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勤務医対策で、「ドクターフィー」を導入か (上)

4月15日の中医協基本問題小委員会1.jpg 医師不足が深刻な産科や小児科などの病院勤務医の負担を軽減するため、診療報酬を医師に直接支払う「ドクターフィー」の導入が浮上している。(新井裕充)

 医師不足をめぐっては、「医師の絶対数が不足している」という考えのほかに、「医師が偏在しているに過ぎない」との考えもある。
 現在の国の政策は、「絶対数の不足」と「偏在」の両方を改善する方向で進められ、「絶対数の不足」については医学部の募集定員の増加を決定。「偏在」については、「地域偏在」と「診療科偏在」に分けて対策が進められている。

 医師偏在のうち、大都市部と地方で医師数に格差がある「地域偏在」に対しては、2004年から始まった新人医師の臨床研修制度の見直しを中心に検討が進められ、都道府県ごとに研修医の募集定員に上限を設ける方針などが既に決まっている。
 しかし、研修医を医師不足の地域に誘導するような仕組みの導入に対しては、「希望する病院で研修を受ける機会が制限される」「医師の計画配置につながる」などの批判がある。

 一方、産科や小児科、救急医療などを担う病院勤務医が不足している「診療科の偏在」に対しては、2008年度の診療報酬改定で病院勤務医の負担軽減策が「緊急課題」に取り上げられ、医師の事務作業を補助する職員の配置を評価するなど新たな対策が講じられたが、勤務医の労働環境は「1年前と変わらない」という調査結果が4月に出ている。

 このような状況から、病院勤務医を優遇するために何らかのインセンティブを導入すべきとの意見もある。その一つとして、診療報酬を医師に直接支払う「ドクターフィー」の導入が浮上しているが、「ドクターフィー」に消極的な厚労省が"重い腰"を上げるかが注目される。

 舛添要一厚生労働相は3月10日の閣議後の記者会見で、診療報酬体系の見直しに関する質問に対し、次のように述べている。
 「ドクターフィーを入れることによってインセンティブが高まる。しかし逆にドクターフィーを入れることによって平等に診療ができないようなことだって生まれる危険性があります。だからアメリカでも議論が分かれているのです。ドクターフィーを入れるかどうかでも大検討会をやらないといけないような感じがします。ただ、やはり中央社会保険医療協議会で物事を決める過程、それから診療報酬をどのように決めるかは地方交付税の決め方と同じで、厚生労働省の中でも専門家以外は分からないと思います。やはりすぐ分からない複雑な仕組みというのはそろそろ見直して、国民が見て、『ああ、こういう形でお医者さんの給料が決まるのですね。こういう形で一錠何円って決まるんですね』というのがもっと明確になった方が良いような気がします」

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