糖尿病にBCG? |
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投稿者: 川口利 | 投稿日時: 2012年08月14日 22:33 |
WebMDの8月8日付けの記事をご紹介します。
タイトルは
Can TB Vaccine Stop Type 1 Diabetes?
New Study Suggests Old Vaccine Can Treat Long-standing Diabetes
(http://www.webmd.com/news/20120808/can-tb-vaccine-stop-type-1-diabetes)
以下、抄訳です。
80年を経ている結核用のBCGワクチンが1型糖尿病の成人患者に効くかもしれないという臨床研究が行われた。
10年以上前に、マサチューセッツ総合病院とハーバード大学医学部のDenise Faustman医学博士(PhDでもある)と研究仲間は、BCGワクチンが糖尿病のネズミに効果あることを発見している。プラス方向の免疫反応を刺激することで、糖尿病を引き起こしている免疫反応の不具合をワクチンが食い止めることになり、一度そうなれば、動物のインスリンを作る細胞が再生するのである。
他の研究者たちもネズミでの研究を繰り返し、ネズミではうまくいったが、研究成果を人間への説明に用いるのは容易ではなかった。まず、免疫システムについてと1型糖尿病についてもっと研究することが求められていたのだ。
1999年のある研究では、新たに1型糖尿病と診断された子どもにBCGワクチンの効果は認められず、将来有望とは言えなかった。
Faustman博士が語るには、「自分たちが研究を始めた時には、15年~20年闘っている人の糖尿病を何とかしようというような熱はあまりなかった」ということだが、彼女は研究にこだわった。
「驚くことに、とてもよいデータが取れたため、FDA(米国食品医薬品局)から安全性試験の承認を得ることができ、さらに驚いたことに、その安全性試験において、とても少ない用量、2回のワクチンを打つだけで、ネズミの実験の時と同じことが起こることが判った」と彼女は説明している。
*有望な兆候はあるが、効果は持続せず
研究では、6人の1型糖尿病インスリン依存成人患者を、BCG2回投与組と偽ワクチン2回投与組に分け、57人の糖尿病患者と16人の非糖尿病者との比較を行った。
ワクチンを接種された3人では
1 インスリン抵抗性T細胞が次々に死に始めた
2 新しい制御性T細胞が増えた
3 膵臓β細胞から一時的ではあるが新たなインスリンの産生兆候が見られた
4 ワクチンの危険性は認められなかった
プラセボを接種した患者の1人でも同じことが起こったが、たまたま単球増加症にかかっており、ウィルス注射がBCGワクチンと同じような免疫反応を引き起こしたためであった。
「すべての悪いT細胞を殺すことはできなかったが、多くを殺し、Cペプチドの一過性増加(β細胞機能が向上した兆候)も見られたので、正しい用量と頻度を見つけ出すために第二相試験へと進んでいこうとしている」とのこと。
治療が効果あるなら、患者は、おそらく生涯、繰り返しBCGワクチン接種を受けなければならないだろうが、Faustman博士によれば、ワクチンの長い歴史から、このことは安全性上問題ないということである。
*他の免疫療法が失敗する中、BCGは効くのか?
妥当な研究であることを糖尿病専門家たちに納得させるのには、さらなるエビデンスが必要となってくる。懐疑的に見ているロチェスター大学医学部教授で糖尿病治療責任者のSteven Wittlin医学博士は、「糖尿病の免疫治療には常に希望を抱いている。しかし現在までのところ、初期の臨床試験では見込みあると思われたすべての免疫研究が、大がかりな規模の試験においては失敗している」と語っている。
Wittlin博士は、以前のBCGワクチンによる1型糖尿病治療や予防努力は失敗に終わっていると言及し、「Faustman博士のグループがどのようにワクチンを使うか、落とし穴が細部に隠れているかもしれない」と示唆している。
自分のアプローチが糖尿病患者に対してうまくいけば、おそらく、クローン病・狼瘡・鞏皮症・慢性関節リウマチ・シェーグレン症候群・多発性硬化症など、他の自己免疫疾患にも効く可能性があると、Faustman博士は語っている。
Faustman博士と研究仲間は、1型糖尿患者をBCGワクチン第二相臨床試験へと募っている。予算2千5百2十万ドルのうち1千1百万ドルが集まったが、資金の目処が立つまで研究を始めることはできない。
Faustman博士の研究は、8月8日配信オンライン版PLoS Oneのに発表されている。
コメント
医学のますますの発展に期待ですよね。