イモバックスポリオの価格に関する注意喚起 |
|
投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2012年07月27日 14:24 |
ロハス・メディカル8月号でもご紹介した単抗原不活化ポリオワクチンの価格問題で、日本医師会と厚生労働省がメーカーのサノフィパスツールに値下げを要請したと報じられています。サノフィ側がどのような判断をくだすのか知りませんが、圧力に屈して値下げが行われた場合に備え、一つ注意喚起しておきたいと思います。
定期接種の費用は、自治体から各医療機関へ支払われます。その金額は、ワクチン代に医療機関の手数料(問診料や手技料、ワクチン管理料など)を上乗せした総額となっており、あらかじめ自治体と地域医師会との間で取り決められます。各項目ごとの単価を契約しているのではなく、1接種あたりの総額で契約しているところがポイントです。
ワクチン代は、①自治体がまとめて卸と価格交渉して医療機関へ納入させる場合②各医療機関ごと交渉する場合とがあるようです。
9月から定期接種開始ですから、イモバックスポリオを用いた接種の費用は、既に決まっているはずです。
ここまでを前提として、希望小売価格の引き下げが行われた場合を考えてみます。
考えられるのは以下2パターンです。
A:その分だけ、自治体と医師会との間で取り決められた接種費用も引き下げられる
B:接種費用は変わらない
Aの場合、引き下げられた分だけ各自治体の負担が減ります。①の場合は比較的やりやすいでしょう。しかし②の場合、Bにならないでしょうか。その場合、引き下げられた分だけ医療機関の利潤が増えます。
さすがにBということはないだろうと思う方がほとんどかもしれませんが、医師会側が「混乱する」とか何とか主張して2カ月くらい価格改定を遅らせる程度だったら、ありそうだと思いませんか? 今回のイモバックスポリオは11月から定期接種の始まるDPT-IPV(4種混合)導入までの繋ぎとして位置づけられていますので、その2カ月、引き下げが遅れたら、自治体側のメリットは極めて薄くなります。言葉を換えると、医療機関だけが得をします。
ということで、日医の「価格引き下げ要求」がとてつもなく胡散臭く見えます。邪推されたくなければ、価格引き下げが行われた瞬間に各医師会の契約価格も自動的に引き下げる、と宣言しておくべきでしょう。
(7月27日 16時55分追記)
医師会が引き下げに応じると宣言しても、既に各自治体は6月議会で補正予算を可決済みで、減額補正するようなことはないんじゃないかとの指摘がありました。9月議会で11月の分から決め直すというのは、非常にありそうなシナリオです。
<<前の記事:【新コーナー始まります!】 人工甘味料で太るのは、中毒になるから? 低脂肪食ダイエット vs. 低炭水化物ダイエット:次の記事>>