負荷心電図というものがある:警察とNHKは知らない |
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投稿者: 中村利仁 | 投稿日時: 2009年07月02日 15:38 |
NHKの報道です。
NHK ニュース
薬投与後に診断し検査の疑い
7月2日 12時27分
http://www3.nhk.or.jp/news/k10014004491000.html
(リンクはすぐに切れるだろうと思います。)
「…患者に対し心拍数をあげる薬を投与したりルームランナーのような装置の上を走らせたりしたうえで、心電図をとって狭心症や不整脈などと診断し患者から検査の同意を取り付けていたということです。…」
この検査を負荷心電図と言い、日常、多くの医療機関で普通に行われています。不正でも何でもありません。
こんなことは医師免許を持っていれば専門外であっても当然に知っておくべき知識で、現場経験の有無の問題どころか、医学部の学生でも知っている程度のレベルの低い誤解です。
ところが、この報道に関係した警察官とNHK記者は知らないだけでなく、医者に聞いてみるという当然の手続きを端折っているようです。
今日、このニュースを視聴した患者さん達は、明日から医者や医療機関に深刻な疑念を抱きながら負荷心電図の検査を受けることになるでしょう。
【追記有り】
NHKは「警察発表を報道しただけ」と主張することでしょうが、事実関係を確認するというジャーナリストとしての義務を放棄していると考えます。
また、警察の鑑定人として捜査に協力している医師は、この報道発表を知らないか、知っていてもそのまま報道させたということになります。前者であれば警察官の怠慢であり、後者であればその医師の知識水準と善意に深い疑念を抱かずにいられない事態です。
(以下、記事全文を転載しておきます。)
NHK ニュース
薬投与後に診断し検査の疑い
7月2日 12時27分
奈良県大和郡山市の病院をめぐる診療報酬の不正受給事件で、逮捕された病院の理事長は、患者に心拍数を上げる薬を投与するなどしたうえで、狭心症や不整脈と診断し、診療報酬が高額な心臓の検査に同意させていた疑いのあることが病院関係者への取材でわかりました。
この事件は、奈良県大和郡山市にある雄山会山本病院の理事長、山本文夫容疑者(51)ら2人が患者に手術をしたように装い、診療報酬およそ170万円をだまし取ったとして詐欺の疑いで逮捕されたものです。これまでの調べで、山本理事長は、入院患者に対して症状に関係なく診療報酬が高額な心臓の異常を調べるカテーテル検査を行っていたことがわかっています。病院関係者によりますと、山本理事長は、患者に対し心拍数をあげる薬を投与したりルームランナーのような装置の上を走らせたりしたうえで、心電図をとって狭心症や不整脈などと診断し患者から検査の同意を取り付けていたということです。警察もこうした内容を把握していて、山本理事長が、診療報酬目的に必要のない検査を患者に繰り返していたとみて調べています。
【追記】
以下は朝日新聞の記事ですが、この書き方なら、患者さんに不要な不信感を抱かせることはないだろうと思います。
asahi.com 関西
入院、即「不整脈」 検査に同意誘導か 奈良・山本病院
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200907020020.html
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コメント
負荷心電図という正当な検査を、
『患者に対し心拍数をあげる薬を投与』という
犯罪行為と同列に並べるのは許せませんね。
ご紹介有難うございます。
この医学的に不正確な予断に満ちた思い込み記事を見ると、福島大野病院医療事故で産科医を起訴した検察の思い込みコメントが一斉報道された時のことが思い出されました。
『患者に対し心拍数をあげる薬を投与』というのは、ドブタミン負荷心電図など薬物負荷心電図のことではないでしょうか。
この病院のことはどうであるかは分かりませんが、負荷心電図に関して言えば極めて不適切な誤った報道です。