看護教員は「専門家」を育てるのか、「人」を育てるのか
看護学校の教員に必要な資質は、看護の専門性を伝えられる臨床実践能力か―。看護教員の養成方法や生涯教育などについて話し合う厚生労働省の検討会で、学校法人・後藤学園(東京都)の理事長を務める後藤修司氏は、「看護教員は専門家を育てるのか、人を育てるのか」と問い掛け、学生に安心感を与えられるような教育者としての資質を重視。「画一的に『看護教員はこうでなくちゃ』というのは、ちょっと違う」と述べた。(新井裕充)
5月14日に開かれた厚生労働省の「今後の看護教員のあり方に関する検討会」(座長=永山くに子・富山大大学院医学薬学研究部看護学科長)の初会合では、看護教員に必要な資質として、「人を育てる」という教育者としての資質か、「看護の専門家を育てる」という臨床実践能力かが、大きな対立点となった。
これに関連して、同検討会で議論する「看護教員」とは、看護系大学の教員に限定する意味か、それとも准看護師の養成所の教員も幅広く含めるかも争点になった。
医政局看護課の野村陽子課長は、「まずは絞らないで全体についていろいろ出してもらって、その中で整理していきたい」との考えを示したが、看護教員の資質をめぐる議論では、「看護の専門性を伝えられるような臨床実践能力が必要」などの意見が相次いだ。
そのような中、後藤修司委員(学校法人・後藤学園理事長)は「学生が非常に多様化しているのと同じように、教員も相当に多様化している」と指摘した上で、次のように述べた。
「論文を書いて大学の先生になりたいという人もいるが、ずっと寄り添って子どもを育てるということに生きがいを感じている人や、臨床の現場と(教育を)つなぐことに生きがいを感じている人もいる。いろんな人がいるので、各教員の能力をそれぞれ高めていけるような仕組みがすごく大事。あまり画一的に、『看護教員はこうでなくちゃ』というのは、ちょっと違うかなという気がする」
後藤修司委員が発言を終えると羽生田俊委員(日本医師会常任理事)がにやりと笑ったが、即座に井部俊子委員(聖路加看護大学長)が反論。看護教員養成の補助金をめぐる争いの火ぶたが切られたように見えた。