食べ物が原因のじんましん、アレルギー? 食中毒?

投稿者: | 投稿日時: 2017年06月17日 06:49

何かを食べたら蕁麻疹が出た、という時、とっさに「アレルギーかしら?」と考える人は少なくないかと思います。でも、そうとは限らないようです。むしろ食中毒の可能性が高いかも・・・。だとしたら、この時期は用心が必要ですね。その仕組みと対策をまとめ、自分の失敗を振り返ります。


膨らみと赤み、かゆみの原因は、「ヒスタミン」

じんましん(蕁麻疹)は、皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり、かゆみを伴いますが、しばらくすると跡形もなく消えてしまう皮膚症状です。盛り上がった部分は周囲から一段高くなった状態で、境目が比較的はっきりしています。1つ1つは数十分から数時間以内に消えるのが普通ですが、中には半日から1日くらいまで続くものもあり、症状が激しい場合には次々と現れて島のようにつながり、体を覆うように広がってしまうこともあります。


じんましんが赤く見えるのは、その皮膚の下で、小さな血管が一時的に拡張していて、血液が透けて見えるため。拡張した血管からは、血液の中の液体成分(白血球や赤血球などの細胞成分を除いた部分、血漿)が周囲に滲み出るので、皮膚の一部が盛り上がります。


急激に全身にじんましんが現れた場合、原因ははっきりしないことが多いのですが、食べ物が原因のことは多いようです。ただ、食べ物が原因の場合でも、アレルギー性の場合と、非アレルギー性の場合があるようです。


ただ、いずれの場合も、この現象を引き起こす正体は、ヒスタミンと呼ばれる物質です。


アレルギー性の場合、皮膚の血管の周りの組織に散らばっている「マスト細胞」と呼ばれる血球系の細胞の関与が分かっています。中に詰まった顆粒にヒスタミンが含まれているのです。アレルゲンとなる食物が侵入し、アレルギー特有の経路(代表的なのは、マスト細胞表面の受容体と結合したIgE抗体にアレルゲンが取り付き、認識されること)によって、マスト細胞のスイッチがONになると、顆粒が放出され、ヒスタミンに血管が反応して蕁麻疹を生じます。ヒスタミンはかゆみを司る神経も刺激します。


食中毒の一種かも!


一方、非アレルギー性の場合、マスト細胞云々と言うよりも、食品中に含まれるヒスタミン様物質が直接血管に働いたり、あるいは抗原以外にヒスタミンを放出させやすい成分が含まれていることによって起こるようです。そうしたじんましんを起こしやすい食品としては、青魚や肉類の他、チーズなどの乳製品、大豆製品があります。また、干物や発酵食品、加工肉などにも多く含まれます。


要するに、特定の食品に対する体質の問題と言うより、ヒスタミンが高濃度で蓄積した食品の方に問題がある、ということ。つまり「食中毒」なのです。


ヒスタミンによる食中毒は、厚生労働省の食中毒統計では、「化学物質による食中毒」として分類されています。


また農林水産省の報告では、「ヒスタミン中毒は、症状が比較的軽く、短時間で治ってしまう場合が多いことから、家庭内で発生した場合などは、届け出がなされない場合も多いと推定される」としています。


実は、近年では、ヒスタミンが食品中でどのように生成されるかが、かなり明らかになっています。ヒスタミンは、食品中に含まれるヒスチジン(タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一種)に、ヒスタミンを産生する細菌の酵素が作用することで作られます。


特にマグロやサンマ、ブリ、アジ、カツオなどの青魚は、筋肉中にアミノ酸の一種であるヒスチジンを多く含んでいるため、魚を室温で放置しているとヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンが大量に作られてしまうのです。この時、魚の腐敗の指標となるアンモニアなどの生成がまだ少ないうちに、ヒスタミンは大量に産生されることがあり、気づきにくい、という落とし穴があります。しかもヒスタミンは熱に強く、また調理加工の過程で除去できないため、一度生成されると食中毒を防ぐことはできません。「増やさない」対策あるのみ、なのです。


つまり、魚は死んだ瞬間からの温度管理が重要ですから、信頼できるお店で新鮮な魚購入すること、そして冷たい状態で持ち帰り、速やかに冷蔵庫にしまうよう心掛けましょう。肉に関しても注意点はほぼ同じです。


私の失敗談~症状を悪化させた?意外なもの


さて、このヒスタミン中毒、同じものを食べても症状が出ない人もたくさんいる、という状況も珍しくありません。同じ人でも、その日の体調などにより症状が出たり出なかったりします。食べ方や量、消化管からの吸収のされ方などに大きく影響を受けることが多いため、皮膚や血液を用いた検査では原因を明らかにすることができないそうです。ただ、食物によるじんましんは、特定の食物を食べた時にのみ症状が出現することが多いので、たいていはある程度、原因食物を予想することができます。「そういえば昨日の夜、サバの押寿司を食べたな」といった具合です。


正直な話、私もヒスタミン中毒と思しき症状に見舞われたことが数回あります。多くはやはり青魚が原因と思われますが、前回ひどい目にあった時については、おそらく冷凍しておいたイカの一夜干しのせいだろうと見ています。別に古くはなかったものの、後から振り返ると、症状が出た数日前に、冷凍庫が微妙に空いたままになっているのを発見したことがありました。慌てて締めたのですが、今から思えば、既に溶けかかっていた食品もあったのだろうと思います。もっと中身の状態をよく確認すべきだったと思います。きっとイカもいったん解凍しかけて、再凍結したに違いありません。


最初は虫刺され、ダニでも発生してしまったのか、と思いました。体の数カ所がかゆくなり、見ると赤い1~2cmほどの膨らみが、それぞれの箇所に集中して複数個ずつできていました。しかし、その後も発疹は増えていき、体調も思わしくなくなりました。吐き気と言うほどではないのですが、なんとなく気分が優れず、ぐったりしてきたのです。しかしまだじんましんとの自覚は薄いままでした。


私の場合、この段階ですでに、症状を悪化させる失敗行動をいくつか重ねていました。前の晩にイカの一夜干しを食べた翌朝、外出先のコンビニで、初めて見る「イカチップ」なるものを購入し、食べていました。イカをごく薄くスライスして甘辛く味付けし、カチカチに干して、1~2cm四方のチップにカットしたものです。普段そのようなお菓子(?)はめったに買わないのですが、なぜかその日に限って手を伸ばし、空腹に任せてつまんだのです。イカ自体、普段はそれほど食べないのに、こういう時は重なるのですね。


さらに、その後いったん快方に向かい、ほぼ回復したと思った段階で、安心して色々なものを、あまり深く考えずに食べてしまいました。お刺身や納豆なども食べたように思います。するとまたしばらくして、今度はもっとひどい発疹に見舞われてしまったのです。


調べると、味噌や醤油なども発酵食品ですし、ヒスタミンを含む食品は意外に多くて、特に私が普段好んで食べるものがことごとくダメなようでした。さすがに「ヒスタミン中毒だな」と気付くのですが、食べてしまったものはどうしようもありません。その後は、お米くらいしか食べられないような気がして、なんだか色々食べるのが怖く、仕方がないので一時スポーツドリンクばかり飲んでいたのです。食欲もなくなり、血中濃度を薄めれば症状が軽くなるのでは、と思ったためでもあります。ところが、実は、追い打ちをかけたのが、スポーツドリンクだったのかもしれません。


というのも、スポーツドリンクの原材料のところをふと見ると、「ヒスチジン」と書いてあったのです。アミノ酸が豊富に入っていることが売りのスポーツドリンクだったんですね。よくよくしまった、と思いましたが、500mlを飲み干した後でした。よくよく確認すれば、ヒスチジンはアミノ酸。入っていて不思議はなかったのです。部屋に何時間もペットボトルを出しておいて、ちびちび飲んでいたのが衛生的に良くなかったのかな、とも反省していますが、ただ、これについては因果関係は分かりません。


それからなんとか受診し、抗ヒスタミン薬をもらいましたが、すぐに症状が改善した感じは得られませんでした。よくよく考えてみると、抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンと拮抗する成分によって症状が出ないようにブロックしようというものです。確かにそれで症状の出方としては改善するのかもしれませんが、体内のヒスタミンそのものを消す作用があるわけではないのです。結局は、ヒスタミン分解酵素によって代謝されていくのを待つしかありません。


というわけで、私の場合、ヒスタミン中毒によるじんましんが消えるまでには、一晩以上かかりました。衣類のこすれや締め付けで症状が悪化するので、できるだけゆるっとした短パンとタンクトップ姿で、胸も苦しくて落ち着かず、怖くてかえって寝られず、一晩中部屋の中をうろうろ歩き回ったり、座ったり、ソファに横になってみたりしながら、ただただ時間の経過を待っていたのです。


私の対応は、知らなかったとはいえ、明らかに失敗だったと思っています。ヒスタミン中毒と思われる場合は、早めに、つまり症状が悪化する手前で受診して、一刻も早く薬を飲み、そして食べ物には気を付けましょう。ヒスチジンを多く含む食品や、食品中のヒスチジンの量は、文科省の食品成分データベースで簡単に調べることができます。新鮮でなかったり、保存の環境が悪かった場合は、ヒスタミン摂取の可能性が高まります。


私のオススメは、鶏肉と野菜、きのこ類(ヒスタミンやヒスチジンは少ないので)を使った簡単なお粥。お鍋に昆布と水を入れて火にかけ、沸騰したら昆布を出して具材と無添加のスープ顆粒を入れて火を通し、それからご飯を入れて柔らかくなるまで弱火で放っておきます。ご飯の硬さを見て火を止めたら、塩コショウで味を調え、最後に数滴ゴマ油をたらしたら完成です! 


実は先日、長男にヒスタミン中毒と思しき蕁麻疹が出て、適当に作った食事だったのですが、なかなか食べやすかったようです。早めの受診もよかったのか、ひどくなりかけた程度で済み、数時間でじんましんは消えました。ちなみに次男はその前日から長男とほぼ同じ食事を摂っていたにも関わらず、まったく症状は出ませんでした。疲れていたりすると、やはり出やすいのかもしれませんね。


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