介護の実態。

投稿者: | 投稿日時: 2009年05月01日 17:04

昨日ニュースで「4000億円の交付金創設、介護職の賃金アップに-厚労省補正予算案」を読んだ後、電話で話をした親戚の女性が、まさに当事者ともいうべき介護ヘルパーをしています。彼女はもともと長らく全然別の仕事をしていたのですが、いろいろな出来事や思うことがあり、今から5年ほど前に一念発起、その世界に飛び込んだのです。

あっけらかんとした彼女の話はいつも本当におかしくて、ついつい笑ってしまいます。でも、本当は全然笑える話じゃありません。

彼女の今朝一番の仕事は、御歳84歳の認知症のおばあちゃん宅訪問。今朝の会話から。「大田さん、おはようございます」「ああ、みよちゃんおはよう」「(「みよちゃん」て誰だ?)あらやだ、京子ですよ。調子はいかがですか」「あらそうかい、みよちゃん。ところであんた何歳だい?」「あ、私はもう39です」「ほう、そうですか。(得意げに)あたしゃ24」

彼女の担当している高齢者のほとんどが、認知症を患っているそうです。しかも皆さん、若い頃の世界に生きているらしいのです。だから上記のような会話は日常茶飯事とのこと。でも、もっと深刻なこともいっぱいです。


御歳94歳の清水さんのおばあちゃんは、これも重度の認知症なのですが、独居されています。京子氏は毎回、ハラハラドキドキで訪問するそうです。先日は、訪れてみると、清水さんが一生懸命に手を洗っていました。「なんかねえ、手についちゃってとれないんだよ」。見れば、両手は肘までご自分の排泄物に覆われていました・・・。ドアを開けたら部屋中が汚物まみれ、ということもめずらしくないそうです。息子さん(50代後半)が毎日コンビニ等で買った食料を大量に届けているらしく、ひたすら食べ続け、ひたすら排泄しているようです。「独居は無理」と事業所から何度息子さんに言っても、改善されません。息子さんは自営業で自社ビルを所有しているのですが、「不景気もあって、経済的に余裕がない」こと理由に、自社ビルの一室(タダですから)に清水さんを一人住まいさせ、食事だけ運んで、あとは介護ヘルパー任せらしいのです。特別養護老人ホームはいっぱいでなかなか入れそうにありません。京子氏らは、「では、とにかく、納豆巻きとカレーパンだけはやめてください」と頼んだのだとか。カレーは汚物と見分けがつかないから・・・。笑えない話です。


特別養護老人ホームの入所はいろいろな条件を点数化して、点数の高い人が優先されます。京子氏によれば、清水さんの場合、要介護2+認知症には違いないのですが、息子さんが近くに住み、毎日のように様子を見に来られる状態であるために、点数が低く、入居できないでいるといいます。現在以上にヘルパーを長時間・頻回にするのは介護保険外になってしまうので、それも「無理」ということらしく・・・。


とはいえ、実態は上記のとおり。そんな作り話みたいな話がこんなに身近に転がっているとは!唖然愕然というほかありません。


どこに問題があるのか、簡単にはいえません。やたらなことはいえません。清水さんの場合も、家族の対応にはもしかしたら問題があるかもしれませんが、詳しい状況がわからないのでなんともいえません。でも、いずれにしても認知症の老人を抱える家族の大変さは、相当なものと思います。特養に入れることが、家族の「逃げ」という人もいるかもしれません。実際、入れっぱなしで家族に放ったらかしにされているような高齢者も少なくないとも聞きます。しかし、じゃあ、自宅での介護を決心したときに、あるいはそうせざるを得ないときに、現在の介護サービスはどうなのか、介護保険のカバー範囲はどうなのか、人手や財政の面でも問題は山積みです。


京子氏は介護ヘルパーになる直前まではデスクワークで、毎日、数字とにらめっこしていました。しかしその前、一時だけ、保育士をしていたことがあります。昔は子どもたちのオムツを替え、今はお年寄りのオムツを替えています。ちなみに現在6歳の子どものお母さんです。その彼女がいうには「自分には今の仕事があっている」と。もちろんお給料は前よりずっと低いそうです。でも、「いろいろやってきて、ようやくたどり着いたと思う。将来ある子どもたちのオムツを替えるのもいいけど、今まで頑張ってきた人たちのオムツを「お疲れ様」といって取り替えるほうが、自分にはあってるんだね。第一、毎日面白くて仕方がないよ」

介護ヘルパーをしている人は私の身の回りに、彼女しかいません(彼女の家族や周囲の人々も実のところ、いろいろ心配し、ずっと反対していたそうです。最終的には彼女はそれを押し切ってヘルパーになりました)。他のヘルパーの方々がどんなことを考えて、どういうふうにお仕事に望んでいるか、わかりません。いろんな人がいるかもしれませんが、それでも、「私にできるだろうか」と考えたら、やっぱり躊躇してしまいます。そう思うと、「多くの人が進んでやらないけれども必要とされていて人手が十分とはいえない仕事」には、それだけの評価が賃金に反映されるべきなのではないかと思います。←これって普通ですよね?


今回の交付金がどれだけの効果をもたらすか。どれだけ期待ができるのか、私には全然わかりません。でも、医療と同じく、介護も現場の声が上にまで届いているのか、その視点から政策立案されているのか、そこが気になるところです。(ちなみに療養病床のことを考えれば、医療と介護との接点ともいえる問題ですよね。医療崩壊が問題になっていますが、介護のほうはスタート時点から厳しいところを走っている気がします。医師と比べて、介護を生業とする人たちの社会的地位や発言力が、率直に言って、低かったり小さかったりするのは否めないですよね。でも、高齢者がますます増えることを考えれば、介護の制度がうまく回っていかなければ、医療のほうにシワ寄せがくるかもしれません。医療と介護、どちらかだけでも結局ダメなんだろうな、と思います。)

ちなみに、当たり前ですが、今回の登場人物は全部仮名です・・・。

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コメント

お前は蒋介石か! 自民党が46基金(4・3兆円)を疎開させる
http://blog.goo.ne.jp/kokkai-blog/e/dfee2315cc929c8e3cab61c0e395ef4f
これにより2009年度第1次補正予算案が、経済対策ではなく、自民党議員の政権転落&失業後の雇用対策であることが明白になりました。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090501AT3S0102701052009.html
政府が追加経済対策を計上した2009年度補正予算案で、総額4兆3000億円に上る46種類もの「基金」をつくることが明らかになった。地方自治体などにお金をプールし、複数年度の支出を確保する狙いだ。ただ予算が過剰に積まれたり、お金の使い道が不透明になるなど財政規律を損ねる懸念がある。
民主党の細野豪志衆院議員の質問主意書に回答するため、1日に閣議決定した答弁書で判明した。

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