泡と消えた局長のこだわり

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2016年12月13日 00:00

別のネタを2日挟んだが、元に戻って新専門医制度の話の続き。


当初は、医師の偏在対策がメインの目的だったはずなのに、いつの間にか話が変わったという件。


2012年7月の回に事務局から出された中間まとめ案では

また、医師の地域偏在・診療科偏在は深刻な問題であり、専門医の養成プロセスにおいても偏在対策につながる取組を考える必要がある。

と書き込まれていたのが、翌8月の回に出された中間まとめ案で
また、医師の地域偏在・診療科偏在は近年の医療をめぐる重要な課題であり、専門医の養成プロセスにおいても、偏在の視点への配慮が欠かせない。

と完全に腰砕けになっている。そもそも医師は偏在しているのかという大問題はあるにせよ、この段階で換骨奪胎が行われたわけだ。


で、一体どういうやりとりの結果、そうなったのか議事録を追っていくと、実は既に6月の回で

基本的に私はこの専門医の在り方については、医師の偏在是正を図ることが目的ではなくて、高質な医療を等しく国民の方々に提供されることがいちばんということです。(中略)「医師の質の一層の向上及び医師の偏在是正を図ることを目的として」ということではなく、「医師の質の一層の向上及び高質な医療が等しく国民に提供されることを目的として」と是非していただきたい。その結果として、医師の偏在是正が図られることになるということであると理解をしております。【小森貴・日本医師会常任理事】

小森先生がおっしゃられた何点かについて、医師の偏在や是正などについては結果であるということに私も全く同感で、それは少し書きぶりを工夫する必要があるだろうと思っております。【平林勝政・國學院大學法科大学院特任教授】
と、ダメ出しされていたのに対して


地域偏在とか診療科の偏在の問題は、ここ数年間、大きな医療政策上の議論・課題になったわけで、これを専門医制度を検討した結果、派生的な効果とか影響として受け止めるか、ある程度政策的な視野で受け止めるか、これはもうちょっと目的から下ろすよりは議論があっていいのかと感じました。【大谷泰夫・医政局長】

と抵抗して、7月の回にも書き直さずに再提出したようだ。


で、7月の回でも

私は小森先生の最初の1頁の目的のところにどうしても帰ってくるのですが、「医師偏在の是正を」云々というところの話なのですが、これは前回も「財務省との関係」云々ということでチラッと話を聞きましたが、しかし我々がこういうものをまとめていくのは、専門家集団、あるいは少なくともそれをまとめた人たちが国民に対してどう示していくかということだとすれば、今回の専門医制度が医師偏在を是正することを目的としてというのが、国民に説明できるのかという気がする。ですから、ここの表現は、前にもお願いしましたが、「することによって、結果として」云々という話にしないと、大前提の目的のところでこれを書いていくと、私は国民には説明ができないのではないのかと思います。【門田守人・がん研有明病院院長】

と蒸し返されて


いまの点ですが、事務局提出資料2の「はじめに」のところに書いてある検討会を開催した目的は、「医師の偏在是正を図ることを目的として」ということも書いておりますが、専門医の仕組みについての目的も、先ほどご説明しましたように、検討に当たっての視点の○の3番目、下線が引いてありますが、ここに「専門医の質を高め、高質な医療が提供されることを目的として構築をすべきである」と。そして、その偏在の是正については、結果としてそういう効果が期待されるということですので、専門医の仕組みとしては、こういったことを目的にして構築すべきであるということで、門田先生のご意見は反映できているのではないかと思ってこういうふうに整理をさせていただいておるところです。【医事課長】

私は門田先生の意見に賛成でして、「はじめに」のところは、逆に「検討にあたっての視点」のところへ持ってきたら、それでいいのではないかと。専門医の在り方が医師偏在、あるいは診療科の偏在になるはずはないと私は思うので、これは結果として起こることだから、私は門田先生に賛成です。【高杉敬久・日本医師会常任理事】
という応酬の後に、


そもそも全国いろいろな所で医師の地域偏在、診療科の偏在があることは、皆様方もご案内のとおりだと思います。私も第1回のこの検討会に出させていただいたのですが、そのときの説明の中で、趣旨に関しては、医師の質の一層の向上及び医師の偏在是正を図ることを目的としてこの有識者の検討会を開催するというのがそもそものこの会の目的でしたので、この「はじめに」のところはあくまでもプロセスを書いているのかというところで、ここのままでいいのではないかと思っています。【中沢=代理なので肩書や氏名が不明だが都道府県代表と思われる】

の援護射撃はあったものの


「はじめに」は、要するにこれは我々の意見ではないのだと。検討会としての意見ではなくて、厚労省がこの検討会を始めたときの目的であったことがわかるように表記をすれば、問題解決できるのではないかと思うのです。【平林氏】

と、あくまでも拘るなら、お墨付きはあげないよとハシゴを外されて万事窮したということのようだ。


なお、6月の回の議事録に出てこない「財務省」の名を、医政局長が実際には出していたようで興味深い。
(つづく)

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