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勤務医対策で、「ドクターフィー」を導入か (上)

■診療科別の収支データを反映か

4月15日の中医協基本問題小委員会2.jpg 診療科ごとの医師の偏在に対しては、「ドクターフィー」を導入する方法ではなく、診療科別の収支データを診療報酬に反映させることも考えられる。

 昨年6月13日に開かれた中医協の診療報酬調査専門組織「医療機関のコスト調査分科会」で、池上直己・慶應義塾大医学部教授は「医療機関の部門別収支に関する調査研究」について報告し、「公的な調査として活用可能な段階になった」と自信を見せた。

 報告の中で、池上教授は「診療報酬改定において診療科別収支の情報が必要。病院における管理単位は診療科で、これを個々の診療行為や技術だけでなく、診療科全体の入院と外来の収支を見るべき。昨今の産婦人科あるいは小児科の問題も、やはり診療科が1つの基準となっていることから見ても、診療科で収支を見るということは非常に重要」と述べている。

 一方、「ドクターフィー」について池上教授は「一体何なのかというのがよく分からない」とした上で、「手術の傾向度を見ても、これは医師の人件費だけについての費用補償ではなく、看護師、臨床工学士の人件費、あるいは特定保険医療材料以外の材料費、あるいは手術室使用料、あるいはレーザーメス等々を含めたものなので、その医師の人件費だけを取り出して別立てにこれを算定してみても直接役に立たない」と退けている。
 その上で、「日本は基本的に勤務医なので、診療科が1つのマネジメントの単位であり、診療科として見てその収支を見た方がより有意義」と指摘。「産婦人科は08年度改定前の値だが、診療科として見た場合に黒字だったので、ドクターフィーという医師報酬と医師人件費だけを取り出してどれだけの意義があるか若干疑問があり、ドクターフィー、ホスピタルフィーという分け方ではなく、診療科という分け方のほうが適切だ」と主張している。

 厚労省は、診療科ごとの収支データを診療報酬改定の基礎資料として活用したい意向だが、昨年7月16日の中医協・基本問題小委員会では、池上教授の「診療科部門別収支計算方法」に対して、委員から「実態と違う結果が出ている」など疑問の声が上がった。

 中医協の遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)は、次の診療報酬改定でも勤務医の負担軽減策を引き続き実施すべきとの考えを示しているが、「ドクターフィー」の導入など具体的な方針はまだ明らかにしていない。
 ただ、池上教授との共著である「医療保険・診療報酬制度」(勁草書房)で遠藤会長は、「現行の診療報酬体系から技術料相当分を何らかの基準で切り離し、医療技術間の相対評価を医療サイドが行い、価格に換算する係数を審議会等で議論するという方法をとることは可能であろう」と述べている。

 また、医師の技能格差を診療報酬に反映させるかについては、実施上の問題点を挙げながらも、「(医師の)技術の向上のインセンティブとして技術水準を報酬に反映させることは方向性としては正しいと考える。比較的実現性が高い方法は、個々の医師の技能評価ではなく医療機関の『技術力』を評価し、それを診療報酬に反映させる方法である」としている。
 さらに、現在の診療報酬制度の課題としては、▽診療報酬とコストが対応していない▽技術の評価方法が不十分▽出来高払いが中心▽体系が複雑―の4点を挙げている。

 現在、診療報酬をめぐる中医協の議論は、DPCと外来管理加算に時間を取られ、入院基本料の議論は遅々として進まない。
 4月15日の基本問題小委員会では、ようやく入院基本料をめぐる議論に着手した。(下)では、同日の会合で厚労省が示した詳細な資料と、これに対する委員の反応をお伝えする。


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