「第二波に備えて想定し直しを」 政府側専門家の尾身・岡部両氏 コメント欄

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2009年05月28日 16:11

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 政府の新型インフルエンザ対策をサポートしている専門家諮問委員会の尾身茂委員長(... 続きを読む

コメント

現場寄りの立ち位置からは、尾身・岡部 両先生の答弁、とりわけ尾身先生の冒頭の「政争の具にするな!」などは、ただただ「カッコいい…」という印象でしたけどね。

岡部先生におかれては、今朝の朝日新聞のインタビュー記事もgoodでした。

ともあれ、森兼・木村 両先生の答弁、楽しみにしておりまする>川口さま

力作お疲れ様です。ただ、“(ワクチン)摂取”や“痴呆”自治体はちょっと…>川口さま

さて、個人的に気になった部分について。

人的な部分を含め、rRT-PCR等の検査実施体制の強化(と、そのために必要な国の予算措置)は、地方の公衆衛生の現場としては嬉しい限りではあるのでしょうが…

>大学に協力いただくとか民間への外注とか

…この例示は、現場に「え゛」という反応を惹起しそうな気が。もしかして、埼玉のハムの事案をご存じない?>鈴木委員

>通りすがりの公衆衛生医様
ご指摘ありがとうございました。
誤字修正いたしました。

あまり根をお詰めにならないでくださいね>川口さま

さて、「もしかしたら続きがあるかな」と思い、2番目のコメントには書かないでいた、保健所の改善について。

…実は公衆衛生実務に従事する医師・獣医師・薬剤師もまた“立ち去り”が珍しくない絶滅危惧種でして…。予算措置で何とかなるとは思われ難い部分が結構あるやに聞きますゆえ、この点は健康局長さんにちょっと同情。

川口様

私としては木村先生から

「専門家がいないからでしょうね。WHOもフェーズ3から4に上げる時、封じ込めに努力せよなんて言ってません。それなのに封じ込めできると言っているのは、国民を欺く行為です。もし彼ら自身が本気で可能だと思っているのだとしたらあまりに宗教的だし、頭に何か新種のウイルス感染でも起こしているのでないかと心配になりますよ。」

というご発言が出るかどうかを確認する意味で期待していたのですが、そんな素振りもなかったですね。

ということは、これは川口さんが勝手に書き加えたと解釈して宜しいのですね?

>KHPN様
木村盛世先生のブログを見れば一目瞭然のはずですが。

各参考人の答弁を踏まえ、今般の新型インフルに対する検疫強化について。

検疫の役割は、感染症の国内侵入阻止・遅延という、昔ながらのものだけではありません(その側面でも一定の効果はあったと考えています)。患者を発見し、種々の伝播様式(transmission modes)を想定しつつ接触者の範囲を決定し、それらについて健康観察等を行うこと(接触者追跡 contact tracing)を通じ、その感染症の感染力や伝播様式といった、感染症まん延阻止に不可欠な疫学的知見を得ることもまた検疫の重要な役割であり、そして今般の検疫強化がその一助となった(尾身先生の答弁中にもその旨ありましたし、岡部先生の、朝日のインタビュー記事の方がより直接的でしたかね)と、私としては肯定的に捉えています。接触者追跡の容易さ・確実さという点で、検疫は、こと輸入感染症に関しては、市中で患者が病院等を訪れるのを待つよりも優れた仕組みですから(いうなれば、active/passive surveillanceの違いというか)。

SARSアウトブレイク以来、この業界では常々“Knowledge dispels fear”といわれます。呪いを解く鍵を得る一助となったことを、各参考人はもちろん、現場で検疫業務にあたられた方々は何ら卑下する必要はない、もっと誇っていいと思います。

> 感染症まん延阻止に不可欠な疫学的知見を得ることもまた検疫の重要な役割であり、そして今般の検疫強化がその一助となった

 具体例を挙げてください。

 検疫で発見された患者さんから感染拡大が始まったというのは、仮説の域を出ません。少なくとも現時点で、関西方面での感染拡大と検疫で確認された患者さんの間の感染の連環について、何らかの証明あるいは示唆が為されているという情報は出ていますか。自分は寡聞にして存じ上げません。

 また、それは検疫所ではなく、保健所の役割とされているのではありませんでしたか。

中村さま
>> 感染症まん延阻止に不可欠な疫学的知見を得ることもまた検疫の重要な役割であり、そして今般の検疫強化がその一助となった
>具体例を挙げてください。

少なくとも、関西圏での発生例と関東での関西旅行者の2例を除いた国内発生例については、検疫捕捉者か海外渡航者(又は外国人)であることははっきりしていますよね。
関西の集団発生については、現時点で明らかになっているものは、国内における広がりはバレーボールの試合とスクールバスということのようですが、ここからは憶測にすぎませんが、感染拡大の源となった学校はかなりの進学校と聞いているので、生徒の家族の中に海外渡航者がいたとしても不思議ではないのでは・・・

>検疫で発見された患者さんから感染拡大が始まった
>関西方面での感染拡大と検疫で確認された患者さんの間の感染の連環

あの、私、そのような主張はしておりません…>中村さま

私のコメントの主旨は…

一般住民よりは患者が含まれる可能性が高い集団をターゲットとしてアプローチ、その中から患者を発見し…
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20090425-436828/news/20090508-OYT1T00793.htm

飛沫感染を想定して接触者の範囲を決定、濃厚接触者にはアクティブサーベイランス(と停留)を、その他の者にはパッシブサーベイランスを(←ここが重要)それぞれ行い…
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20090425-436828/news/20090509-OYT1T00461.htm

その中から新たな患者が発見されることもある…
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20090425-436828/news/20090510-OYT1T00008.htm

…といった活動を地道に積み重ねていく中で、今般のウイルスについて…

・十数時間?の間だけ接触の機会があった者でも相応の感染リスクがあったか
・(4番目の患者さんが当初潜伏期にあったとして)そこからの感染はありえたか
  cf. Patrozou E, Mermel LA: Public Health Rep. 2009;124:193-6.
・直接的な飛沫感染のリスクがあった者とそうでない者とで感染リスクに差があるか
  cf. Moser MR et al: Am J Epidemiol. 1979;110:1-6.
    Mubareka S et al: J Infect Dis. 2009;199:858-65.

…などを検討するためのデータが得られたであろうし、それは、保健所はもちろん、厚労省、国立感染研、検疫所、各医療機関等からなるシステム全体の中で、検疫業務にあたられた方々がその責務を果たされた結果得られたものだと、実地疫学屋のひとりとして賞賛することにあります。

なお、私、日曜夕方まで(たぶん)ネットにアクセスできません。
申し訳ありませんが、その間の議論には参加できませんので、あらかじめ申し添えます。

 通りすがりの公衆衛生医 さん、こんにちは。

 あなたやそのご近所の皆さんは「検疫」あるいは「検疫の強化」という言葉にサーベイランスを含ませているようですが、それは国会の場ではもちろん、昨今の医学部卒業生の間でも一般的な使い方ではありません。

 しかしながら、もし、この自分の推定が正しいのであれば、互いに対する批判は見当違いということになるでしょう。

 あなたが期待される研究成果は、いずれも検疫(隔離と停留)によってではなく、事後の保健所等によるサーベイランス(調査と監視)システムの努力によって確認されるものばかりです。

 また、検疫が済んだ後の具体的なサーベイランスの手続きの一部が検疫法第18条等に定められているからと言って、これを検疫とは呼びませんし、いわゆる水際作戦の一部として認識されているとも思いません。


 ついでながら、このホームページは、その性質上、医療は専門外という方が訪れることが多いのです。医師であれば臨床医として多忙で、自由に疫学の論文を読みあさる時間などあまりお持ちでない方が少なくありません。

 お願いしたいのですが、議論をさらに混乱させるような、ことばの定義や解釈を巡る誤解を招きかねない記述には、今後、充分にご注意いただければ幸いです。もし、ズレのある言葉の使い方をされるのであれば、明示してください。

 また、文献を引用されるのであれば、人文・社会科学系で行われるように著者とジャーナルだけを記すのではなく、論文のタイトルもご紹介下さい。少なくとも医師であれば、タイトルだけで読む必要の有無が大半わかるでしょう。(なお、今回引用された論文は、この議論を理解するために必要不可欠なものではないと考えます。)

 で、自分や多くの人が用いるような検疫という言葉の使い方の中では、「感染症まん延阻止に不可欠な疫学的知見を得ることもまた検疫の重要な役割であり、そして今般の検疫強化がその一助となった」などということはない、という理解でよろしいでしょうか。

>また、文献を引用されるのであれば、人文・社会科学系で行われるように著者とジャーナルだけを記すのではなく、論文のタイトルもご紹介下さい。少なくとも医師であれば、タイトルだけで読む必要の有無が大半わかるでしょう。

おいおい、ちょっと待ってくれ、あんた本当に医者かい?

Patrozou E, Mermel LA: Public Health Rep. 2009;124:193-6.
Moser MR et al: Am J Epidemiol. 1979;110:1-6.
Mubareka S et al: J Infect Dis. 2009;199:858-65.

私はこれで十分引用元はわかると思うが

議論が、本題からずれそうなので、元に戻しましょう。
改めて、記事を読み直してみましたが、参考人の意見は立場の違いこそあれ、検疫の意義と限界についてきちんと述べている印象を受けましたし、尾身、岡部両氏もいつも話していることと変わりはないように思いました。

いずれにせよ、「感染症の蔓延を防止し、国民の健康を守る」ということは普遍のテーマだと思うので、政争の具にすべきではないということを如実に感じました。

こちらの方に川口さん議事録があがっていたのですね。見落としていました。

力作とは思いますが、たまたま、自分の起こしていた部分と川口さんの記載との間で、意味合いが変わっていると思える部分があったので、比較してみました。木村参考人の発言の部分です。

(実際の発言)
感染症法になってしまえば、国の方は通知を出して、地方自治体やりなさいと、言うだけで終わってしまうという危険性があります。そういう国内の整備に非常に危機感を感じていた声が届いていたのか届いていないのかは分からないのですけれども、感染症法という国内お任せを、ある意味想定外とした厚労省の考え方があったのではないかと、断定はできませんが、思っております。

(川口さんの記載)
感染症法になってしまえば、国は通知を出して地方自治体やりなさいだけで終わってしまう危険性がある。感染症法で国内は他人にお任せとした厚労省の考え方があったのでないかと思っている。

ここ、木村氏の答弁内容が変えられていませんか?

確かにこの部分、木村氏の言いたいことはよく分からず、解釈するには彼女がよそで言っていたことも踏まえなければならないところであり、それを考えれば「感染症法による対応で失敗しても、自治体の責任にできるから・・・」という意味だったという理解も妥当だとは思います。実は私も、別のコメント欄では悩みつつも同様にまとめました。

ただ、言っていることのみを改めて虚心坦懐に読めば「国は国内整備に不安を抱いていたため、国内での対応は想定せず、水際で決着をつけようとしていた」と言っているようにも思える部分です。何分これまでの発言とはニュアンスが変わっているので、迷う部分ではあるものの。

冗長さを避けるために発言を要約することが必要な場合もありますし、もしそうするならば、何らかの解釈を経ることは避けられません。もしかしたら、そこで発言の趣旨を誤解してしまうかもしれません。

でも、発言をそのまま起こしたかのような形式をとるなら、事実を正確に記載しないとダメなのでは?TBSが石原知事の発言を改変したとして問題になった事もありましたので、念のため。

中村さま

# 家人はぐっすり眠っているようなので(^^;これ幸いと。
# あ、ISPが変わっていますが同一人物です>川口さま

>あなたやそのご近所の皆さんは「検疫」あるいは「検疫の強化」という言葉に
>サーベイランスを含ませているようですが、それは国会の場ではもちろん、
>昨今の医学部卒業生の間でも一般的な使い方ではありません。

「ご近所の皆さん」がどなたを指すものか皆目見当が付きませんが、それはともかく、「一般的な(用語の)使い方ではない」とのご指摘はそのとおりと思います。

私の意図をより正確に伝えるならば、用語の用法というよりは、(詳細を理解しているわけではないのでアレなのですが)検疫業務というものをtargeted surveillanceのひとつとして理解することができないだろうかという、私から彼/彼女らへの提案と捉えていただけると幸いです。


>互いに対する批判

私は先生の意見を批判してはいませんが、ともあれ、これ以上のセッションが私にとってあまり生産的でなさそうだということは理解できます。


Anonymousさま

>引用元はわかる

いや、そうではなくて、タイトルまで明記されていれば、いちいちPubMedなどで検索せずとも済むだろう…と。

確かに、臨床の先生方の多忙は十分理解できます(個人的には、インフルエンザ関連はせめてabstract、できれば原文レベルで読んでほしいとつい思ってしまいますし、文字数削減の意図もあったのですけどね)。また、医師以外の方への配慮が足らないとの指摘も納得できます(私自身、SARSのときにも苦労しましたし)。

失礼いたしました>ご不快に感じられた方々

…さて、いささか長居し過ぎました。古狐はこの辺で退散いたしたく。

 簡単な質問にもお答えいただけないのですね。

>簡単な質問にもお答えいただけないのですね。

I share your frustration on Mr. Kawaguchi\\\'s reply.
ってとこかな私も

>…実は公衆衛生実務に従事する医師・獣医師・薬剤師もまた“立ち去り”が珍しくない絶滅危惧種でして…。予算措置で何とかなるとは思われ難い部分が結構あるやに聞きますゆえ、この点は健康局長さんにちょっと同情。

前段については医系技官も同じく絶滅危惧種に指定しても良いかも知れない。知りもせずにこんなブログでまで叩かれたり、モリヨンがそのお仲間として紹介されたりすると、特にそう思う。

後段については、このポストが大変だなと同情する気持ちは同意。現在の人物が適任かどうかは別。

横レスですみません

組織の中でインフルエンザ対策を策定する立場からいえば、感染症対策では過剰防衛に走らざるを得ません。検疫に意味がないと言われようと入院患者にはうつしたくないですし、職員にもうつしたくないので、来院制限を行いたいし、お金を湯水のように使って安全対策を取りたいと思います。

問題はそのあとでしょう。これ以上はできないという線を作ってから、自宅待機で出勤できる職員がいなくなってしまう、経済的に破たんするとして非現実的な部分を改善する必要があるのに、やらなかったことが問題だと思います。

さっき書き忘れたが、モリヨンが言ってるこれってホントかい?

http://www.kimuramoriyo.com/25-swine_influenza/
「国会議員から出席を求められた場合それに対して応じるのが国家公務員の職務です。ところが、こともあろうに厚労省健康局長はこの案件を握りつぶしたのです。」

役所が予算委員長に働きかけてやめさせたのか、本人に連絡するのを渋ったのか、或いは連絡しても本人がつかまらなかったのか(いや待てよ、国会に出席を求めるなら、連絡は厚労省からじゃなくて参議院事務局からか)?

いずれにせよどんな事実があったのかこれだけではよくわからんが、仮に役所側が出席を妨害したのならそれはそれで問題だし、そうでないならモリヨンは立派な名誉毀損じゃないのか。

 検疫所なんてほとんど見向きもされていなかったのがSARSの騒ぎまで。そのあとになっていろいろと点滴セットや医療機材が購入されました。
 まったく本省からは盲腸扱いでした。まして、今回の検疫のさわぎで、現場は大きく疲弊しました。
「T病院の看護師長が交代で、成田に応援に借り出されています。ブルーのガウンは、飛行機ごとに交換せずに、1日中着っぱなしだったそうです。マスクの使い方や、手袋の扱いを見て、みんな目が点状態だったようです。」
 こういう現場だそうですが。まぁ、きっと手柄があればいいのでしょうね。

私も大学の教員やってるんで、検疫=隔離と停留といった国家試験レベルの知識で物事を捉えられては困りますし、本題と関係ない話題で炎上するのにも困ったもんだと思います。
ここで、もう一度検疫の基本についておさらいをしてみようと思います。
検疫とは、国内に常在しない感染症が船舶や航空機を介して侵入することを防ぐという目的があり、その業務は大別すると予防検疫、船舶(航空機)検疫、港湾(空港)衛生に分けられます。

予防検疫は、文字通り予防的な対応で、正しい知識の普及・啓発(わが国ではForthという仕組みがあります)、黄熱などの予防接種の実施などが該当します。
船舶(航空機)検疫は、外国(これは領土区分としての外国だけではなく、感染症蔓延という意味での他地域を含みます。事実第二次大戦前の日本では樺太・朝鮮・台湾などからの船舶も検疫対象となっていました。)から来航した船舶・航空機に検疫感染症に罹った(又はその虞のある)患者がいないか確認することです。その結果、患者がいれば隔離(Isolation)し、感染の虞のある者は停留(Quarantine)したり、健康監視を行ったりします。船舶(航空機)検疫は、わが国では、検疫港・検疫飛行場については検疫所が、それ以外の場所については保健所が行うこととされています。
港湾(空港)衛生は、主として検疫感染症を媒介する動物の対策を行うもので、生息状況の調査、発生・増殖防止のための清掃等の措置などがあります。
(続く)


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