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「看護学教育と指定規則は合わない」―大学の看護人材の養成検討会

【中山座長】
 ありがとうございました。委員の中には、大学での看護学教育を担っている委員と、医学教育を担っている委員、それから、これまでの厚生労働省、文部科学省のさまざまな委員会で、看護学教育をどうするのかを討論した委員と、看護学教育にはそれ程なじみがない委員と、さまざま方がいらっしゃるかと思います。とりわけ、私たちのように分かりきっている委員は「すすっ」と進んでしまいがちですので、忌憚(きたん)のないご意見を頂ければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 今、事務局から(説明が)ありましたように、この「論点メモ」を踏まえながら、とりわけ(論点)1の保健師、助産師、看護師、3つの職種の教育で大きな問題点になっているところなどを出しながら、学士課程の看護学教育をどうするのかということをまず最初に検討していただければと思っております。

 (統合化したカリキュラムは)大学の4年間の中に、「保健師」「助産師」「看護師」の3つの国家資格が受けられるようなカリキュラムを統合してはめ込んであるような大学の教育と考えていただいていいと思いますが、多くの大学では、看護師と保健師の国家試験を、専任の、要するに看護学部あるいは看護学科、看護学専攻に入学した学生は全部取れる仕組みをカリキュラムに持っていますが、助産師は、多くの大学でやらないところもあれば、選択もあるなど、一般的な看護学教育の在り方について、この辺りも踏まえまして、どなたか先生方、ご自由に発言していただければと思うのですが。

【村嶋幸代委員(東京大医学系研究科教授)】
 私は地域看護学を担当しており、「全国保健師教育機関協議会」に(会長として)所属する立場ですが、全国の保健師教育の動向などを見ると、保健師(になろうとする学生)は、看護系大学に入学すると、保健師コースを取らざるを得ないんです。保健師の国家試験は、(保健師コースを)取らないと卒業できないということが統合カリキュラムにございます。いろいろな課程をこなさなければ卒業できないので、すべて地域に実習に出ている。そうすると、関心のある学生もいれば、関心のない多くの学生も「卒業要件」だから行かざるを得ない。そうすると、関心のない学生も多数行くことになりまして、現場では大変多くの時間を割き、かつ消耗感もある。

 ぜひ、今の、全員(保健師国家試験受験に必要な科目・実習が)卒業要件になっていることは、ぜひやめてほしい。これは、現場側から強く聞くところです。特に、全員が(保健師コースを)取ることによって、現実の業務に支障をきたしているという調査結果を基に、今の統合カリキュラムをぜひ廃止するように要望されたとうかがっています。

【中山座長】
 (保健師の養成学校が)全国に180校近くあり、その全学生が現場で実習をする。看護師の場合は病院ですが、(実習を受け入れる)病院はかなりある。看護学部のある看護学科、看護学専攻なら、看護師の専門教育を受けるというのは誰にでも分かる。
 しかし、保健師教育ということになると、それを全部にやっていくと、保健センターなど、あらゆるところで「引き受けきれない」という現状があります。それに伴って、先日の(日本看護協会や全国保健師長会など5団体でつくる「日本保健師連絡協議会」が文科省に提出した)要望書を見ましても、十分な実習体制ではなく十分な実習時間でもなく、それで国家試験に臨んでしまうことが(保健師の)質を下げているというご意見です。ということですね? (村嶋委員、うなずく)
 ほかに、ございますか。

【平澤美恵子委員(日本赤十字看護大教授)】
 私は、(会長として)「全国助産師教育協議会」(全助協)に携わっていますので、助産師教育の現状を申し上げたいと思います。先ほど座長がおっしゃったように、助産師教育は(看護基礎教育期間内の)「課程選択」か「科目選択」ということで行われております。(助産のコースを選択する学生の)絶対数は、やはり1ケタか、多くて2ケタですね。4年間の中で、積極的にそちら(助産のコース)を勧めるために、どのような実習をしたらよいかの研究をなさっているところもございますが、全助協の調査では、かなりの大学で苦労しているというのが実態です。

 今年度から、(指定規則の改正により)単位数が22単位から23単位になります。どれぐらいの教育を4年間の中でしていくかという調査をしましたら、少ないところで6単位、多いところでは努力して20単位。6単位と少ないところでは、「母性看護」で読み替えをしている。指定規則の中で、「10例前後の分娩を(経験する)」ということが決められていますので、分娩介助のみを行うように(助産師)教育が限定して行われている実情から、ご存じのように今は産科医が医療。それから、「周産期学」においては、やはり高度な実践能力を持つ助産師が期待されておりますので、現在の4年間の教育に限界が生じているのが実態でございます。

 (2004年に)天使大学さんが、(「助産師」と「助産の教育者」を育成する日本で唯一の)専門職大学院になられてから、修士課程で教育する大学が続きまして、それから助産師教育のみを行う1年間の専攻課程を持つ教育機関も出てきました。このように、4年間の中で無理してきて、「もうやり切れない」という思いから教育の見直しを図っているという実態がございます。やはり、4年間の教育で助産師教育をやるのは無理があるのではないかという状況です。

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