感情表現の多いブログを書いていたことについて

投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2017年04月26日 15:10

子どものかかりつけ医を探せ! シリーズをしばらくブログで書いておりましたが、その内容について頂いたコメントから色々考え、コメントへのご返信ではなく一つのエントリーとして書こうと思いました。

まず、ブログの内容から誤解を生んでしまった、と反省しました。

今回のシリーズは、私が「一人の母親として感じたことを綴るブログ」であり、「記者として書く記事」ではありませんでした。

最初にそのことを但し書きとして書いておくべきだったと思っています。

私は「ブログ」と「記事」は違う、という認識で書いておりましたが、医療記者を名乗る私が書くブログということで、これは記事だという視点(一定の客観性や情報提供を求めて)で読んでおられた方も多かったのだろうと推測しました。

その視点から見れば、今まで私が書いていた記事に比べるとまとまりはありませんし、ただ事実と感情の流れが書かれているだけで、「一体何が言いたいんだろう?」と思われたと思います。私がブログを書く際にとったスタンスと、読まれる方が私に求めたスタンスが異なり、「なんだこれは」ということになったのではないかと思います。

今回のブログを書いていた背景をご説明します。

私は一人の母親になったことで、自分や子どもの受ける医療について色々感じること、考えることがありました。

それらは、独身記者時代には全く知らない当事者の世界だったのです。

いざ医療を受けようと思って「あれ?」とか「どうしてこうなったんだろう」と思うことが多く、それは自分が記者として医療介護制度を取材していたことや、国が広げようとしている地域包括ケアが現場に行くとどうなっているのかということ、その一つの実体験でした。

独身記者時代でしたら取材対象者を探して取材しなければ聞けない話ですが、我が身をもって取材できる、また取材時に「これはどうなんだろう?」と思うことがあれば自分で体験でき、書き留めて検証できるという、大変貴重な状態にあると思ったのです。

『救児の人々』を取材しながら、多くの母親は相当大変な状況に置かれているにも関わらず、大変な時には声を上げようがなく、声を上げるには疲弊し過ぎていて、また落ち着いた頃には大変な頃の記憶が薄くなっていたり、声を上げようという気力も起きないということが多いとも感じていました。だから、自分は現状を経験しながら、書き留めて、発信していきたいと考えました。

医療制度を知っている記者という視点と、一人の母親(当事者)という二つの視点から、実際に現場で起こっていることを経験を通して伝えるということは、今の時代を伝える一つの手段であると思いました。

ブログに書いているかかりつけ医を探すということも、国が簡単に言う「かかりつけ医にかかる」ということが、日常生活の中では、実はとても難しいということを身をもって経験しました。その一つの体験から、実はかかりつけ医探しって言うほど簡単ではないのではないのかということ、またどうすればその解決の糸口が見えるのか、ということも書いていけると思います。

医療記者としてある程度の情報があるはずの人間であっても、現場ではこんなに苦労する、ということは一般の方であればもっと試行錯誤されることではないのかと思ったりするのです。


そして、ロハス・メディカル本誌5月20日号から「記者が当事者になって気づいたこと」という連載を始めることになりました。

今回のブログは、そのための備忘録、素材という意味が大きかったです。雑誌の記事にするために忘れないうちに時系列と事実を書き残しておこうと思いました。

また、その際に重要だと思ったのが自分の「感情」でした。

感情は当事者でないと決して分からないものですし、記者として当事者に一番聞きたい部分です。また、医療では患者・家族側の感情と医療側の思いとのボタンの掛け違えから様々なトラブルに発展することも多いです。だから、当事者として書くのであれば感情という部分は大事にしなければいけないと思い、重要視してブログを書きました。敢えて書いた部分も大きかったです。

ただ、やはり当時の私は産後うつで、初めてのことだらけで緊張していたことばかりだったので、感情表現が強烈な部分が多かったと思います。これを記事だと思って読んだ方は困惑されたでしょうし、不快感も残ったことと思います。「医療側と患者側の対立を煽りたいのか」と思われた方もおられたかもしれません。そういうお気持ちになった方がおられたとしたら、そこについては申し訳なく思います。

ただ、私はそういうつもりではなく、これから本誌でまとめていく記事の素材として書くものであり、本誌記事にする際には、表現や言葉遣いも十分に吟味しますし、このまま載せるものではありません。

それなら個人的なノートに書けばいいのでは、と思われるかもしれませんが、本誌記事にする際に削られた部分がもったいないと思ったこと、ブログに書くことで同じようなことを経験された方がおられたら何かご意見を伺えるかもしれないという思ったこと、「ブログ」と「記事」の混同によって起こる読んでくださった方とのすれ違いにまで思いが至らなかったことなどにより、ブログに書きました。

せめてブログを書く背景を事前に書いておくべきだったと反省しています。以後、ブログを書く際には自分の立ち位置を明確にするよう、気を付けます。

その上で、これからも一人の母親として感じたことはブログに書いていくつもりですし、それを記者の視点から見るとどうなのか、どのような問題が現場に起こっていて、どういう解決策が考えられるのか、ということを本誌(一部はブログ)で書いていくつもりです。そこは立場を明確に分けて書きます。ぜひロハス・メディカル5月20日号をお手に取って頂ければと思います(ネット上でも無料電子書籍として公開されています)。

また今はまだ思い付かなくとも、この経験を基にして医療現場や生活をより良くしていける記事、活動につなげたいと考えています。

まだまだ未熟で思い至らず今回のようなことがあり恐縮ですが、どうぞ今後ともご指導いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。


熊田梨恵

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