やればいいのに なぜやらないの? |
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投稿者: | 投稿日時: 2011年10月07日 13:05 |
ワクチンフォーラムのまとめ、今回は救済制度について書こうと思ったのですが、その前に別の論点を2つ、整理しておくことにしました。皮下注射と筋肉注射について、そして「副反応」(副作用)と「有害事象」という言葉の使い分けです。それぞれに、引っかかるところがあったので・・・。
《皮下注射vs筋肉注射》
日本でのワクチン接種は原則、皮下注射となっています(HPVは例外とのこと)。これって当たり前に思っていないでしょうか。しかし、世界での標準的な接種方法は筋肉注射なのだそうです。
私も誤解していたのですが、どこかで「筋肉注射のほうが皮下注射より痛い」などという話を聞いたことがないでしょうか。実はこれは全く逆で、筋肉注射が最も痛みを感じにくいとのこと。確かに、痛点(痛みを感じる神経の末端)だって皮膚にあるわけですしね。調べてみると、日本でも、ワクチンなどでなく刺激の強い種類の薬は筋肉注射になるそうです。たとえばステロイド剤やアルカリ性や酸性の薬の場合は刺激が強く、痛い注射になります。つまり筋肉注射そのものが痛いのではなく、痛い種類の薬の場合に筋肉注射を用いるため、誤解が生じているということのようです。なお、筋肉注射では薬が一気に吸収されずに比較的スムーズに流れるため、ある程度多くの薬を投与することができるメリットもあり、その場合の選択肢でもあるとのことです。接種部位は、大人は肩、1歳未満は太ももと紹介されていましたが、私がよく聞くのはお尻に打った、という話です。いずれにしても、筋肉に届くよう、注射を打つ角度は皮膚に対して直角。このブスっと突き刺すイメージから、なおさら「痛そう」ということになったのかもしれませんね。
それにしても、なぜ日本では世界標準ではない皮下注射を基本としているのでしょうか。予防接種ガイドラインにもそうあります。
齋藤氏によると、かつて日本でも筋肉注射が行われていたそうです。しかし、あまりにも多用した結果(確かに、今の年配の人たちは、小さいころ何かにつけすぐ注射を打たれたと聞いたことがあります。このころの話が、お尻にブスっと突き刺すイメージの始まりかもしれませんね)、筋肉が萎縮するなどの副反応が生じて、訴訟問題となり、医師や製薬会社、国が訴えられました。日本小児科学会でも筋肉注射の危険性を認めて、安全な筋肉注射はないと明言。そのあたりから、予防接種も筋肉注射ではなく皮下注射となったそうです。
要するに、本来は副反応も出やすく痛みも強い皮下注射を選択の余地なく打たれているのは、ひとえに国や製薬会社の都合で、いまもずっとそれが残っている、ということでしょうか。ここでも同時接種の話と同じく、国民の立場に立った科学的・合理的な選択が行われているわけではないということですね。
なお、ヒブや肺炎球菌ワクチンは筋肉注射を想定して外国で作られたワクチンです。そのワクチンを皮下注射すると、腫れや赤みが強くなるとして、海外では皮下注射をしないこととされているそうなのです。にもかかわらず日本では、「皮下に深く注射を行う」とされています。でもこれって、暗に筋肉注射を想起させるものに見えますよね? そうした事情を知っていて、実際には筋肉注射を行っている医師もいるとも聞きます。そのため、医師によって接種部位の腫れ方も異なっているのだとか。
いずれにしても、「まあとにかく、もういい加減に筋肉注射にしましょうよ」という気がしてきました。
《副反応(副作用)と有害事象》
私たちはワクチンを接種した後に何らかの症状が出ることについて、あまり考えることなくそれを「副作用」と呼んでしまいがちです。しかしよくよく考えてみれば、接種後に症状がでたとしても、予防接種にその原因があるとは限りません。ですから専門的には、次のように分けて考えられています。
●有害事象:
ワクチン接種後の全ての事象。本当の副反応かもしれないし、単に偶然にタイミングが重なっただけのことかもしれない。(副反応を含む広い概念)
●副反応:
一般に言う「副作用」。ワクチンによって引き起こされた諸症状。接種部位の痛みや赤み、腫れといった局所的なものから、発熱、頭痛、嘔吐などの全身症状までさまざま。各ワクチンに特異的な症状もある。
この区別をすることは、実は多くの意味を持ってきます。例えば、ある症状が予防接種の後に偶然に起きた場合でも、それを安易に「副反応」としてカウントしていってしまったら、そのワクチンの効果よりも副反応の懸念がどんどん大きくなってしまいます。その結果、多くの人が接種を避けるようになれば、せっかく有効なワクチンが存在するにもかかわらず、その病気が流行する結果になるかもしれません。あるいは、本当の副反応が有害事象と一緒くたに捉えられ、今も副反応と認識されないまま、つらい症状を経験する子どもたちがそれなりの頻度で出ているかもしれません。
米国では、国のワクチン安全サーベイランスプログラム(VAERS)が1990年に設置され、ワクチン接種後の“全有害事象”情報を吸い上げるシステムが機能しています。些細なものから重篤な症状まで、報告も非常に簡単で手軽にできるので、1年に約30,000件もの報告が上がってくるそうです。といっても、ほとんどは軽症で因果関係は不明。しかし、こうして丹念に有害事象を吸い上げていくことで、ワクチンによる副反応を統計的に判断することが可能になっているのです。実際、1999年には、このシステムがきっかけで、ロタウイルスワクチン(ロタシールド)による腸重積が明らかになりました。
これに対し、日本にはこのような利用しやすい統一システムは存在しません。ちょっとした微熱くらいなら受診するのもかえって面倒、といった感じで、ほとんどの有害事象がうやむやになっているのではないでしょうか。そして結果的に、その中に埋もれた副反応も、埋もれたままになっていないでしょうか。
私も長男がポリオ生ワクチン接種後に発熱したとき、つい安易な受診は避けようと家で様子を見て過ごし、その後に麻痺が出たときでさえ、休診日だったのでまた様子を見てしまい、結局回復したので全く医療機関に相談もしないままでした。今にして思うと、「副作用」という言葉が一瞬頭をよぎってちょっと人に話を聞いてみたりもしたけれど、やっぱり大げさかな、親の過剰反応かな、という気になってその考えをぴっちり封じ込めてしまった、というのが本当のところです。ただ、もっと気軽に報告できるシステムがあれば、せめて報告くらいはしていたように思います。同じような親御さんが他にもいるかもしれません。もし手軽な報告システムがこれまでに存在していれば、ポリオ生ワクチンの潜在的な麻痺患者もきちんと数字として把握できたのかもしれないですよね。(残念ながら、来年度末の不活化ワクチン混合ワクチン導入で、本当にやむやになっていってしまいそうですが・・・)
こうしたシステムがあってきちんと機能するならば、副反応かそうでないかの線引きができることにもなります。それは、本質というわけではないですが、「救済制度」にも関わってくる話です。次回はそのややこしい救済制度のことを書いてみたいと思います。
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コメント
日本での筋肉注射が忌避されるようになったのは、大腿四頭筋筋萎縮症が多発したから。本来、打ってはいけない場所に日本では筋肉注射をやっていた。
だから、本当に医学的な判断なら、その部位だけをはずせばよかったのですが、「何か問題が起こり責任を取らされるのが嫌な」「方々」が未だに、筋肉注射を非医学的根拠で忌避なさっているだけのことですね。
子供たちに痛い思いをさせて、自分たちの責任から逃げている。
こうした発信、続けてください。
大腿四頭筋の筋委縮が起こった原因は、実はワクチンではなく当時日常的に行われていた抗生物質や解熱剤の筋肉注射だったそうです。すなわち、ワクチン接種による筋委縮が起こっていなかったにもかかわらず、ワクチンの筋注を禁じることとなりました。裁判の判例によって、とんちんかんな対応を時の厚生省がとってしまったのが実情です。事実と異なった情報を元に、医療の現場への判断をしてしまったのですから困ったものです。現在、予防接種を推進する小児科医のグループは筋注を認めるように働きかけをしております。
ママサンさま、つぶあん(小児科医)さま、
筋肉注射についてのコメントをありがとうございます。勉強になりました。
知れば知るほど、医療における非合理的なやり方や制度を変えようという際のボトルネックは、だいたいいつも同じところに行き着くんだなあと思ってしまいます(きっと医療に限らずそういうことが世の中多いのでしょうね)。なんだかなあ、という感じですが、そこを突き破るには内部の圧力だけには頼れないようなので、周りで騒いで「吸い出す」しかないのかもしれません。そう思って、声を出していきたいと思います。
大腿四頭筋筋萎縮症の被害者です
私と当時の子供はいま
47歳前後になられていると思います
当時、走ることができなかったのですが
通常生活はできなくはなかったので
前向きに訴えることもせず
今まできました。
子供に遺伝こそしませんでしたが
この年になり足に負担がやってきました。
寒いときには痛むし
足があがらないため靴のつま先が
全滅です。
体が前傾姿勢なため腰が痛いのです
後半うまく生活できるか心配ではあります。
厚生省も今の私のことなどは知らないでしょう
当時症状のひどい方は訴えておられましたが
これから問題が出る方は多いかもしれません。
これからのことを考えて
少し発信しておこうかなと思います
当時の同級生も同じ症状でした。
大丈夫でしょうか?
当時の医者に
診断書をもらってあります
いままで保管してきましたが
使うときがきたのかもしれません。
同じ症状を持つ方へのメッセージとして投稿します。
大腿四頭筋筋萎縮症の被害者です
私と当時の子供はいま
47歳前後になられていると思います
当時、走ることができなかったのですが
通常生活はできなくはなかったので
前向きに訴えることもせず
今まできました。
子供に遺伝こそしませんでしたが
この年になり足に負担がやってきました。
寒いときには痛むし
足があがらないため靴のつま先が
全滅です。
体が前傾姿勢なため腰が痛いのです
後半うまく生活できるか心配ではあります。
厚生省も今の私のことなどは知らないでしょう
当時症状のひどい方は訴えておられましたが
これから問題が出る方は多いかもしれません。
これからのことを考えて
少し発信しておこうかなと思います
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大丈夫でしょうか?
当時の医者に
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使うときがきたのかもしれません。
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