やっぱりわからない外来管理加算。

投稿者: | 投稿日時: 2009年04月29日 15:49

「外来管理加算」とは、「外来患者が再診でリハビリや処置などをしない場合に加算される」診察料のこと――一昨日のニュース「診察時間の目安、『必要でない』55.8%」で、外来管理加算というものについて初めて知りました。今まで明細書を見ていなかったわけではないと思うので、気づかなかったというよりは、自分はそれにあたるケースがこれまでなかったんだろうな、と思います。

それにしても、なんかよくわからないですよね。何もしてもらわないと料金が加算されるなんて。ちょっと調べてみました。

平成19年の中医協の資料によれば、外来管理加算の根拠としては、「一定の処置や検査等を必要としない患者に対して、懇切丁寧な説明や計画的な医学管理等といった医療行為を行うことを包括的に評価したもの」としています。

しかし、同じ資料に以下のような指摘も記載されています。
●このため、点数が個別に評価されている処置を実施した場合よりも、それらを実施しないで外来管理加算を算定した場合の方が高い点数となることがあるとの指摘がある。
●また、受診した患者にとって、目に見える処置などをするよりも、しない方の自己負担額が高くなり、患者にとって分かりにくいとの指摘もある。


まさにそのとおり、患者にしてみれば、ちょっと納得しづらいところです。


そして、今回問題となっている「5分要件」ですが、ちょうど上記資料中で目安の診療時間を定めることが論点となっており、その後、昨年の中医協の資料では、「外来管理加算の意義付けの見直し」として以下のように記されています(24ページ目)。

●基本的な考え方
外来管理加算は、処置、リハビリテーション等を行わずに医学管理を行った場合に、再診料に加算されるものであるが、その提供される医療サービスの内容が患者にとって実感しにくいとの指摘がある。これを踏まえ、外来管理加算を見直し、外来で継続的な治療管理を要する患者に対し、医師が患者の療養上の疑問に答え、疾病・病状や療養上の注意等に係る説明を懇切丁寧に行うなどの、療養継続に向けた医師の取組への評価とする。

●具体的な内容
問診と詳細な身体診察(視診、聴診、打診及び触診)による診察結果を踏まえて、患者に対する症状の再確認を行いつつ、病状や療養上の注意点等を患者に説明し、その要点を診療録に記載することとする。また、医師は患者の療養上の疑問や不安を解消するための取組を行う。


そしてさらに、「提供される診療内容」の例が4つほど挙げられた上で、最後に「これらの診察には最低でも5分の時間を要すると考え、診察時間の目安とする」としています。


しかし、そもそもこの外来加算管理の根拠である懇切丁寧な説明や計画的な医学管理云々は、便宜上のもの、という話もあるようです。今回の記事でも「真の狙いは医療費の削減で、薬の処方せんを受け取るために来院する『お薬外来』での算定を抑制する目的だったとされる。」「『5分要件』の導入によって生じた約250憶円は、勤務医の負担軽減策に必要な財源に充てられた。」としています。


そもそも「外来加算管理」が追加されたのも、平成4年、それまでの「内科再診料」(昭和42年設定)を受け継いだものだったようです(これも厚労省の資料に、「内科再診料・慢性疾患外来医学管理料を廃止し、処置等を行わなかった場合の医学的管理を評価するため外来管理加算を新設した」とあります)。

つまり、当初の目的自体、再診回数の少ない内科系の診療科と再診の多い診療科との不均衡是正のため設定されたもの、というわけですね。 


外来管理加算にはこうした経緯がある、というか公に謳っている目的と別に、こうした思惑がむしろ先にありきだったんですね。これでは患者にしてみれば、腑に落ちないのも無理もありません。


それに加えて、「5分要件」が待ち時間を長くしているとなれば、なおのことこの要件はいらないと思ってしまいます。もとより自分だって薬をもらえればよくて5分もしゃべらなくてもいいから、他の人の診察も早く済ませてもらって全体として待ち時間を短くしてほしい、と思う人はたくさんいるはずです。まして、内科での待ち時間が必要以上に長くなることは、待合で他の人から風邪や他の病気をうつされるリスクも高まるのでは、と心配になります。


必要な医療費の捻出のために外来管理加算が使われるのが一概に悪いとは言えないとしても、そこをいじくったせいで待ち時間が長くなるなどの弊害が出るのは困ります。やっぱり患者の視点がかけているのかなあ、と残念に思います。だらだらと意味のあまりない診察を長い待ち時間の後に受けるくらいなら、かつての「お薬受診」のように短いところは短くてもいいかな、と。要はメリハリが大事なんじゃないでしょうか?

<<前の記事:損得勘定をしっかりと    4000億円の交付金創設、介護職の賃金アップに-厚労省補正予算案 コメント欄:次の記事>>

コメント

 一内科医の立場から説明させていただくと、初診料・再診料は欧米の1/2以下という劣悪な環境。
 医師一人なら良いけれど、この再診料で看護師さん事務員さんの給料も養わなくてはいけません。かといって再診料を上げると、怪我の処置(毎日消毒)などという診療所がまだあるとすれば、外科系の診療所は収入が上がり内科系は不均衡となると理解しています。
 再診料を上げない代わりに、この不均衡を是正するために問答無用で管理料がつくはずだったのですが、5分ルールなどというケチくさい制限を設け、小作人から鋤・鍬の利用料まで取り立てようなどという姑息な、あるいは詐欺まがいのルールとしか思えないのですよ。

内科医さんのいわれるように元々外科と内科の収入の是正のための手段として管理料がつくられたものです。ただ最近のレセプト開示の流れで、「管理料」という名前が何もしてもらってないのにとられるのはおかしいと患者側からいわれるようになってきてました。厚労省が医療費削減のためにこの声にのかって、診察をある程度の時間以上しないとだめということにしたんですよね。

いつも興味深く拝見しています。

患者(医療消費者として)からの視点というものを考えると、外来管理加算は非常にその意義を説明しづらく、つまるところ医療側の都合です。

一方、医療側の調整弁としての外来管理加算は非常に優秀です。
はっきりと明示されている訳ではありませんが、一日の算定患者数が概ね制限されますので、患者数の少ない診療所は多くの患者で算定でき、患者数の多い(儲かっている)診療所は算定が憚られます。つまり、5分ルールの導入で実際には経営の危機に陥ることがない訳です。

しかしながら、そもそも収入のほぼ全てを診療報酬制度で決められてしまうのにこのようないい加減なルールを決められ、しかもその梯子すら突然外されるのには本当に閉口します。一内科医さまの如き、呆れ顔の医療者が全国に大勢いることもぜひ知っておいていただきたいと思います。

医療の方向性や利害の調整を診療報酬に求めると、日本ではこのように患者に関係のないフィーの自己負担を患者に負担させてしまいます(他国では、患者の自己負担につながらない報酬制度を導入している国もあります)。

蛇足ですが、
>薬の処方せんを受け取るために来院する『お薬外来』での算定
との記述がありましたが、先日発行のロハスメディカルにも記載のとおり、無診察投薬(処方せん発行)は禁止されています。
私は薬剤師ですから、このような薬もしくは処方せんをもらうためだけに病院を訪れないといけない制度には反対です。ましてこのことを承知の上での必要悪のために薬局が病院の隣でないと不便であるかのような結論のまま、現状が放置されていることに反対です。

…コメントを書いていたのですが、長くなりましたのでエントリを立ち上げさせていただきます。

皆様

コメントありがとうございます。一内科医さんの、内科医としてのご意見、本当に貴重です。振り回されているのは国民ばかりでないのですよね。元レセコン屋さんが端的にまとめてくださったことからも、厚労省の政策が首尾一貫していない場当たり的なものであることがわかります。また、逃亡者さんの薬剤師からのご意見も、たしかに患者視点に置き換えても、もっともに思えますね。単に患者と医師・病院ということだけでなく、視点を広く持たねばいけないと痛感させられます。

・・・中村先生のエントリーでさらに勉強させていただこうと思います。

無診療投薬の意味を誤解している。無診療投薬とは,一度も治療をしていない初診患者に投薬等の治療を行うことであり、慢性疾患の方なら毎回診療してもらう必要は無いはずだ(あまりにも超期間なら話は別だが)。

葛飾区に住む67歳の患者で、病院にて薬を貰ってますが、初・再診料が1,210.-医学管理料 870.ー投薬料1,330.-が一回にかかります。(保険適用外)
この金額は毎回(一ヶ月以内でも)掛かるようですが?この内容について、どなたか教えて頂けないでしょうか、お願い致します。

コメントを投稿


上の画像に表示されているセキュリティコード(6桁の半角数字)を入力してください。