それでも通ってしまう弱さ。

投稿者: | 投稿日時: 2009年10月07日 11:53

化学物質過敏症についての認知が、このところ高まってきているようです。新聞やテレビなどで時折報道があったりして、多くの人は名前くらいは知っているかと思います。しかし、実際の対応はかなり遅れているとのこと。それでもようやく治療に保険が適用されることになったそうです。とはいえ、治療施設自体にもコストが嵩み、診察にも時間がかかるなど、治療側の負担が大きいといいます。

●数少ない専門医に負担 化学物質過敏症 治療に保険適用 今月から
(2009年10月3日 東京新聞)

私や周囲の人には、今のところこのような疾患を抱えている人はいないのですが、不安材料はかなり身近なところにあります。


というのも、私たち家族の住んでいる建物のなかに保育園への通園等でどうしても使ってしまう階段~通路があるのですが、そこはコンクリートの壁に囲まれた非常通路で、重たいドアとドアではさまれているために空気の流れが一日のうちほとんど、極端に限られている空間なのです。おそらく一日のうちドアが開閉されるのは合計でも数分、しかも両端のドアが一度に開くことがないので空気が流れることはありません。そんな場所ですから、建てられてから5年以上たつというのに、今もいかにも体に悪そうな、「化学物質」という言葉を想起させるような臭いが常に充満しています。ペンキ塗りたて、といった臭いです。


それでも他の経路だとかなりの遠回りを強いられるため、通園の際などどうしてもその通路を通ってしまいます。臭いがするので十分に“警鐘”は鳴っているのですが、ちょっとの間我慢してしまえば嗅覚はだんだん麻痺してきてしまいますし、長時間滞在するというほどでもないので自覚できるような異常(頭痛やめまい、吐き気などなど)が即座に体に生じるわけでもないため、時間と体力の節約という誘惑についつい負けてしまうのです。「確かにこの臭いはキツいなあ。気分が悪くなる人もいるんじゃないかなあ」などと考えつつ・・・。


そういえば、ちなみに似たような言葉に「シックハウス症候群」というのがありますね。先日はこんな報道もありました。

●建物原因のシックハウス初認定=「開発会社に過失」-東京地裁
(2009年10月1日 時事通信)


シックハウス症候群というのはあくまで建物からの有害物質(化学物質のほか、広義ではカビや微生物の発する有毒成分等も含むようです)が原因でさまざまな症状が出るケースに限定された言葉で、そういう意味では化学物質過敏症とは厳密には意味するものは異なります。それでも近年特に問題となっているのはやはり、ホルムアルデヒドなど建材や壁紙に含まれる化学物質が原因で体に異常をきたすものですから、両者を苦しめているものの正体は重なることが多いかと思います。


いずれにしても、「化学物質過敏症」「シックハウス症候群」が怖いのは、どこに閾値が潜んでいるか分からないことですよね。臭いがしなくても体に悪影響を与える成分が現代の生活には満ち溢れているというのに、こうしてちょっとずつでも明らかに体に有害と思われる高濃度の化学物質を浴び続けていれば、いつかその日が来てしまうかもしれないのです。まして、子どものことはもっと心配してしかるべき、親として失格かもしれません。子どもはこれから長い人生が待っていますし、影響の大きい時期でもありますから、本当はやはり通るべきでないのかもしれないのでしょうね。

ああ、でも・・・。

大きくなってきたお腹を抱えて結構な遠回りをするのも正直しんどい。これが「インフルエンザウイルスで充満している通路」だったら絶対通らないんでしょうけれど、はたして本当にどれだけ体を蝕んでいるか、蝕むのかも分からないことに対して防御線を張って実際行動するのは、考える以上に難しいものです。ああ、あとで後悔しないといいなあ・・・。

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コメント

妊娠中の女性にとってはいつの世も昔から変わらず心理的に酷な時代が続きますね。
妊娠できない男として妊婦さんに贈る言葉も、やはり古来変わらぬ「案ずるより産むが易し」だけのような気がします。
あ、あと「母は強し」も。これら昔ながらの口伝にはどの時代にも常に通用する真理が含まれているように思います。

>それでもようやく治療に保険が適用されることになったそうです

その話は聞いたことがありませんでした
具体的な情報源を教えて頂けますか

>前々期高齢者さま

あたたかいお言葉をありがとうございます。確かに自分でも「強くなったかも」と思います。良くも悪くも・・・。子どもに鍛えられている感じです。でもやはり、精神的には主人や周りの人々に支えられている部分はとても大きいのも自覚しています。一般的にも、育児や家事はまだまだ女性の負担が圧倒的に多い状況かと思いますが、何より精神的な支えがあるということは一番有難いことだな、と思う今日この頃です。

>しまさま

ご指摘いただいた「情報源」ですが、すみません、文中で紹介した東京新聞の記事では「保険適用も始まり」とありますが、厳密には↓の記事にもあるように、「医療機関が診療報酬を請求する際の病名として、化学物質過敏症を10月1日付で登録することを決めた。治療に健康保険が適用されやすくなり、患者にとっては朗報となる」ということのようです。
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009061501000460.html

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