新型インフルの陰で。

投稿者: | 投稿日時: 2009年06月12日 17:50

「シャーガス病」という病気をご存知でしょうか。恥ずかしながら、私はこの数日に初めてその名前を知りました。昆虫が媒介する寄生虫病で、中南米の貧困層の間に蔓延し、年間5万人もの死者が出ているそうです。感染後数十年経過してから死に至るケースもあり、感染者数は1800万人とも言われるとのこと。

中南米の貧困層を襲うシャーガス病、死者は年間5万人 CNN.co.jp (2009年6月11日)


私に限らず、日本人の間にはあまり知られていないように思いますが、輸血を介して私たちに感染する恐れもあるといいます。さらに今回、新型インフルエンザの世界的感染拡大のなかで、こうした「貧しい人の」感染症への対策が影響を受けているというのです。

そうしたことについて私が知ったのは、以下の記事からでした。

新型インフルの陰に隠れ・・・
シャーガス病対策先送り
東京新聞 (2009年6月10日)


今日未明、WHOは新型インフルエンザの警戒水準について、パンデミック(世界的大流行)を意味する最高レベル「フェーズ6」への引き上げを宣言しましたが、そうした新型インフルエンザ対策のため、発展途上国で多くの人々を苦しめている病気への対策が後回しにされた形です。


そもそも、記事中でWHO総会のボリビア政府代表も触れているように、製薬企業が自ら「貧しい人の病気」について積極的に新薬開発に乗り出すことは、ちょっと考えられません。彼らにしてみれば、貧しい人たちの薬を作ったところで先進国で上げているほどの収益が見込めず、割に合わないと考えるのでしょう。


これについては、「貧しい人の病気」に限らず、日本でもある疾患の患者数が少なすぎたりすれば、たとえ新薬ができても商品化への道のりは険しいのではないかと想像します。製薬企業の損得勘定で病気の治る・治らないが決まる、残念ながらそれが現実ということでしょうか。


また、上の記事からちょっと頭をよぎったのは、WHOのモノの見方は、やっぱりどこか先進国のそれなのかな、ということです。要は、WHOの見ている世界とは何か、世界の中心はどこなのか、ということ。もちろん新型インフルエンザの感染が“全”世界規模であり、拡大中であることを考えれば、確かに今回のWHOの措置は妥当なのかもしれません。しかし、強毒性でもなく、今日の段階で感染者3万人弱、死者150人弱の新型インフルエンザと、推定1800万人が感染し5万人が毎年亡くなっているシャーガス病、現時点での影響は、数字だけを見れば後者のほうが大きいのは明らかです。もしシャーガス病が先進国を中心に同じ規模で蔓延していたら、WHOはどう出るのか。すごく気になります。


さらに、冒頭でも触れたように、この病気は私たちにも献血⇒輸血を介して感染の恐れがあるといいます。媒介する昆虫こそいませんが、すでに昨年の厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会では、厚労省側から「我が国でも中南米からの出稼ぎ労働者の多い都道府県では、シャーガス病の保因者がいるということが予想される」という報告も出ています。


日本赤十字社でもホームページ上で「シャーガス病流行地に居住したことがある方については、感染歴を確認し既往がある場合は、献血をご遠慮いただいています」と呼びかけてはいますが、感染から発症までに数年かかるのであれば、既往があるかどうかだけでは判断しきれないのではないでしょうか。


こうした輸血によるウイルス感染等を防ぐには、細菌やウイルスを殺してしまう(狂牛病のもとになるタンパク「プリオン」は無理らしいですが)「不活化」という工程を経ればよいそうです。世界各国で次々導入されているにもかかわらず、日本ではその「安全性が確かめられていない」という理由から、導入の目処は全く立っていないのだとか。そうしている間にも、私たちは、輸血によって新型インフルエンザやシャーガス病など多くの感染症にかかる危険にさらされているということのようです。

田中康夫氏
輸血血液でのHIVウイルス等の感染を防ぐ不活化と呼ばれる予防措置の導入を提言
(動画:youtube)


というわけで、「シャーガス病」という現状ではあまり名の知られていないこの病気は、私たちに新薬開発における製薬会社の思惑、WHOの見ている“世界”、そして日本における輸血製剤の不活化という問題を提示しているのですね。


(追記)

新型インフルエンザについて、WHOは今後、世界で約20億人が感染する恐れもあると見ているようですね。

20億人感染の恐れも 新型インフル 途上国の被害懸念
東京新聞 2009年6月12日

20億人って、簡単に書きますがものすごい数字です・・・。事務局長の「貧しい国、弱い人たちの被害が深刻になる」という指摘はもっともだと思います。この報道を受けて、やはり新型インフルエンザが最優先となるのも現時点においては致し方ないのかなという気がしました。もちろんシャーガス病等、患者・死者数が看過できないほどに多い「貧しい人の病気」への対策も継続されていってほしいところではありますね。

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コメント

私も「シャーガス病」という病気は初めて知りました。この病気の予防にもつながる輸血血液の「不活化」に関して、大変興味があります。現段階でも輸血血液の安全性に対して改善はなされてきているようですが、その検査がまだ不完全であるため、危険な血液が使用され、実際に肝炎を発症した事例があるようですね。おそらく「不活化」も万能ではないにしても、少しでも輸血血液の安全性が高まるのであれば、その技術の積極的な導入にむけて動き始めてもらいたいと願うばかりです。

 輸血感染症は重大な問題ですね。全くご指摘の通りです。
 温暖化が進み、日本にも様々な病気が入ってくるでしょうからね。

 不活化の検討は一刻も早く開始すべきでしょうね。EUやアジアがやっていて、日本だけやらないのは、やはりおかしいですね。

先進国で唯一 HB ワクチン接種は義務化せず。
必ずすり抜けが起きる NAT で満足。

不活化技術は「安全性」が確認できないとのことだが、ウイルスまみれの輸血の方がもっと危険だろ?

この国の自称「輸血専門家」と日赤はアホですね。
また薬害B型肝炎・エイズ訴訟が起きることは必定ですな。

今度は誰が逮捕されるのかな?

>「不活化」という工程を経ればよいそうです。世界各国で次々導入
>されているにもかかわらず、日本ではその「安全性が確かめられていない」と
>いう理由から、導入の目処は全く立っていないのだとか

不活化された血液により、死亡事故が出たら厚労省が批判されることは間違いないし、逮捕されるのも必至ですね。イレッサですら被害者から訴訟を起こされているくらいですからねえ。

不活化でいかなる副作用が出ようとも、厚労省に対する責任は問わないなど、免責を検討するべきかも知れません。

しまさま
>不活化でいかなる副作用が出ようとも、厚労省に対する責任は問わない

個人で責任取れる問題じゃないから個人じゃなく国(=厚労省)が責任を持つべきだという話でしょうに、いったいなにをおっしゃってるんだか。ほんとに、お話になりませんね。

>個人じゃなく国(=厚労省)が責任を持つべきだという話でしょうに、
>いったいなにをおっしゃってるんだか

普通の人であれば、無過失補償制度を充実させる事を主張すると思うのですが、
副作用を国の責任にすると言う珍妙な説を唱える人もいるんですね。
驚きました。

しまさん
>副作用を国の責任にする

責任にする?いったいなんの妄想ですか?それにあなたの文章は相変わらず主語不明です。

副作用で生じた健康被害については国が責任を持って補償するという話ですよ。
「責任」という言葉に対してくだらない意味のすり替えを行うだけでなく、副作用とは全然無関係の「無過失補償制度」まで引き合いに出して。

ほとほと呆れかえりました。

>「責任」という言葉に対してくだらない意味のすり替えを行うだけでなく

なるほど、私は過失責任という意味で使っておりました。

意味を取り違えたのは前々期高齢者さんですが、私も不適切な文章を書いた責任がありますね。お詫びいたします。

あと、この文章は主語が不明です。私に説教されるのは構いませんが、前々期高齢者さんもきちんと主語を書かないといけないと思います。

>副作用とは全然無関係の「無過失補償制度」まで引き合いに出して。

前々期高齢者さんは、過失責任が判明してから被害者に対する補償を行えば良いというお考えかも知れませんが、私はそうは思いません。薬害被害者には一刻も早い救済が必要なので、過失責任を問わずに被害者を救済する制度が必要だと思います。

>(6)無過失補償制度の設置
>輸血および血液製剤の使用によって生じた被害についても責任の有無に
>関わらず医薬品機構の被害者救済制度の適用など、迅速に被害者の救済を
>行う制度を策定されたい。
http://www.t3.rim.or.jp/~aids/minister1998.html

こんな短い文章なのに相変わらず論旨不明ですね。

>過失責任を問わずに被害者を救済する制度が必要だ

誰のどういう過失の過失責任なのか不明。そして誰が被害者を救済するのかも不明。

もうこれ以上私も主語がない文章の不毛な論旨に取り合うつもりはありませんから私宛にはお返事不要です。

>誰のどういう過失の過失責任なのか不明。

それはですね、前々期高齢者さんが、話の流れをきちんと追っていないことにあると思うのですね。

厚生労働省の、「薬害を引き起こした」という過失の過失責任ですよ。


>そして誰が被害者を救済するのかも不明。

「誰が」という事は書いていないのだから、不明なのは当たり前ですよね。私が主張したかったのは、薬の副作用に対し「無過失補償制度」を導入するべきだという事なので、「過失責任を問わずに被害者を救済する制度」の導入が必要だと書きました。


ところで、
>副作用とは全然無関係の「無過失補償制度」まで引き合いに出して。

この論拠をお示しになっていないようですが、ご自身の都合の悪い点は無視されると言うことなのでしょうか。

最近のここのブログは、読むに耐える内容ではなくなってきたと感じています。
医師や高齢者と名乗る方もいますが、現在ここに固定している数人のコテハンの方々ははっきり言って非常に空気の読めない、見当はずれで的外れのコメントばかりです。読んでいて辟易しています。
他人の意見など聞こうともせず、自分たちの理屈ばかりを押し付け、つまらない議論の揚げ足取りばかり。
しかも、こんなブログのコメント欄に必死になっていることをみてもその度量や器量の狭さに、あきれ果てるばかりです。
おそらく多くの読者は彼らのコメントを見て同じことを感じていると思います。
なぜこんなに医師や高齢者と名乗る人たちがここのブログに固執するのかもよくわかりませんが、せっかくの今までのロハスメディカルのイメージや良質の記事が台無しになっています。
数人のコテハンのコメントは現場の感覚からすると的外れもいいところなので分からない人がそのコメントだけ読んだら勘違いすると思いますよ。

>分からない人がそのコメントだけ読んだら勘違いする
珍妙な論理ですね。
分からない人は最初から分かってないのだから結果としてその人自身が勘違いしたかどうかは、余人であるあなたにも私にも判断できないでしょう。理解度は人それぞれであって、人は見たいものを見るものです。

不活化を政策として選択した厚労省が「不活化された血液により、死亡事故が出たら、(過失責任で)逮捕されるのが必至」などという明らかなデマ情報を書いて、国の行政責任(刑事ではなく民事責任に決まりきってるのに)に刑事免責だの無過失補償制度を検討しろと筋の通らない主張をする。こちらには珍妙だと笑って見過ごせないものがあります。

まず不活化された血液を「適切に輸血」した行為により「死亡」にまで至ったという「事故」が起きた場合の予見可能性は非常に低いでしょう。行政の過失責任は非常に小さい。したがって逮捕されるのも必至、というのは論理的におかしな結論です。
しかしながら逆に不活化しない血液の同じく「適切な」手順の輸血によりたとえばシャーガス病に感染し発病した場合は、死亡に至らないでも明らかに発病という健康被害が発生します。こちらは「不活化血液の輸血が原因の死亡事故」に比べて遥かに予見可能性が高く「事故」と認定される可能性よりも「事件」として行政の過失責任が認定される可能性のほうが高いでしょう。したがってこちらの行政の不作為過失責任のほうが「逮捕されるのも必至」に近いでしょう。

血液の不活化処理はそもそも刑事免責や無過失補償制度の導入とはなんの関係もない話です。
それを責任や過失や死亡事故等の言葉から受ける印象を悪用して、この先輸血感染症発症という「予見可能な」健康被害が生じた時問われる行政の不作為過失責任を糊塗しておこう、という典型的な詭弁の論理と思いました。

もうくだらない詭弁に付き合うひまもつもりもないので放置していましたが、少しひまができたので投稿しておくことにしました。
堀米記者にはこの記事でシャーガス病について注意喚起していただいたことをあらためてお礼申し上げます。

>国の行政責任(刑事ではなく民事責任に決まりきってるのに)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%9D%91%E6%98%8E%E4%BB%81

時の証人さま
ご指摘いただいた「国の行政責任」は、言葉足らずでした。
「不活化導入を政策決定した場合の国の行政責任」の意で書きました。

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