室内はトイレより細菌が多い?! きれいにしたいとき。 |
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投稿者: | 投稿日時: 2009年07月02日 18:28 |
前回、抗菌や防カビについて確認したのですが、では実際、自分たちで家の中の気になる場所・物を除菌、消毒あるいはできるだけ清潔に保つのに効果的な方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
ちなみに、エアコン、押入れ・クローゼット、浴室、台所等にいて、“湿気を上手に逃がしてカビを防ぐ方法”については、先日「カビはほんとに侮れない。」の中でご紹介しました。今回は、細菌やウイルスにより焦点をあてて、普段見落とされがちな意外な場所や、具体的な対策を見ていきたいと思います。
まず、私たちの身の回りにいて、なおかつ食中毒などの原因となる細菌等については、以前のエントリー「謎の食中毒が増えてるそうです。」でも解説が載っているサイトをいくつか挙げました。それぞれ感染経路や気をつけるポイントが異なるので、一応確認しておいていただければと思います。
さて、そうした細菌が、実際、普通に暮らしている身の回りにどれくらいいるのでしょうか(もちろん全てが病原性とは限りませんが)。興味深いサイトやニュース記事とそのポイントをご紹介します。
●東京都衛生局 洗浄・殺菌に関する実験結果
○家庭の台所での細菌検出数は、多いほうから、食器用スポンジ、台ふきん、シンク、まな板、冷蔵庫の野菜室の底、の順。
○スポンジ、冷蔵庫の野菜室、シンクからは黄色ブドウ球菌も検出。
●水まわりの汚れ-浴室と居間にはどれくらいカビと細菌がいるの?- (TOTO)
○ 空気中を浮遊している細菌やカビは、浴室と居間で同じくらい検出された。
○ 壁や床に付着している細菌やカビは、浴室と居間で同じくらい検出された(見た目にカビが生えていない部分で比較)。
●病は口から!?実はトイレよりも汚い台所、消毒の徹底呼びかけ―英国 (Record China)
○台所の蛇口は、調査対象全体の3分の1から基準値を上回る細菌数が検出。
○14%の台所の蛇口から大腸菌が、さらに8%の蛇口からは肺炎を引き起こす危険性のある黄色ブドウ球菌が検出された。
○水洗トイレのレバーでは、基準値を超えたのは15%のみ。大腸菌が検出されたのも、台所の蛇口の半数以下(わずか6%)。
○台所のモップ、まな板、生ゴミ粉砕機、調味料入れ、石鹸入れ、布きん、そしてテレビのリモコン、電話機等も有害な微生物の温床に。
○家のなかで最も清潔な場所はトイレのドアノブと判明(75%が「基準値以下で安全」との評価)。
●携帯電話はトイレの便座よりも汚い!ボタン部分は細菌だらけ―中国紙 (Record China)
○携帯電話、とくにボタンには、ドアノブや靴、さらにはトイレの便座よりも多くの細菌が検出された。
○黄色ブドウ球菌もかなりの高頻度で検出されている。
●最も汚いのはひげ剃り!便座は意外ときれい?―台湾 (Record China)
○人が日常的に接触する10品目、トイレの便座、パウダーパフ、ひげ剃り、タオル、歯ブラシ、マスク、電話の受話器、枕カバー、ヘルメット、パソコンのキーボードに付着している細菌数を測定。
○最も多くの細菌が検出されたのは、男性のひげ剃り。
○最も少なかったのはトイレの便座だった。
○歯ブラシも、歯を磨くたびに便座に付着している2.5倍の細菌を飲み込んでいることになるとのこと。
さて、ではそうした場所・物を消毒したり、できるだけ清潔に保つ方法を確認していきたいと思います。
【こんな方法あんな方法】
●煮沸消毒
5分間煮沸(100℃をキープ)を行えば、通常、日常生活での感染のキケンのあるものはすべて死滅させられます!O-157や黄色ブドウ球菌は、最低80℃の熱湯で5秒間。B型肝炎ウィルスは100℃の熱湯で2分間、結核菌も100℃で5分間煮沸すれば大丈夫。家庭でのより完璧なやり方としては、深めのナベに食器を入れ、食器が全部ひたるように水を入れ(ガラス製品など、こわれやすい食器はふきん等きれいな布でくるんで入れます)、蓋をして15分煮れば安心です。ただ、高温で変形するようなプラスチック製品は避け、薬液消毒(後述)にします。煮沸消毒にかえて、蒸し器を利用しても同じような効果が得られます。その場合、十分蒸気がまわるよう、10分以上、蒸すようにします。また哺乳瓶などを電子レンジで簡単に消毒できるグッズなども販売されています(自己流でやると加熱ムラが生じますので、お勧めできません)。
※煮沸ができなければ、熱湯をかけることでもある程度効果が期待できます。また、布類は、アイロンの熱も利用できます。
●漂白剤
とくに、塩素系のもの(次亜塩素酸ナトリウム)は、哺乳瓶、食器、非金属器具や色柄でない布製品の殺菌消毒用に用います。水道水やプール水の消毒でもおなじみです。通常、市販されている家庭用塩素系漂白剤を希釈し、漬けおきしたり、拭き掃除に使います。ノロウイルスやB型肝炎ウイルスの消毒にはアルコールでなく、塩素系漂白剤が有効とされています。ただ、金属を腐食させたり、酸性の薬品・洗剤等と混ぜると塩素ガスを発生させる(「まぜるなキケン!」ですね)ので、取り扱いには注意が必要。
●アルコール(消毒用エタノール)
手指、皮膚の殺菌消毒や、冷蔵庫、まな板などの台所用品の拭き掃除など、広く用いることができます。細菌のほか、インフルエンザウイルス、エイズウイルス、C型肝炎ウイルスに有効。お酒の主成分と同じなので口に入っても安全。食品の日持ちの向上や防カビの効果もあります。金属やガラス製品の消毒には、まず水と石けんでよく洗ってから、アルコール液に3分くらいひたすのが効果的。スプレーや繊維にしみ込ませたものも市販されていますが、流水で洗わずにそれだけで手や器具を拭いても、効果は不充分です。
消毒、殺菌には濃度80%が一番適しているので、単にエタノールと書かれたものでなく「消毒用エタノール」と明記されたものを購入し、乾いた表面に使用することが大事。また、プラスチック、ゴムなどは劣化させる作用があるので、使用は避けます。
●逆性せっけん(塩化ベンザルコニウム)
洗浄力もあり、手指や皮膚の殺菌消毒にも用いられます(通常の石鹸とは反対の電荷を持つので逆性石けんと言われていて、石鹸と混ぜると効力を失います)。腐食布に希釈した薬液がしみこませたものも市販されています。プラスチックの食器や、塗りものの器、おもちゃや革製品も、洗面器8分目の水に小さじ1杯の割合の逆性石けん溶液に30分以上浸し、その後水洗いをしてもよいでしょう。
※微生物の種類により、効く消毒剤は違います。消毒剤を選ぶ時には当然、その微生物に効くものを選ぶことになりますが、一般に塩素系漂白剤はアルコール等よりも広範に効きます。ただ、アルカリ性で脱色作用ほか人体への影響も懸念されますので、取り扱いには注意が必要です。その他、消毒薬としてはクレゾールも一般的ですが、臭いも強く、中毒症状も懸念されて扱いも簡単ではないため、家庭用としてはお勧めではありません。
●日光消毒
日光に含まれる紫外線には殺菌効果があります。日光消毒のとくに効果的なのは、乾燥した晴天の日に、午前10時頃~午後3時頃までの最も日光の強い時間帯を選び、3時間程度干すこと。太陽光線と直角になるように干すとより効率がアップします。ときどき裏返しをして、表裏まんべんなく日光に当てるようにします。布団など長時間干しすぎると脱色・日焼けの心配もありますが・・・。まな板など、台所用品は口に入るものを扱うことも考えると、
薬品に頼りすぎず、熱湯や日光といったものをうまく活用するのがいいようです。
※消毒のあと、物等の扱いや保管の状態も重要です。とくに重要なのが、乾燥。
【参考サイト】
○救急小冊子 家庭でできる感染対策-食中毒Q&A- (広島医師会)
煮沸の仕方や、消毒薬の希釈の解説なども載っていておすすめです。
○家庭でできる消毒 (医薬品管理センター)
薬品を中心に、消毒の方法が紹介されています。
○日光消毒が最高! コムパルソリイ・サイエンスNo.7
日光消毒に関する論文をベースにした奈良教育大教授のコラムです。
ここまでのことを総合して考えると、例えば・・・
○室内、ベッドなどの家具、畳、ドアの取手、台所、冷蔵庫、トイレ各所は、消毒用アルコールや家庭用漂白剤を水で薄めた液でしぼったぞうきんでふく(ゴム手袋を使用のこと)。漂白剤は脱色が気になるもの等は避けるべきだが、アルコールよりも効果が期待できる。
○便器は専用洗剤と流水で、ブラシを使ってよく洗い、熱湯をかける 。
○ふきんや食器、調理器具などは、可能な限り煮沸するのが一番よい。薬液で消毒する場合は、台所用漂白剤にひたしておきその後、石けんでよく洗って、日光に当ててかわかす。
○まな板など、お鍋等に入らないものは、熱湯をかけることも有効。
○また衣類等の布製品は、漂白剤等の薬液につけてから洗濯し、その後に日光に直接当ててかわかすか、アイロンを当て、熱によりかわかし消毒する 。
何よりも重要なのは、まずはこまめに掃除(水洗いできるものは、しっかり洗い流す)をして、目に見える汚れ等を毎回きちんととりのぞくこと。それでも特に気になる箇所について、熱湯や薬品で折に触れ消毒を行うことです。特に、ご紹介した記事にもあるよう、細菌が繁殖しているのは水周りや洗える布製品ばかりではありません。食事をするテーブルはもちろん、机の上でおやつを食べることもあるでしょう。食べこぼしは雑菌の繁殖のもとです。また、外から帰ってきたときやトイレに行った後もそうですが、調理やおやつなどで直接食品に触れた手をきちんと洗わずに、いろいろな場所・物を触るのも、雑菌の増える落とし穴になります。当然ですが、生ものや卵を扱った場合には、念入りに手洗いが必要ですし、蛇口もあとからアルコール等で消毒するのが望ましいようです。
また逆に、場所・物を清潔にすることばかり考えていてもきりはないので、食事の前には必ず手を洗う、熱いものは熱いうちに食べ、冷たいものは冷えているうちに食べる、といった以前からお話している基本的なことが、病気から身を守ることにつながりますね。繰り返しになりますが、細菌等の雑菌について、普通の健康体の人はそれほど神経質になることはありません。それでもご紹介したように、要所要所、気をつけるべきポイントはあります。何より、ちょこちょここまめに掃除をしたり、しっかり消毒をして適度に清潔を保つことは、気分的にもとてもいいものです。じめじめしたこの時期、そうした心がけでよりスッキリ乗り切れそうですよね!
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コメント
堀米様
細菌が存在することと、それによって疾病が起こることは全く異なります。
ほんの少しの菌で発病する菌も、殺菌後にも発症する菌(毒素型の菌)もいますが、多くは相当数の菌を摂取しないと発症しません。
人間が生活する環境から菌を消し去ることなど到底不可能です。菌を恐れて消毒薬を使いまくることは単に使用している人の健康への影響があるだけではなく、環境にも大きな負荷を与えます。
どうしても必要な場合だけ薬剤を使うようにして、普段は通常の「機械的洗浄」で十分です。局所のことしか考えられない似非「専門家」の言う事をうのみにしてはなりません。堀米様が書かれた「傷」の話との矛盾を感じないとしたら、この分野の記事を書くのはおやめください。
なお、煮沸5分では、十分に滅菌できない場合があります。ほう芽には不十分です。また煮沸する対象物によっても不十分です。エタノールはその蒸発のしやすさから開封と同時にアルコール濃度が下がります。アルコール綿をシャーレなどに入れておくと半日立つと殺菌力を全く期待できません。アルコールが殺菌するのはアルコールが蒸発するときであり、アルコール中に浸していても殺菌力は期待できません。
ふじたん様
>堀米様が書かれた「傷」の話との矛盾を感じないとしたら、この分野の記事を書くのはおやめください。
おや、私も矛盾を感じないで読めましたよ。
なんとなれば、傷の話では自分の身体になるべく消毒薬を用いずに自分の身体に備わっている自己修復力を生かす話でした。こちらは自分の身体にではなく外部環境に対して身近な消毒薬を使って、いわゆる不潔な環境を上手に身の回りから遠ざけていきましょうという話です。生活に医学を役立てる知恵をわかりやすく紹介してくれているなと思いましたし、連載を止める必要は全然感じませんでした。
また傷の話のほうで有害事象についてご指摘の点ですが、消毒不要というのはあそこでは主にこどもや若い人たちの軽傷についての広い話であって、その年代の未診断糖尿病罹患者がたまたま軽傷に対して湿潤療法をしたために有害作用が発現したとしても、急速に死亡に至る可能性のある劇症の有害作用は糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡くらいでありましょう。
そしてこれらはもともと傷の治療法の如何に関わらず発症し救急外来で内科的に診断される内科的救急疾患なのです。本来稀でなおかつ湿潤療法被療者でなくても発症する内科的救急疾患の存在を理由に、外科治療における無消毒湿潤療法そのもの(或はその紹介記事)を全否定することは、広い意味での外傷治療全体にかかる医療コストの観点も加えた湿潤療法のリスクベネフィットの評価を誤ることになるでしょう。
以前のむくみでの重要なご指摘に比べて今回の記事批判は論理的に的外れであると思いましたもので投稿いたしました。
前々期高齢者さま
堀米さま
褥瘡のラップ療法は、創面への消毒薬が創傷治癒に対して害をなしていると言うことだけではなく、
1.創面の清潔は厳密に考える必要が無い場合が多い
2.湿潤が創傷治癒を妨げるわけではない
3.滅菌したガーゼは創面保護とならない
4.創面への消毒薬は十分な殺菌効果を期待できない
5.創面からの滲出液は創傷治癒を促進する
と言う考え方も含んだ話しです。そして、特に1.に対しては糖尿病患者で細血管障害を起こしている方、および幾つかのコントロール困難な菌に感染している方にはラップ療法を禁忌と考えなければなりません。
本話題の中では1.に対する原則の立場から、環境の最近に対して過敏に反応しない方が良いという事です。私達の周りの環境を無菌状態に保つことなど到底不可能です。人が触る頻度が高く、掃除が困難なものは当然菌が検出される確率が高くなります。しかし例えばキーボードを毎日舐めるのでなければ、キーボードから菌が検出されることは問題ないことなのです。きれいに洗ったつもりの手からもたくさんの雑菌が検出されることは、手洗い実習を受けたことのある方なら良くご存知と思います。でもその手で寿しをつまんで食べても、普通何も起こりません。鼻をほじった後で手を洗わない人、トイレの後で手を洗わない人、食事の前に手を洗わない人、多くの人がこれらに該当すると思いますが、健康上の被害を生じることはごく稀です。
ラップ療法というのは単なる形ではなく、必要以上の清潔度を目指すことのおろかさを指摘しているエビデンスであることをご理解ください。
ふじたんさま 前々期高齢者さま
ラップ療法、湿潤療法については現在進行形で賛否両論、さまざまな意見が交わされている状況にあること、調べていくうちにわかってきましたが、あえて今回は書かせていただきました。もちろん、特定の疾患の方々には従来どおり消毒を行うことが安全な選択肢であるのかもしれません。それでも適切なやり方により劇的に効果を上げ、QOLの向上に貢献している例も少なからずあるようです。また今回、感染ハイリスクとされる病を抱える方で、湿潤療法を医師の判断・指導の下に実践され、ガーゼを当てる従来の方法では治療が長引くために時々起きていた感染を全く経験せずにこられている方から、この治療への強い支持のご意見も頂戴しました。
私は当然のことながら、感染ハイリスクの方にまで無理をしてこの療法を勧めたいとは考えておりませんし、また重傷の場合にはとにかく素人判断はやめてまず受診し、医師の指導を仰ぐことを強調したいと思います。ただ、私はもっと単純に、世の中にガーゼタイプの絆創膏が溢れ、それが当たり前である現状と、この治療法のポイントには大きなズレがあること、そしてその事実がほとんど一般に浸透していないことが、どうしても不思議でならなかったのです。もっと後者について、一般の認識が高まっても良いのではないかと思ったのです。
おそらくガーゼタイプが廃れないのは、コスト面のことも大きいのではと想像しています。それでも、それが当たり前、傷を覆う最良の手段だと信じて使い続けているのと、正しい知識に基づいて消費者として比較し判断し、選択して使用するのとは、ちょっと違うと思うのです。たかが絆創膏ですが、そんな些細なものでも、やっぱり知っておいてもいいのではと。されど絆創膏かな、と思ったのです。
細かい点について、お二方にご指摘・ご指導いただき勉強になりました。ありがとうございました。