「いのちの授業~がんを知る」狛江三中実施報告1

投稿者: 川口利 | 投稿日時: 2012年07月05日 13:14

先週の土曜日、6月30日の午後に、狛江三中で「いのちの授業~がんを知る」を実施しました。講師はいつものメンバー、医療従事者側講師が久住英二さん、患者側講師が吉野ゆりえさんです。

授業の組み立ても前回同様

導入部:「いのち」という言葉から感じることは?(10分)
第一部:「がん」は身近なもの?(10分)
第二部:「がん」を経験して(インタビュー形式)(30分)
第三部:まとめと質問タイム(20分)

で実施しました。

体育館の中は外より2~3℃高く感じられ、かなり蒸し暑い中での授業となりました。途中生徒には少し疲れが見え始めましたが、一度気分転換をしてもらったこともあり、最後までしっかり取り組んでくれたと思います。事前学習で吉野さんのことを少し勉強してくれていましたので、その分興味を持って聴いてくれたことも功を奏したと思います。

導入部は前回と同じ展開、「いのち」という言葉から感じることについて訊くことからスタートしました。例によって、「しあわせの時計」という歌を聴いてもらった後で、生徒に意見を求めましたが、残念ながら手は上がりませんでした。授業見学の時に2年生が元気よいという印象を受けましたので、2年生の最前列に座っていた男子生徒にマイクを向け答えてもらいました。「いのち」という言葉から感じることは? と尋ねると、「大切なものだと思う」との答えが返ってきました。もう1人誰か、と言うと答えたそうな感じのする3年生が目に入りましたので、マイクを向けてみました。大きな声で「ものすごく大切なものだと思う」と、答えはほぼ同じ内容でした。

お決まりのパターンで、「いのち」がなくなるとどうなるか? 日本で一番多くの人が亡くなる病気は何か? と進んでいきました。病名を当てる場面では手が上がり始め、最初の生徒が「がん」と答えましたので、他の意見を求めたところ、「心筋梗塞」「エイズ」という答えも出てきました。「がん」であることを確認し、第一部への導入として、日本では生涯で何人に1人が「がん」にかかるかというクイズに。前回の小金井一中と同じように、5人に1人が圧倒的多数を占めました。ここから久住さんにバトンタッチです。

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今回は、久住さんが話された内容を少し具体的にご紹介します。

まずは、スライドのアニメーションにより“2人に1人が「がん」にかかります”という文字が大きく映し出され、久住さんの説明に入りました。2人に1人を具体的に理解してもらおうということから、“将来結婚した時に自分か結婚相手のどちらかが「がん」になる”“「がん」で自分が苦しんだり家族など大切な人が「がん」にかかって自分も心を悩ますということが必ず起こると言っても差し支えない”というコメントがありました。続いて3人に1人が「がん」で亡くなっていることが確認されました。心臓病や脳血管障害も死亡数が多く、血圧が高いとかコレステロールが高いことで血管が破れたりつまったりすることによって起こる病気であることが説明され、冷蔵庫の普及により(塩分摂取量が減ったので)脳梗塞などの死亡数も減ってきたこと、その分「がん」になるくらいまで長く生きられるようになってきたことが付け足されました。

ここから「がん」とは何か? に関する説明が始まりました。人間の体は約60兆個の細胞でできていることを、レゴにたとえると60兆個のブロックからできていることになると分かりやすく説明していただきました。胎児のスライドを見せながら、48日目の胎児の指には水かきのようなものがあること、その3日後には指と指の間の細胞が死んで指っぽくなること、9週目くらいになるとミニチュアの手のようなものになることを確認し、水かきのようなもののところにある細胞は死ぬようにプログラムされているので、(手ができて)人間の体が形づくられてくることが説明されました。また、体の細胞は7年間で全部入れ替わるので、小学校1年生時の細胞はほとんど残っていないこともコメントされました。人間の体は細胞を新しくして成長すること、それが正常な人体の細胞の増殖であるとの説明でした。

「がん」とは、細胞が秩序を失った増殖をするもので、普通の細胞は層をなして順序だてて並んでいるが、「がん」細胞は並びもめちゃくちゃで細胞の大きさもバラバラであることを、やはりスライドを使って確認しました。生徒たちの体にも1日5,000個くらい「がん」のもとができているが、免疫という外敵や体の中の変な細胞をやっつける作用があるので「がん」にならずに済んでいること、年齢等で免疫力が落ちてきたり強いストレスがかかると「がん」を抑えられなくなることが説明されました。

「がん」は無秩序に増殖して人を殺すことが甲状腺がんの患者の写真を使って説明され、胃にできれば食べられなくなること、肺にできれば呼吸できなくなること、脳にできれば手足が動かなくなることなど体の機能が失われていくことがコメントされました。

「がん」になったらどうしようもないということではなく、治療法があることへと続きました。放射線治療、抗がん剤治療、手術という三つの代表的治療法の他にも傷みなどの症状を和らげる症状緩和治療というものが常に進んでいくこと、入院したり通院したり在宅で治療するなど治療の場所も異なっていくことを説明した後で、この患者さんにはどの治療法が適しているかを考え、説明し、納得してもらったうえで治療をしていくことが伝えられました。

治療は何のためにするのか? という部分では、「がん」を完全に治すことができるのは5人に1人であり、5人に4人は完全に治すことができない状態で発見されること、その場合は「がん」を治すことが治療の目標はなくなっていること、仕事を全うするとか家庭生活を全うするためというように、その人がよい人生を送れるようにするのが目標であることが説明されました。

前回同様、非常に分かりやすく説明していただきましたので、生徒にもよく理解できたと思います。

明日は、第二部での吉野さんのお話を具体的にご紹介いたします。

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