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「看護学教育と指定規則は合わない」―大学の看護人材の養成検討会

あいさつする文科省の戸谷一夫・大臣官房審議官.jpg 「保健師」「助産師」「看護師」という異なる役割を担う看護職をどのように養成していくべきか―。3職種の教育を併せて行う看護系大学の「統合カリキュラム」の見直しや、「モデル・コア・カリキュラム」の導入、看護学教育の質の保証などについて話し合うため、文部科学省は3月31日、「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会」の初会合を開催した。(新井裕充)

 同日は、「統合カリキュラム」の見直しを中心に議論を進めたが、委員からは「指定規則がそのままではモデル・コア・カリキュラムをつくれない」「必要な看護学教育と指定規則は合わない」など、看護師養成所がクリアすべき基準を定めた現在の「指定規則」を維持したままで独自性あるカリキュラムを打ち出せるかを懸念する意見が相次いだ。

 近年、看護職に求められる役割は、高齢化の急速な進展や医療技術の進歩などを背景に増大し、多様化している。深刻化する医師不足や、地域の在宅医療を支える看護職への期待が高まる一方、医療の高度化に伴う看護の専門性が求められている。

 こうした中、保健師、助産師、看護師の教育をめぐっては、養成所の指定基準を定めた「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」(指定規則)が昨年1月に改正された。単位数を増加するなど、看護実践能力の向上を狙った新カリキュラムは、今年の入学生から適用される。

 開会のあいさつで、文科省の戸谷一夫・大臣官房審議官(高等教育担当)は、「看護学教育の充実、改善については、平成20年の指定規則の改正に向け、各大学でカリキュラムの改正、あるいは実習体制の充実に取り組んでいただいた」と評価した。
 一方、3職種の免許取得に必要なカリキュラムに関連して、「近年、看護系大学数や入学定員が増加する中、教員の確保や実習施設の不足など、いろいろな問題が出てきている。また、医療の高度化に対応して、学士課程における看護学教育の充実、強化についても、多方面から強く唱えられている」と指摘。その上で、「このような状況の変化を踏まえ、文部科学省としても、大学における看護系人材養成の在り方、あるいは教育の質の保証などについても検討をお願いしたいということで、今回の検討会を開催した。看護学教育の改善、充実についていろいろ議論していただき、施策に生かしたい」と期待を込めた。

 座長に就任した中山洋子氏(福島県立医科大看護学部長)も、指定規則の改正に向けた検討を振り返り、「大学の独自性を出した教育をどのような形で行い、また、どのように質を保証していくのかということについて多くの提言が出された。大学では現在、保健師、助産師、看護師の教育を併せて行うというカリキュラムだが、このことがさまざまな形で行き詰まっていて、これが今回の検討会の大きな課題ではないか」として、統合カリキュラムを見直す必要性を指摘した。
 その上で、「とにかく、大学教育の質をどのようにしていくのか、専門職としての保健師、助産師、看護師をどのような形で養成していくのか。資格の問題も含めて、何か良い提案ができればと思っている。一つでも、何か具体的に実行できて、前進できるような形の提案ができればいい。あまり大きなことではなくていいので、小さなことでも、この検討会の"実り"を目に見える形にできればいいと思っている」と抱負を述べた。

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