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ニュース〜医療の今がわかる

臨床研修検討会1

舛添大臣の言葉に会場から何回か笑いが起きた。鈴木大臣が退席し、事務局が座長と座長代理を指名。ビジョン具体化検討会に引き続き高久座長と小川座長代理のコンビに。

大熊
「(導入部よく聞き取れず)研修制度が地域の医師不足を招いているとの説に関しては信憑性があるか疑わしいと思っている。千葉県でも8つの県立病院の15人の枠に35人の応募がある。一生懸命きちんとやれば若い医者は集まるということだろう。もちろん、指導医がそれぞれに頑張って資格を取ったということ、それから研修指定医療機関になって県から3億円の分配があったこと、若い医師を対象に九十九里で合宿をして、そこに地域の人たちも加わってぜひ私たちの地域へと呼びかけたこと、いろいろいい動きがあったと見たり聞いたりしている。千葉県は東京に近いじゃないかというかもしれないが、亀田総合病院などはまさに辺鄙な所にあるけれど全国から押すな押すなになっている。すぐれた指導者とプログラムのある所に研修医は集まるのであって、そういう努力をきちんとやっているところは実績が上がっている。それから私は、『志のネットワーク』という志が高いなあと思う医療者30人くらいとネットワークを作っているのだけれど、その人たちに金曜日に呼びかけたら40通くらいメールが来た。大半が、現在の臨床研修制度を後退させるのは時代に逆行しているとの意見だった」

福井
「この委員会の議論がどのような方向性なのか知らないが、いくつか申し上げたい。医師不足への対応ということだが、まず医師がどのように不足しているのかの実態データをお示しいただきたい、診療科についても、どの専門家の医師が何人足りないのかデータを示したいただきたい。データを見れば単に開業医と勤務医とのバランスが悪いだけかもしれないし、やはり科による偏在なのかもしれない。データがなければエビデンスがなければ科学的な議論にならないので、皆で頑張ってデータを出して、それをたたき台に議論したい。臨床研修制度の目的というのは実は達成されつつあると思う。幅広い見識を持つことと経験症例数を増やすことが最大の眼目だったわけだから、それは達成しつつある。医師不足に一見見える、その最後の一撃には確かになったかもしれないけれど、最大の原因と捉えるのはデータ不足でないか。たしかに大学へ残る研修医は少なくなったが、そもそも大学は優れた臨床を行っている病院を見本にして追いつこうと努力したのか、そういう所があるなら知りたい。大学にはミッションが4つある。研究、臨床、学部教育、卒後教育で、卒後研修は大学にとって4分の1の重みしかない。私たちのいるような病院は臨床と卒後教育の2つがミッション。そこに最大のエネルギーを注いで闘えば、私たちの方がクオリティが高くなるのは構造的な必然。欧米のように大学に潤沢な教官を抱えて置けるような診療報酬体系にはなっていない。そこにメスを入れることも必要でないか。今のままでは教育も研究も中途半端な大学にしかならず、欧米の一流国と伍して戦うことはできない。表面的な医師不足の問題にとどまらず、根本的なところまで議論してほしい」

嘉山
「臨床研修が始まる時に当時は病院長だったが、副大臣に呼ばれて、導入したらどうなるか尋ねられた。日本の地域医療は崩壊して田舎から医者はいなくなるし、科の偏在も起きる、そういうパンドラの箱だと言ったけれど開けてしまった。医局制度というのは色々悪いところも言われているけれど、しかし新聞社のデスク制のようなもので、チーム医療をやる上では必要なものだった。新聞社だって、全員フリーで何を取材しても良いということにしたら成り立たないはず。そういう話はどこの世界にもある。一方で臨床研修制度に確かにいい面もあったとは思う。全体的に悪いとは言っていない。ただ、それを踏まえてもっと良い制度にしようというスタンスでこの委員会は集まっているんだろう。福井先生はエビデンスと仰ったけれど、対OECD比較で医師数が少ないのは明白なエビデンスだ」

能瀬
「大学の話が出てきたので一言。まず、この委員会は二つの省が合同ということで、そこはいいなと思った。文部科学省も巻き込んでもらえれば大学として話をしやすくなった。医学部定員の抑制が続いてきて、突然今日になって急に増やせということなんだが、この時期、大学は骨太2008で人件費を減らされている。医学部だけ定員を増やしているが、その教官をどうするのかが課せられた問題だ。ただまあ、この委員会でやるべきは質とか量とか個別論よりも枠組みの話だろう。医師の教育をするところと実践するところが分かれていたのがやりにくかったので、そこがうまく連携できたらいいなあと思う」

永井
「地域の病院代表として言いたい。この話には、国民の理解・共感がないといけない。国民の共感があってこそ医師も自信と誇りを持っていられるので、それが大前提。となると、まず考えなければならないのは、どのような医師を国民が望んでいるのか、そしてどのような医療体制を望んでいるのか。地域医療はひょっとすると崩壊しつつあるのかもしれない。総務省も公立病院の健全化を進めており、ある意味選択と集中が進んでいる。研修というのはon the jobがほとんどだから、地域を巻き込んだ形でプログラムを作れなければ、ますます都市へ集中するんでないか」

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