タミフルを使う使わないの分かれ道。 |
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投稿者: | 投稿日時: 2009年06月04日 09:26 |
昨日、インフルエンザ治療薬「タミフル」について、厚生労働省・安全対策調査会の作業部会が「服用と異常行動との因果関係を示唆する調査結果は得られず」「結論は出せないだろう」としていることが報道されました。
タミフル異常行動「関連ないとはいえない」 厚労省研究班
6月3日 産経新聞
<タミフル>異常行動との因果関係不明 厚労省研究班
6月3日 毎日新聞
今から数年前、タミフルを服用した10代のインフルエンザ患者がベランダから飛び降りて転落死するなどの事故が相次ぎました。これを重く見た厚労省は2007年3月、厚労省は10代患者への処方を原則中止とする通知を出しました。今回は、この方針を変更するに足る根拠は得られなかったとして、そうした措置は継続されるようです。
さて、この記事を読んでいて私が同時に思い出したのは、妊婦へのタミフル使用についてです。もともと季節性インフルエンザに関しては、タミフルは胎児への影響が不明だとして妊婦への投与は慎重を期すことになっており、またタミフルを飲んでいる人は授乳もしないように、ということだったと記憶しています。
しかし先日、CDCは妊婦へのタミフル投与を推奨する報告を出しています。新型インフルエンザ患者との接触があった場合には、予防的に投与することさえ勧めているのです。その後、日本産婦人科医会も、「妊婦・授乳婦の新型インフルエンザに対するタミフルとリレンザの使用について」という文書を発表。基本的にはCDCの方針を踏襲しているようです。
というわけで、10代患者へのタミフル投与は原則中止、一方、妊婦への投与は推奨。いずれもその影響ははっきりとは分からないところ、最終的な方針は正反対です(しかも前者については、10代でも治療や予防にタミフルを使用できるものとする見解もあった中での結論)。
そしていずれにしても、“原則”や“推奨”であって、絶対ではありません。すなわち、判断は現場に任されます。しかし、いずれもタミフルとそれによる影響についての詳細がいまだ“不明”であるため、その判断はいわば“賭け”の要素が大きくならざるを得ません。そのリスクを負うのは結局は患者=国民です。そしてその責めを負うことになるのは誰なのか・・・。そう考えると、誰にとっても、いつまでも「因果関係が不明」という状態を放置しているわけにはいかないはずです。
確かにデータを集めるのは困難かもしれません。でも、とにかく不安なままクスリを使用したり、使っても平気なのに使わずに苦しい思いをしたりするのは、やっぱり避けたい。それが国民が単純に思う、正直なところです。
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コメント
堀米さま
タミフルをどう使うかという点について、まず添付文書をみてみました。
http://www.geocities.jp/o1180/html/tamiflu/tami.htm
10代の患者については、「警告」欄に赤字で、
2. 10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
との記載があり、この薬を使わざるを得ないハイリスク者についての医師の裁量の余地が残されています。
一方、妊産婦については、「使用上の注意」欄に「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」として、
1. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット)で胎盤通過性が報告されている。]
と記載されています。
>そのリスクを負うのは結局は患者=国民です
確かにそれはそうなのですが、薬というものは常にリスクとベネフィットとのバランスの上に使われるものですので、ベネフィットの方が上回る場合に使うということを肝に銘じていきたいものです。