病児保育の思わぬ落とし穴、「別のクリニックに行ってください」 |
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投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2017年07月25日 09:34 |
先日病児保育を使おうとして、定員外いっぱいで入れないのではなく、部屋数の問題で入れなかったという話を書いた。
親として万全の体制を敷いていてもそういうことがあるのでは、どうしたものかと思う。
今も国内で手足口病が大流行しているので、いざという時のためにシミュレーションしておかなければと思いながら過ごしている。
今回は、病児保育を利用しようとしたけど医療機関を回され、処置も色々あり、午後になってようやく預けられたという話。
前回の2,3日後、私と夫が仕事や復職準備等で息子の面倒を見られない日があった。
まだ熱があるので、保育園は無理だろうと判断。
夫婦で話し合い、再度病児保育を使おうということになった。
息子の症状は変わらず、鼻水に続いて夜中によく咳をするようになり、下痢が出てきていた。
私自身は夜中に続く息子の咳であまり眠れなくなり、睡眠不足で体調がキツくなってきていた。
前回耳鼻科を受診した時に「症状がひどくなるようならまた来てください」と言われていたので、今回も耳鼻科で診てもらって病児保育用の医師連絡票を書いてもらおうと思っていた。
前日のうちに耳鼻科を予約し、病児保育の申込書も書き、おむつや着替えなどの持ち物もきっちり用意した。
また朝一で受診して、午前中に病児保育に預けるつもりだった。
当日、朝一番でクリニックに入り、受付に診察券を出した。
ここまでは万全だった。
受付の看護師に症状を尋ねられたので「前回の鼻水と熱が続いていて、夜中の咳がひどくなり、下痢が出てきました」と伝えた。
この辺りから雲行きが怪しくなってきた。
看護師たちが中で何やら話し合っていて、しばらくすると
「申し訳ないのですが、下痢などの内科的な症状が出ているので小児科に行ってもらえませんか」
と言われた。
「えっ」
私はその瞬間、今から小児科に受付し、受診して医師連絡票を書いてもらって…と考え、そうなると病児保育に預けられるのは午後ぐらいになるのでは…と思いを巡らせていた。
「耳や鼻のことでしたら耳鼻科ですけど、内科的な症状が出ているんだったら小児科の方がねえ」
と、看護師は私の訴える内容では診られないという理由を色々と付け加えてきた。
私は、「でも先生が『症状がひどくなったらまた来てください』と言ったので来たんですけど」と言いたくなったが、そんなこと言っても、こちらの分が悪いのは目に見えているし、問答していても時間の無駄なので
「はあ、分かりました」
と言って息子を抱いて受付を出るしかなかった。
クリニックの玄関を出てから、はーーーー、と大きなため息をついた。
万全に用意しても、こういうことがあるのか。
私が落ち込んだのには理由があった。かかりつけの小児科はその耳鼻科から車で30分かかる上、とにかくいつも混み合っているのだ。その耳鼻科を出た9時に移動して、9時半過ぎに着いて受付しても、診察してもらえるのは11時過ぎぐらいになるだろうと思ったからだ。薬局などに行っていたら、預けられるのは午後になる。午前中は完全につぶれるだろう。
それでも、行くしかない。
病児保育もあるが、息子も日増しに調子が悪くなっている。
そして移動し、受付をするとやはり11時ごろの受診になると言われた。
仕方ないので車でドライブして時間をつぶした。
自分一人ならこういう空き時間は何をしようかと考えて楽しくなるが、調子の悪い息子を抱えているのでは、子育てサロンなどに遊びにも行けないし、機嫌が悪いので扱いづらい。車の中でじっとしていても不機嫌が増すだけなのでドライブしかない。
そして11時過ぎにクリニックから電話があり、もうすぐ受診になると言われ、戻った。
私たち親子と他には2,3組ぐらいしかいなかった。
だいぶ最後の方だったようで、診察室に入ったのは11時半ぐらいだった。
医師にこれまでの経過を伝えると、検査をすることになった。
結果、RSウィルスによる喘息性気管支炎と胃腸炎ということだった。
このウィルスは喘息の原因にもなるようで、夜中のひどい咳はこのせいだった。
息子は気管支の調子があまりよくないようで、内服薬のほかに、(「重装備のケアになりますが」と前置きされて)家で朝晩ステロイドの吸入をすることになった。吸入器はクリニックから1日100円での貸し出しだった。
さらに食事をとれなくなっていることや炎症が出ているということから、息子にとって人生初の点滴をしようということになった。
当時息子は1歳7か月ぐらい。
1歳児に点滴ってどうやるんだろう・・・針を差そうとしても泣いて暴れてできないのではと思っていた。
「お母さんはこちらでお待ちください」と看護師に言われ、私は先に診察室を出た。
私と離されて息子は「ぎゃー」と大泣き。その泣き声がずっと聞こえていた。
しばらくして、左手の甲に点滴の針を刺されてテープで巻かれて固定された息子が看護師に抱かれ、点滴をぶら下げた点滴棒と共に現れた。
この時の光景は今でも忘れられない。
点滴をされ、左手を固定され、そこからチューブが出ていて隣の棒につながっているということに不思議や違和感があるのだろう息子のなんとも言えない複雑な表情。
テープで固定された点滴針の上には、可愛い車のシールが貼ってあった。
「点滴の間、お母さんが抱いていてください」と息子を渡された。
「あっ、はい」
と受け取る。
渡されたのはいいが、一体これはどうしたらいいんだ。抱いていてくださいって。この点滴、1時間以上かかりそうだけどその間ずっとじっとしたまま立って抱っこしているってことか。だって下ろしたら動き回って点滴外れるもんな。
「えっと、すみません、これずっと点滴の間中抱っこしているということですか」
と困惑していると
「はい、点滴の間処置室に寝かされるとお子さんも不安になられますので、これぐらいのお子さんにはお母さんに抱っこしてもらっています」
はい、それはごもっともですし、よく分かってますよ。私が抱っこするというのは別にいいんです。でもね、うちの子11キロあるんですけど、ずっとこうやって抱っこし続けるんでしょうか。1時間以上。座って抱っこは嫌がるんです、この子。
と言いたくなったが、もちろん言わなかった。そんなこと言ったって、私以外に抱っこする人は誰もいない。
5分ぐらいしていると腕が痛くなってきたので、椅子に座ったが、ただでさえ機嫌の悪い息子は泣いて嫌がった。
はい、立って抱っこじゃないと嫌なのよね。
でも、つらい。私も睡眠不足で体調不良だ。
おまけにこの時期の私はようやく外出したり、家事をしたりできるようになったぐらいの時期で、まだまだ病弱だった。
そんなに長時間の抱っこは持たない。
だんだん、頭がクラクラしてきて、目の前がぼーっとしてきた。
ヤバい。
そう思って椅子に座ると、息子が泣く。
息子にしても、ただでさえ体調が悪くてつらいのに、生まれて初めて点滴などというものをされ、よく分からないものが手にくっついているし、離せないし、自由に身動きできなくてとてもつらそうだった。嫌がって何度もチューブを引っ張って腕から取ってしまおうとしていたが、そのたびに私が押さえるので、なおさら嫌がった。
私でもこんなの嫌だもん、この子にとったら不快でしょうがないよな。
そう息子の気持ちを察するのだが、自分もとにかくつらかった。
ヤバいな、倒れそうだなと思ったときに、思い立って夫にLINEして来てほしいと頼んだ。
車の中で待っていてくれた夫が来てくれ、抱っこ要員になってもらったのだが、息子は私の抱っこでないと嫌がった。
夫に抱っこ紐を車から取ってきてもらい、結局1時間以上、立って抱っこした。
物凄く、疲れた。
他のお母さんたちは、こうやって点滴の間中ずっと抱っこしているんだろうか?
点滴が終わって針やチューブを取ってもらい、処方箋と医師連絡票を受け取ってクリニックを出た。
薬をもらって薬局を出たら、もう1時を過ぎていた。
私は疲れ切っていて、もう病児保育も何もどうでもよかった。クタクタで、ただ休みたかった。
面倒くさくなって、私は「もうこのまま家に帰ろうか。もう午後だし、これから預けてもすぐ迎えだし」と夫に言った。
そんなふうに判断力をなくしている私を見て、夫が「このままだと母ちゃんも光汰(息子の名前)も共倒れになる。母ちゃんが休むために半日でもいいから病児保育を使おう」と言って、病児保育に向かってくれた。
初めての病児保育に預けられ、息子は案の定「ぎゃー」と泣いていたが、私は息子と離れることができてはーっと大きくため息をついていた。
家に着いたら2時を過ぎていた。病児保育の迎えは6時なので、休めるのは4時間だったが、私にとっては宝物のような4時間になった。
まず4日間風呂に入っていなかった(子どもの看病で疲れ過ぎて風呂に入る余裕がなかった)ので、風呂にゆっくり浸かった。
これがとても効果的で、気持ちが一気にリフレッシュした。
眠くて疲れているはずだったが、急いでやらないといけないこと、重要なことなどタスクを整理しようという気がムクムクと湧いてきて、実際にやったら頭の中が整理されてすごく楽になった。
そして、少しだけ寝た。
体を綺麗にして、頭を整理して、少し睡眠。
これだけで、生まれ変わったようにリフレッシュしたことを今でもよく覚えている。
その晩は、いつもより優しく息子に接することができたし、看病もよくできた。
(初めてのステロイド吸入はなかなか苦労したが)
結局予定していた用事ははできなかったが、自分自身を休めることができた。
病児保育を使おうと思ってもこんな風に次から次へと色々起こって、うまくいかないこともあるのだとこの時に学んだ気がしている。
思っているようには動けないと、息子が生まれてからいつも思っているが、病気の時は特にそうだと思う。自分も看病で疲れるからなおさらかもしれないのだが。
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