「看護学教育と指定規則は合わない」―大学の看護人材の養成検討会
【中山座長】
今、保健師教育と助産師教育(と看護師教育)の3つをはめ込んだ教育に少し無理が生じているというご意見がありました。これに関連して、「基礎免許」という問題があります。大学全部が免許で縛られるという形ではなく、大学の独自性を出しながら、3つの資格の基礎となるような教育は大学がするんだという意見もあると思いますが、その辺の議論で、宮﨑委員のところはいかがでしょうか。
【宮﨑美砂子委員(千葉大看護学部教授) 】
(千葉大は)長らく、統合化されたカリキュラムを推進してきた大学でもありますし、私自身は保健師教育を専門にやっております。私が最近考えておりますことは、やはり「大学における」という、その、今回の検討会も「大学における」という冠(かんむり)が付いてますので、やっぱり大学における看護系の人材養成の、その学士課程としての到達レベル、それから教育というものをどう考えるかと言ったときに、専門職でありますから「プロフェッショナル」ではあるとは思うんですが、特別な領域に特化した「スペシャリスト」の養成とはちょっと違うのかなと。やはり、大学院教育とは分けて考えていく必要があるだろう。
そういう点から考えると、特に保健師教育を担当している立場から考えますと、保健師という職業は、広く人々の健康相談に乗っていく、あるいは健康教育をしていく、それから、健康づくりを応援していくという立場ですから、今、保健師という職業に力点が置かれて教育されている側面は大きいんですけれども、看護職全体がですね、統合した力を蓄えていくという側面が極めて大きくて、基礎的なところはむしろ学士教育の中で、統合的なカリキュラムの中でしっかりやっていくべき側面が大きいのではないかと思っています。また追加で発言すると思いますが、とりあえず。
【中山座長】
ありがとうございました。この辺のところで議論が分かれると思います。「大学でどこまでを」という問題。私ども、大学で教育している者にとっては、社会の要請としては、実践能力の高い、社会に出てから看護師としてすぐに働ける「プロフェッション」を養成してほしいということに大学教育が必ずしも応え切れていないなど、大卒の看護師の実践能力の問題などもありますけれども...。
私は、座長でありながら少し発言させていただきますと、私自身はやはり、大学で即、実践能力が付くような人材を育成するということは多少の限界があるのではないか、むしろ実践能力そのものは、社会に出てからでいいんじゃないか。大学の中では、もう少し考える力のような基本的な能力を大学の中で養わなければ、社会に出てから伸びないんじゃないかと思っているのですが、どうもその辺のところで、私は還暦を過ぎているんですが、「考え方が古いんじゃないか」と、このごろは大学の中でも叩かれています。
若者たちの発想は、そういう"昔の大学"というイメージではなく、大学の中で社会性や職業訓練をしていくという状況になっているじゃないかと。この辺の議論で、さまざまな立場の方々から違った意見も出されていて、私も「あまりそこに固執しない方がいいのかな」という思いも、このところありますけれど。
【坂本すが委員(日本看護協会副会長)】
私は、(日本看護協会の)副会長という立場(からの発言)なんですけれども、先ほどの事務局(厚労省)からのお話の中にもありましたが、「国民のニーズ」ということを考えないと。大学だけで成り立っていくのではないと思います。
今の「国民のニーズ」を見ていくと、大変、変化しております。10年前とですね。そして、看護師に大変レベルの高いものを求めています。レベルの高いものを求められていることや、ドクターの不足のことにも関連して、医療のいろんな変化に対しても、ナースに対する期待が大きいです。
そのときに、看護師は20%ですね、1万何千人が大学を卒業している訳ですから、大学(卒)の看護師にも求められるものは同じですね。そうするとですね、どのようにして、それに応えていくかというと、基礎教育をきちっとしないといけないということが大前提だと思います。これは、厚生労働省が「医療の質の確保と向上」との関係から話してきた内容と全く一致することです。
そこで、「看護師の基礎教育」ということと、「保健師・助産師の基礎教育」ということを、もう、一緒にしていっては論じられないと、私は思います。4年間の基礎教育をきちっとするということ、そして、看護師の教育の考え方というのは、ここで変えないといけないと私は思っております。
「どのように変えるか」というと、やはり医師が今まで、ずーっといろんなことで、そばにいてやっていたものから、ある程度、予防と地域も含めて全部、「自律した看護師」というものを育成する。それが、大学の中できちんとやっていることが、私はこれから求められる「国民のニーズ」に応えていくことだと思っています。
そして、免許を取る助産師と保健師に関しましては、「免許を4年間の中で取れるから」ではなくって、免許を取れるのは別に設ける。そういう意味では、4年間をベースにして、そしてきちっと看護師教育をした上で、免許は、助産師と保健師については、「別枠」で、きちっと確立していく。それが恐らく、「国民のニーズ」にまずは応えていくことだと考えています。
【中山座長】
ありがとうございます。(先ほど挙手した)小山委員、何かございますか?
(更新途中)
なんだか医師の臨床研修制度と同じで、やる前からこれくらいの問題点は分かっていそうなのに、それでも強行してやっぱり困っている、と言う気がしますね。
保健所の統廃合なんか以前からの方針なのだし、助産師学校を廃止して大学に統一したはいいけど受け入れ病院が減って分娩実習ができないとか、どれも予想できたことではないでしょうか?
山口先生
コメントありがとうございます。
この会議は、いろんな思惑が絡み合っているような感じがします。