ドラッグラグの原因は?

投稿者: | 投稿日時: 2009年05月07日 13:44

昨日のニュースはPMDAについてでした。なかでも、3ページ目では、ドラッグラグについて触れられていました。

読んでいると、ドラッグラグの原因について、審査スピードに言及したところで終わっていましたが、私がこれまでに耳にしたことがある“原因”は、それだけではないように記憶しています。(PMDAのニュースなので、その点しか触れていないのだとは思いますが。)


と、いうことで、審査スピード以外のドラッグラグの原因について、ちょっと振り返って調べてみました。

まず確認したのは、ロハス・メディカル2007年11月号「それでいいのか薬価」。その最後のページの一節です。引用してみますと、


【特に新薬開発の中心は、化学合成物から、分子標的の抗がん剤や遺伝子治療薬のように、より開発費も製造費も高価なものに移っています。画期的な開発をした会社に十分な利潤が与えられないと、次の画期的開発につながらないとの説があります。(中略)画期的な薬を開発したメーカーは高い薬価のつく米国などに先に投入して、後から日本に入れて引き上げ調整させるのが合理的です。だから、画期的医薬品の登場は海外に何年か遅れることになります】


ここを読むと、日本の薬価の低さのために、新薬の導入については日本を後回しにする企業側の都合が見えてきます。


そうしたことを更に思わせる説明・データの載った資料がありました。
「日薬連から提案されている薬価制度改革案について」
中央社会保険医療協議会 薬価専門部会
 (2008年7月9日)


後ろにある別添資料3は、ドラッグラグの現状を示していますが、別添資料4はまさに、日本を後回しにする企業の現状を示しています。日本の製薬さえ、日本での導入は後回しなのです。その理由を示唆するのが、別添資料5~10です。


本文中でも解説されています。抜粋してまとめると、

●国内メーカーは海外先行で開発を行い、大手外資企業はアジアでの研究開発拠点を日本以外の国に確立しつつある。

(要因)
●世界の医薬品市場が成長する中、日本の医薬品市場は低成長にとどまっており、結果としてその国際シェアも低下している。
●日本では、新薬の薬価が継続的に下落している(日本独特)。一方、後発品の使用促進政策が協力に進められており、徐々にその割合が高まっている。
⇒日本の医薬品市場の魅力度が相対的に低下。企業の新薬上市や研究開発投資への意欲減退へ。


要は、日本の市場は規模が小さすぎる上に、日本では研究開発費用を回収する前に、新薬の価格が下落してしまうということらしいです。それで企業は先に海外(主にアメリカ)で治験~導入を図ると。薬価のつけ方が起業の自由にならない以上、こうした対応は仕方ない部分もあるのかもしれません。かといって積極的に認めていてよい事態でもないはずです。


ちなみに、先に海外で審査・承認~発売されることは常に問題かというと、そうともいえないと聞いたことがあります。海外での実績等を踏まえて、審査の内容にも反映させることができる、と。しかし、人種間の違いなども出てくるでしょうから、日本人でデータを取る必要性はもちろん高いはずですよね。

また、ドラッグラグが大きいと、日本での導入まで待てずに個人輸入に頼るケースが出てきますが、個人輸入だと問題が起きても情報が共有されづらいなど、いろいろ問題もあるのだとか。


いずれにしても、PMDAは薬事の専門集団で、ドラッグラグの責めを彼らだけに負わせることはできないようです。薬価など制度的なところ、市場とメーカーの判断・行動などなど、ドラッグラグの問題はなかなか複雑そうです・・・。

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