保健機能食品の微妙なところ。

投稿者: | 投稿日時: 2009年07月15日 18:39

先日は冷感マットの広告に問題があったことに触れましたが、そこから派生して健康食品とその広告等について定めている健康増進法について興味を持ったので、今回調べてみました。


健康増進法が最初に制定されたのは平成14年のこと。もう今から7年も前になるんですね。

まず健康増進法第1条に「目的」が掲げられています。 

【この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康の増進の重要性が著しく増大していることにかんがみ、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ることを目的とする。】


この趣旨に基づき、今回気になっている健康食品等の広告についても、同法第32条の2で制限がかけられています。すなわち食品として販売に供するものに関して、健康保持増進効果等について、虚偽・誇大な表示をすることが禁止されています。

【何人も、食品として販売に供するものに関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他厚生労働省令で定める事項(以下「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。】


この条項に抵触する、いわゆる違反広告(インターネットも含む)の説明が厚労省から出されています。http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/dl/7f.pdf

●食品として販売に供する物について、医師等の診療によらなければ保健衛生上重大な結果を招くおそれのある重篤疾病の治療(予防)を目的とする、根拠が適切でない広告その他の表示 ←これは薬事法にも抵触します

●「厚生労働省許可(輸入販売も含む)」等、その健康保持増進効果について、厚生労働省等がお墨付きを与えていると誤認させる誇大表示


こうした虚偽・誇大広告を禁ずる条項が盛り込まれたのには、やはり近年の健康ブームに乗って、必ずしも科学的に実証されていない健康維持・増進効果を謳った食品が増加してきたという背景がうかがえます。実際にはそのような効果が期待できないにもかかわらず、そうした表示を信じて長期的かつ継続的にそうした食品を摂り続けた場合、たとえ毒にはならなくても、医療機関での適切な診療が後回しにされ、結局は健康をより害することも考えられます。


前々回の「医薬部外品」の話でも触れましたが、たとえ健康増進法で規制がかけられなくても、商品一般に適用される「景品表示法」でやたらなことはできないよう防御線が貼ってあります。それでも食品というものは直接私たちの口に入るものですし、まして健康効果を謳ったがゆえにかえって人々の健康を害する結果となっては大変です。そのあたりを重く見てこの条項が作らたのでしょう。たしかに怪しげな「健康食品」は次から次へと出てきますよね。


ちなみにこれに抵触する広告には厚労大臣が是正勧告・命令を行い(第32条の3)、それでも違反が続く場合は6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられることになります(第36条の2)。


さて、いっぽう、健康に関する効果について国が“お墨付き”を与えている商品もこのところとみに目立つようになりました。「特保」でおなじみの「特定保健用食品」や、「栄養機能食品」などと呼ばれるものです。他にも種類が有るようですが、とくにこの2つの広告効果は絶大らしく、テレビCMなどでもしきりに宣伝されています。ただ、両者は似て非なるものですが、正直なところ私はきちんと区別ができていません。いずれも「健康にいい」というイメージだけは強くあるのですが・・・。というわけで調べてみました。


厚労省のホームページによれば、健康食品とは、【法律上の定義は無く、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般】を指すとのこと。つまり、こうしたもの意外は「健康食品」と銘打っていても、制法律上は“ただの食品”なんですね。そしてそのうち国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たしたものを「保健機能食品」と称することを認める表示制度として、「保健機能食品制度」があるそうです。この保健機能食品が、先にも示した以下2つに分類されています。

●特定保健用食品:→特定保健用食品は身体の生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含んでいて、「お腹の調子を整える」など、特定の保健の目的が期待できることを表示できる食品。
→このような「保健の用途」を表示するには、個別に生理的機能や特定の保健機能を示す有効性や安全性等に関する科学的根拠に関する審査を受け、厚生労働大臣の許可を受けることが必要(健康増進法第26条)。許可を受けたものには、許可マークが付与される。

●栄養機能食品:→高齢化やライフスタイルの変化等により、通常の食生活を行うことが難しく1日に必要な栄養成分を取れない場合に、その補給・補完のために利用できる食品。現在、国によってその上下値の規格基準が定められているのは、ミネラル5種類とビタミン12種類。
→1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が、国の規格基準に適合している場合、その栄養成分の機能の表示ができる。(注意事項等もあわせて、適正に表示すれば国への許可申請や届出は不要)

※さらに平成17年には「条件付き特定保健用食品制度」が創設されたり、栄養機能食品の表示に関しても改正が行われるなど、いくつか大きな動きがありました。http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/mhlw/news/2005/050203/170203-2.html世の中の関心の高まりに反応して、適宜見直しが行われているんですね。


なるほど。この二つの違い、ほとんど気にしていませんでしたが、国による許可・承認の要否という点で制度上かなり差があるんですね。


とはいえ、特定保健用食品も健康効果を「助ける」「役立つ」という、かなり控えめな表現で、実際の効果についてはかなり曖昧です。確かにそれだけで病気を治せるとしたら、もはや「健康食品」でなく医薬品ですね。また栄養機能食品が、現在のところ単にビタミンとミネラルの観点でのみ表示を認められているのも意外でした。なんだか「栄養機能」なんていうと、もっと、それ以上に健康によい成分がいろいろと強化されているように感じてしまいますよね。


いずれにしても、保健機能食品は、それだけで劇的に体調不良や病気の症状が改善したり、まして病気を根本的に治せるものではありません。そのあたりは、くれぐれも念頭に置いておかねばなりませんね。本当に体に異変を感じたら、まずは医療機関を受診し、保健機能食品の摂取自体も医師に相談すべきかと思います(通常は、結局はあくまで「食品」であって、それ以上の効果を期待するものでないので、たいてい大丈夫なはずですが)。まあ、そのあたりは、通常の食品でも薬との相性が悪いものもありますから、そもそも医師のほうから説明があるはずですけれどね。


そう考えると、消費者にとっても“お墨付き”は安心できる材料にはなりますが、メリットは宣伝する側の企業のほうが大きいのかも、なんて思ってしまうのでした。

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