4000億円の交付金創設、介護職の賃金アップに-厚労省補正予算案 コメント欄

投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2009年04月29日 16:41

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基金という名目で、単年度会計主義からの抜け道を探しているんですね。
勉強になりました。

でも、やはり本来は、支払と給付のバランスを取るために、保険料の値上げについての理解を求めるのが政治の役割だろうと思います。

同時に、給付を受ける人と、給付のための保険を払う人とが一致しないので、いわゆる「保険」というより公的再分配に近い制度なので、本当はサービスを受ける人にも我慢と負担を求めないといけないのに、それをしていないことは問題です。

ナルホド、麻生内閣は頭が良い。景気対策予算の3年分を一挙に今回の補正予算に計上し、「総額十数兆円の超大型補正予算を組みました、国民の皆さん麻生はヤリます!努力してます!、この金額を見て下さい!スゴイでしょう!」とやらかしたんだから。

「介護職員処遇改善交付金(仮称)」に3975億円の補正予算を計上するが、その3975億円は今年度中に全部支出せず、3年がかりで支出するシステムの「基金」に組み込むという。つまり来年度予算で基金への追加の資金投入がなければ、今年度計上の3975億円を、今年10月から平成23年度末までの2年半、都合30ヵ月に分けてチマチマ使う金額ということになる。

結果的に1ヵ月当たりの交付金額は、3975億÷30ヵ月で概ね130億円。もし来年度以降に基金に追加予算が盛られなかったら、今年度の平成21年度の末までに使える枠は800億円ばかりしかない。4000億円の3年間の基金だからと掛け算すると、この秋になって毎月130億ばかりという実際の金額の薄さに愕然とするだろう。

そして30ヵ月で4000億円、月割で130億円ずつ使えると言っても、介護従事者の1人当たりの毎月の賃金(給与)額にはどの程度の予算額となるのか。パートなど非正規雇用も含めての介護関係の従事者数は、概ね3百数十万人といわれる。その内の約1/3強の130万人がこの交付金の恩恵を受けると仮定して、雇用主である介護事業者への交付額は、従事者1人当たり月額1万円となる。

もちろん先の3%の介護報酬の増額改訂もあり、賃金支給の実額の増加分の方が、交付額より上回るようになる介護事業者も多いであろう。政府与党や官僚の思惑通りに行けば、介護事業の類別によっては1人当たり月額1万円を超える賃金増となるかもしれない。しかし、この支給率そのものが介護従事者の個人宛てに直接支給されるのではなく、介護事業所に支払われる介護報酬額に一定の交付率をかけた金額が毎月支給されるという仕組みであるから、この毎月130億円の交付金がそのまま賃金の支給増に結びつく保証はない。

介護報酬に交付金を加算されて事業者に支払われるのであるから、交付加算額が職員の賃金に使われずに、事業者の過去の赤字の穴埋めに使われたりして、賃金増に回わさないような事業所も出て来るであろう。当然ながら、行政(厚労省老健局)は交付金申請に添えられた事業者からの「処遇改善計画書」をタテに、赤字の穴埋めになどに流用されることは無いハズと予算説明するのであろうが・・・。

でもねぇ、雇用保険の助成金、中でも昨年暮れから無茶苦茶に適用条件が緩和拡大した雇用調整助成金(休業自宅待機労働者への賃金補償を助成)などでも、受給する事業主が焼け太りするような事例だって実際には結構見聞きする。雇用と賃金について直接監督権限がある労働保険の分野でも、助成金が労働者には全額渡らないような事例が数多くあるのに、雇用と賃金について強制的に調査監督する権限の無い旧厚生省系の老健局が、交付金の使途までキチンと追跡して管理できるのか、日頃労働保険や助成金に関わる職にある者としてはなはだ疑問に思う。

まあいずれにせよ、「未曾有の大型補正予算」と麻生首相は胸をそらすが、その実態は数年分の支出枠を先取りして「基金」という名称に括った、一種の水増し数字の部分が相当あるようだ。

補正予算金額の見出しだけで喜んではいけない。財源や支出の具体案まで確認してから、その実質的は政策効果の程を論ずるべきと思う。

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