文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

「救える命」か「予算確保」か―0.14%の子どもの命、どう考える


■エピペンをすべての救急車に積むべきか?
 
 今回厚労省が出した通知には、「重度傷病者が自己注射が可能なエピネフリン製剤を現に携帯している場合は、当該重度傷病者はあらかじめ医師から自己注射が可能なエピネフリン製剤を交付されているものとして取り扱って差し支えない」と記載されている。
 つまり、救急救命士は患者がエピペンを処方されていることが確認できれば、本人のものでなくても使用できるということになる。救急車に予備のエピペンを積載しておけば、患者や家族がエピペンをどこに置いたか分からない場合でも救急救命士が実施できる。
 エピペンはアドレナリンの含有量に応じて大人用と子ども用の2種類があるため、2本積載しておくことが考えられる。エピペン1本当たり約1万円の費用がかかり、1年間程度は救急車での保管が可能という。ただ、その場合消防機関がエピペンを購入しなければならないこと、救急救命士が救急車に乗っていない時に必要になった場合にどうするかなどの問題も起こりうる。
 
 
 事務局は、実際に現場から「エピペンを救急車に積むのですか」との問い合わせもあるとして、検討会での議論を求めた。
  
 海老澤元宏委員(国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部長)は、救命率の向上を考えればすべての救急車に積まれているのが望ましいとした上で、「理想ではあるが、予算の問題がある」と述べた。
 
 大友康裕委員(東京医科歯科大救急災害医学分野教授)は、「エピペンは処方を受けている人が前提なので、処方を受けているけど持っていない人がいた場合ということになる。確率的に難しいのでは」と、実際の適用ケースが少ないことを示唆。事務局は、「学校現場で使用することぐらいしか考えられない」と応じた。
 
 郡山一明委員 (救急振興財団救急救命九州研修所教授)は、この検討会自体が救急救命士がエピペンを処方されている人に対する救護について議論するという稀少ケースを議論していると指摘した上で、「稀の稀について議論しておくことも必要では。コストパフォーマンスは悪いが」と述べた。
 
 永井秀明氏(東京都消防庁救急部救急指導課長、野口英一委員=東京消防庁救急部長の代理で出席)は、個人的な意見と前置きした上で、「エピペン積載は予算の執行で無理では。エピペンが他への使用があるなら考えられるとも思うが、万が一の、それまた万が一のために1万円使って、東京消防庁は229台の救急車があるが、年間229万円というのは財務は通らない。こちら側が『尊い命を救う』と主張しても難しいだろう」と述べた。
 1  | 2 |  3  |  4 
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス