると、各紙の「三年間で一兆円規模」の見出しが躍っているので、堀米様の理解で間違いないのでは、と思いますが。

Anonymous様
補正予算の情報を頂き、また私の情報収集の不足をご指摘下さり、ありがとうございます。お陰様で私自身の平成21年度補正予算に対する理解が一気に進展しました。お礼申し上げます。

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さて、新聞各紙の「三年間で一兆円規模の基金創設」の記事は確認しました。またこの基金構想の端緒と思われる、本年4月2日の参議院厚生労働委員会における国民新党の森田高議員の、鳥取大学の救急講座が消滅の危機に絡めた低医療費政策の質問と、舛添厚労大臣の下記の答弁も議事録より確認しました。

舛添大臣答弁:診療報酬以外にも直接的な財政支援を補正予算や何かで組んでおりますけれども、先般、総理がもう一回この大きな経済対策をやれということをおっしゃって、その中でこれは地域医療を何としても守るために 大 き な フ ァ ン ド を是非組めればと思っていますんで、ちょっと省を挙げて、地域医療の崩壊を食い止めるための財源措置、それから様々な手当てを考えたいというふうに今思っています
(参議院HPの厚生労働委員会平成21年4月2日の会議録より引用)

これら教えて頂いた報道記事や、国会の議事録、或いは与野党の議員のHPなどから収集した情報を総合すると、どうやら基金という考え方は継続費での遣り繰りではなく、複数の費目に別れていた歳出予算を一つの政策目的に集約することを、与党サイドでは「基金創設」と称しているように受け取れました。

ただ私が主張したかった本意は、今回の基金創設での3100億円規模の補正予算が、3100億円の新たな国庫支出の増額=いわゆる真水で3100億円の純増なのか、それとも平成21年度当初予算に盛られていた医療関係予算の歳出費目を組み替えて、地域医療再生基金という費目に纏め直しす「補正」が3100億円なのか、そこを確認してから論評すべしとの意図でした。今回情報集めて感じた結論は、やはり3年間で1兆円或いは3千億×5年分で1兆5千億円が、新規に歳出されるのではないようだと改めて感じた次第です。

ですので「喜ぶにしろ、ガッカリするにしろ、情報の確認がとれてから」という前投稿の最後1行については、自分への自戒も半分込めて改めて大事なことだと思う次第です。

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なお政治報道の読みとり方の一般論として、「補正予算○億円」という報道記事は、当初予算の◎◎億円に補正分の○億円が単純に上積みされることを直接意味しません。

例えば、当初予算が88兆円に加えて補正予算が15兆円組まれたという報道を見聞きしたときに、国庫の年間支出金額が88+15=103兆円に増える訳じゃないということです。当初予算の88兆円という総額はそのままに、88兆円の内訳を組み直して15兆円分の歳出費目を移し換えた場合(下記の財政法29条1項の括弧書き部分参照)でも「15兆円の補正予算」です。

この場合は国庫支出額は補正前と補正後でも同じ88兆円のまま変わりませんので、真水(純支出増)はゼロになります。また国庫支出の総額は変わりませんので、新たな財源手当(増税や国債の追加発行)などは必要なく、歳出予算としては15兆円の補正だが、歳入予算としては補正ゼロということも理論上に限られますが、あり得ることになります。

財政法:第29条(補正予算)
  内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、
  補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。
 1 法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、
   予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出
   (当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。)
   又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合
 2 予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を
   加える場合

また補正予算は一般会計だけでなく、各特別会計においても組まれまが、そうした特別会計での補正予算の金額規模も、新聞報道では「総額○兆円の補正予算」という見出しに含めるのが慣例になっています。今回の補正予算報道にもある「雇用調整助成金を6千億円拡充」は、雇用保険制度の特別会計(労働保険特別会計)での増額が大部分であり、一般会計での歳出増は職安での事務経費増額分等の僅かなものにとどまります。でもこの特別会計の支出分も含めて「総額○兆円の補正予算」と言う習わしになっています。

この4月になってから麻生内閣は、総事業費で56兆円、財政支出で15兆円規模の平成21年度補正予算をブチ上げています。ですが去る3月27日に成立した平成21年度一般会計予算の88兆5480億円に、この事業費規模での56兆円の補正予算の金額が上積みされるわけではない。また財政支出の15兆円にしても、その全てが一般会計予算への上積み加算ではないようです。そして我々はこうしたことを知った上で、政治のニュースは読むべきだと思います。

ある意味で政治的アピールというか宣伝効果を狙って、与党は「総事業費で56兆円、財政支出で15兆円規模!」とブチ上げている部分があります。この誇大宣伝的体質は麻生政権特有のことではなく、戦後の全ての政権与党と財政予算制度を仕切る官僚とに共通する習性であり、日本の政治的慣習でもあります。こうした補正予算金額の誇大宣伝的な表現慣習は承知した上で、政治のニュースを読みとり、そして批評したいものです。

ロハスも報道メディアを目指すのであれば、こうした行財政や政治報道特有の誇大宣伝的慣習も踏まえた上で、「実質はどうなんだ」という視点での報道や解説をお願いしたいのです。ニュース面と違いブログにはライター個人の主観が入るという、ロハス総責任者の川口様の方針は了解していますが、主観を入れる意見ということは誤解や勉強不足を容認することとは違うのではないかと思います。

報道記事の正確な理解と分析の上に立ってこそ、初めてニュース報道に対する主観的な意見や感想が、社会に対する主張として意味を持つのではないでしょうか。

 基金は、数年分の財源をいちどに地方に渡してしまう、いわば丸投げのようなお金(国の取り扱いは、継続費でも債務負担でもありません)

 っていうと誤解されるかも知れませんが、地方が自由に使って良い訳はなく、基金条例を作ってしっかりその目的のために使うことになります
(各都道府県では先の2~3月議会でたくさんの基金条例が提案されていると思います)

 ことの発端は、昔はこれらの事業、多くは補助金でやっていたのですが、三位一体の改革ってやつで、補助金→地方交付税 にされたものです

 なので、妊婦健診にしてもがん検診でも、地方交付税になりました
 地方交付税は、地方自治体が総務省に「交付税相当分は○○億円」とか言って申請するのですが、交付される交付税は、平均すると5割程度でしょうか

 なので、妊婦健診なんかも進まない
 決して地方自治体が他に流用している訳ではありません

 ので、今回の基金による手当になった訳です(交付税措置の抜け穴を厚生労働省が見つけた(そして押しつけた))

 で、基金の問題

・足りない時は事業をやめるor地方の持ち出し
・事業終了時に剰っていれば国庫に返還
・事業の翌年度からは財源が無くなるので、事業が無くなるor地方の負担(住んでいる地域で格差が出てくる)

 って感じです

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