熱中症対策のスポーツ飲料、どこで選ぶ?

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2017年08月16日 21:55


熱中症対策にはスポーツ飲料、というのはもはや常識ですね。ただ、スポーツ飲料と一口に言っても、各社から様々な製品が出されています。どれも一緒だろう、と思いがちですが、本当にそうでしょうか? 気になったので身の回りの各社スポーツ飲料の違いを調べてみました。

ナトリウム量はどれもほぼ一緒


そもそも「スポーツ飲料」あるいは「スポーツドリンク」とは、「運動時の水分補給に適するように浸透圧を体液に近づけた飲料水」(大辞林 第三版)のことを言います。


浸透圧」というのは、「濃度の異なった2種類の液体を隣り合わせに置くと、お互いに同じ濃度になろうとする力」のこと。浸透圧の強さは水中に存在する粒子の数に比例する・・・というものなのですが、やはり小難しいですよね。スポーツ飲料で言えば溶け込んでいる物質の“濃さ”、あるいはそれによる飲料のサラサラ、ドロドロの程度を、体液と同じくらいにしてある、と理解してください。


と言うのも、喉がかわいたからと牛乳や100%果汁ジュースなど‟濃い“(厳密には「浸透圧が高い」)飲み物だと、飲んでもかえって喉が渇いてしまうことがありますよね。飲んだものが‟濃い”と、それを薄めようと水分が持っていかれてしまうからです。スポーツ飲料はそうならないように、濃さ(浸透圧)を体液と同程度に調整することで、体に吸収されやすいように作ってある、ということです。


また、ただの水だと、吸収は速やか(「浸透圧が低い」ので)ですが、汗と共に失われるナトリウム(塩分)を始めとしたミネラルが補給できません。大量の発汗時に、大量の水を摂取することで、低ナトリウム血症を引き起こす危険があります。スポーツ時には速やかな水分とミネラル補給が大事になるため、特にスポーツ時に飲むことを想定して作られているので「スポーツ飲料」と呼ばれるわけです。


さて、今回は私がよく利用するスーパーマーケットやドラッグストアで扱い、実際に飲んだことのある商品を列挙して、その成分を調べました。対象は500mlもしくは2000mlペットボトル入り、順不同です。今回は特に熱中症対策として飲む場合のことを念頭に置いているので、ナトリウム量も併せて書き出してみました。なお、原材料名は製品ホームページ引用、PRは抜粋です。


●アクエリアス(日本コカ・コーラ)
原材料名:果糖ぶどう糖液糖、塩化Na/クエン酸、香料、クエン酸Na、アルギニン、塩化K、硫酸Mg、乳酸Ca、酸化防止剤(ビタミンC)、甘味料(スクラロース)、イソロイシン、バリン、ロイシン
・100mlあたりナトリウム量:39~40mg(食塩相当量0.1gから換算)
商品説明・PR:スッキリ飲みやすい後味、しかもカロリーオフ。汗で失われるミネラルをはじめ、アミノ酸、クエン酸を配合。すみずみまで浸透。


●ポカリスエット(大塚製薬)
原材料名:砂糖、果糖ぶどう糖液糖、果汁、食塩、酸味料、香料、塩化K、乳酸Ca、調味料(アミノ酸)、塩化Mg、酸化防止剤(ビタミンC)
・100mlあたりナトリウム量:49㎎
商品説明・PR:適切な濃度と体液に近い組成の電解質溶液のため、すばやく吸収。発汗状態におかれている方に最も適した飲料。


●グリーンダ・カ・ラ(サントリー食品インターナショナル)
原材料名:果汁(グレープフルーツ、レモン)、果糖、食塩、はちみつ、シークワーサーピール、うんしゅうみかん、ドライトマトエキス、香料
・100mlあたりナトリウム量:40㎎
商品説明・PR:果実のおいしさでやさしく水分補給! 熱中症対策! ナトリウム40㎎/100ml。


●キリン ラブズ スポーツ(キリンビバレッジ)
原材料名:果糖ぶどう糖液糖、食塩、シトルリン/クエン酸、香料、クエン酸Na、乳酸Ca、ピロリン酸鉄、アルギニン、グルコン酸Ca、塩化K、塩化Mg、甘味料(アセスルファムK、スクラロース)
・100mlあたりナトリウム量:50㎎
商品説明・PR:協和発酵バイオとの共同開発、必須ミネラル+シトルリン・アルギニン配合。すばやくスポーツモードへ。


●スッキリ飲みやすい スポーツドリンク(イオントップバリュ)
原材料名:果糖ぶどう糖液糖、食塩、酸味料、香料、甘味料(アセスルファムK)、塩化K、塩化Mg、酸化防止剤(ビタミンC)、乳酸Ca
・100mlあたりナトリウム量:41㎎
商品説明・PR: 発汗後の水分補給に。国内の複数の工場で作っています。


こうしてみると、やはり想像通り、ナトリウム量はいずれも厚労省の示す基準(0.1~0.2%の食塩水、または、ナトリウム40~80mg/100mlのスポーツドリンク・経口補水液など)を満たすよう作られていますね。その点では、どの商品を選んでも同じと言えます。


チェック1:‟甘味“を何で付けているか


それを踏まえて、あえてどれを選ぶか考える場合、まず私が気になったのは、「甘み」の元です。


ざっと見ると、使われているのは

・砂糖
・果糖
・果糖ぶどう糖液糖
・甘味料(アセスルファムK、スクラロース)

であることが分かります。


特に気になるのは、「異性化糖」とも呼ばれる果糖ブドウ糖液糖と、人工甘味料です。


異性化糖の問題は、すでにロハス・メディカルや、ロバストヘルスなどで大西医師がたびたび指摘してきた通りです。

天然の甘味料も その特性は様々

"異性化糖"が2型糖尿病を引き起こす

果糖が強く結ぶ? 異性化糖と糖尿病


また、人工甘味料としてちょっと気がかりなのは、アセスルファムK。


甘さは砂糖の約200倍で、耐酸性や耐熱性等に優れ安定性の高い物質とされています。扱やすく甘味が強いので、安価に使用できるため、メーカーにとってはとても使いやすい甘味料となっているようで、今やアスパルテームよりも頻繁に見かけます。もちろん安全性の試験なども行われ、使用料の基準が定められているので、それに従って使用されているわけですが、公表されている文書の中で、ラットの実験報告として急性中毒による死亡、母乳への移行、血清GPTの増加、リンパ球の減少なども指摘されています。それでも使用量を守る限り安全と言われますが、やはり自然の物とは訳が違うこと、つまり砂糖など人類が経験的に安全性を確かめてきたものではなくいまだ不明な点が多分にある人工物である、ということは、念頭に置いておきたいと思います。


なお、砂糖や果糖でも、糖分の摂り過ぎが問題になることは一緒です。ですからいずれにしてもエネルギーをさして消費しない時にスポーツ飲料を飲む場合、飲み過ぎないように注意が必要。もっと言えば、例えば家にいるのなら、熱中症回避のためにナトリウムを摂るのにスポーツ飲料を摂る必要性はなく、お茶に梅干しだってよいのです。まして、そもそも塩分摂り過ぎが心配な食事内容の人なら、急激に大量に汗をかくような場合以外は、お茶だけでもよさそうです(ロハス・メディカル2017年8月号「健康情報しらべ隊」も参照してくださいね)。


チェック2:「酸味料」もやっぱり気になる・・・

先ほど列挙したものを見ると、スポーツ飲料でも酸味料の使われているものがあるのですね。「酸味料」の実体が、リン酸であることが多いこと、リンを過剰に摂取すると腎臓や血管を傷めることも、ロハス・メディカルで特集を組み、大西医師ほか各種の連載でも取り上げてきた通りです。

控えようリン酸塩 摂ろうマグネシウム

米国には科学情報 いっぱいあるのです

動脈硬化の共犯 リン酸カルシウム

リン排泄役の腎臓 リンで傷む悪循環

リン酸探検隊 加工食品は老化を早める?

リン酸探検隊 清涼飲料水


上記記事や関連する連載から、ポイントをざっくりおさらいしておきます。


●成人の1日に必要なリン摂取量は約1000mg。厚労省の調査では、この値にほぼ近い数字が示されているものの、それは有機リンの量。有機リンの吸収率は半分程度と見られるのに対し、無機リン酸はほぼ100%吸収される。つまり無機リンの分だけ摂取過剰になっていると思われる。


●無機リン酸は、食品添加物として加工食品、ファストフード、インスタント食品、調味料、清涼飲料水や菓子などに用いられている。具体的には、ハムやソーセージなどの食肉加工品で保存性と食感を良くするための結着剤として、中華麺などにはコシや風味を作り出すかんすいとして、リン酸塩が使用されている。また清涼飲料水には防腐目的も兼ね、酸味料としてリン酸が多く用いられている。


●高リン酸が老化を促す。クロトー(Klotoh)という遺伝子の欠損したマウスは、血中のリン酸値が非常に高く、しかも短命で、皮膚、性殖器や筋肉の萎縮、大動脈の石灰化など、早くから老化現象が起きる。遺伝子操作や食事療法によりリン酸値を正常化させると老化現象のほとんどが改善し、高リン酸の食事を与えると再び老化現象が起きた。


●リンの何がいけないのかを調べたところ、リンそのものでなく、リンを過剰に摂取すると、血中でリン酸とタンパク質が結びついてCPPという物質ができることが判明。このCPPが血管を石灰化(=動脈硬化)させる。石灰化した血管は弾力を失って脆くなる。


●リンが過剰だと、リン排泄役の腎臓でもCPPが出来てしまい、腎臓の血管を傷めて機能を失わせる悪循環が生じる。


スポーツ飲料の「酸味料」はリン酸であろうと思われます。メーカーによっては商品の成分をホームページで公開しているので、もし原材料名に「酸味料」とあって気になった場合は、試しにチェックしてみるといいかもしれませんね。


というわけで、熱中症予防と言う観点でナトリウム量に注目すると大差ないスポーツ飲料ですが、もう少しこだわってみると、売りとなっている部分でも、気がかりな部分でも、違いがあることが分かります。ただ、いずれにしても、スポーツ飲料を水やお茶の代わりに飲む、というのは控えたほうがよさそうです。状況を考えずに大量に飲めば、減塩や糖質を控える日々の努力を打ち消してしまいかねません。

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