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搬送先決まらない2次患者を運ぶ「東京ルール」、年間実績1万732件

 東京都は4日、2次救急病院が患者の搬送先を選定する「東京ルール」について、制度が始まった昨年8月末から今年7月末までに、1万732件の実績があった事を公表した。都は「救急医療機関の意識も向上してきている」との評価を示しており、今秋にも医療機関側と救急隊側の受け入れに関するマッチング調査を行って検証を進める予定だ。(熊田梨恵)

東京ルール実績.JPG 東京ルールは、国内で相次ぐ救急受け入れ困難の問題を解消するため、都が昨年8月末から始めた独自の搬送システム。受け入れ困難なケースは重症度の高い患者よりも、2次救急レベルの患者に多いとされることに着目したシステムだ。
 都内を12地域に分け、各地域に搬送コーディネートを行う2次救急病院の「地域救急医療センター」を配置。ルールが実施されるのは、救急隊が2次救急レベル以下と判断した患者で、医療機関への受け入れ照会を5回以上行ったか、搬送先選定に20分以上かかったケース。救急隊がセンターに連絡して調整を依頼し、調整担当医師が地域内での受け入れ調整を行う。地域内で受け入れられなかった場合には、東京消防庁にいる搬送コーディネーターが地域間での調整を行う。それでも受け入れ先が決まらなかった場合は、患者がいる地域のセンターが受け入れる。センターでの受け入れは、通常の受け入れと、夜間や休日などに一時的に患者を受け入れて翌日に転送する「一時受け入れ」の形がある。

 昨年8月末から今年7月末までの間、東京ルールが運用されたのは1万732件で、1日平均32.1件。このうちセンターが受け入れたのは7343件と、約7割を占める。センターでの受け入れは通常の受け入れが6609件で、「一時受け入れ」は734件。センター以外の病院が受け入れたのは2965件だった。

 患者の年齢層を見ると、70歳以上が3729人(34%)と最も多く、60歳代が1576人(15%)、40歳代が1357人(13%)と続く。性別は男性が6353人(59%)、女性が4379人(41%)。
 事故の種別は、「急病」が7243件(67%)、「一般負傷」が2201件(21%)、「交通事故」が368件(3%)、「加害事故」が185件(2%)、「自損」が101件(1%)など。
 病院で初診時に「軽傷」とされたのが5301件と50%を占めた。「中等症」は4379件で41%、「重症以上」は364件で3%だった。
 救急隊が認識した患者の特徴としては、「高齢者」が3409件(32%)、「アルコール」が1392件(13%)、「精神」が938件(9%)、「住所不定」が361件(3%)、「薬物中毒」が316件(3%)、「常習者」が203件(2%)、「結核」20件などだった。
 
 また、5回以下の照会で受け入れられていたケースが、ルールが実施されていた地域では昨年9月からの半年間で19万460件(97.5%)と、一昨年同時期の18万997件(96.2%)に比べて増加していた。また6回以上のケースは、昨年9月から半年間で4843件(2.5%)と、一昨年同時期の7140件(3.8%)に比べて減っていた。都はこれらの数字を示した上で、「救急医療機関の意識も向上してきている」と、周囲の2次救急病院も協力的になってきたとの見方を示した。

 ただ、都が同日開いた東京ルールに関する検討会で、濱邉祐一委員(都立墨東病院救命救急センター長)が「何がどうなったから『良かった』と言えるのかというコンセンサスが取れていない」と述べるなど、運用実績の評価方法については疑問の声もあった。

 また、濱邉委員は「東京ルールで一番大変なのは翌日。自分たち(医療機関)が苦労するのではなくて、福祉保健局がやってくれるというのがルールだったはず」と、野宿者や精神疾患のある患者などを一時受け入れした場合、個々の医療機関がその後の福祉サービスとの連携などに苦労しているとも指摘。都は取材に対し、各地域で開かれるルールに関する会合に「区市町村の人達にも声をかけて入ってもらう事もやっていく」と話し、福祉行政担当者への理解を求めていくとした。また精神科病院関係者も会合に参加してもらうなどして、精神科救急医療との連携も視野に入れていくとした。
 検討会の有賀徹会長(昭和大学病院副院長)は取材に対し、「段階的に、まずは今までなかなか受け入れられなかった患者さんを『一時受け入れ』であっても受け入れるようにする仕組みを作ったのがこの東京ルール。この次に福祉との連携に関する、仕組みを作っていく」と話し、福祉行政との連携が次の課題になるとした。


 都は救急医療体制と東京ルールについて検証するために、搬送患者に関する救急隊側と医療機関側のマッチング調査を今秋にも行う予定だ(調査票(案)、下)。全ての搬送を対象に1週間調査し、東京ルールに該当するケースのみ2週間行う。約1万3000件が対象になるとみられ、搬送にかかった時間や患者の社会的背景、受け入れられなかった理由、患者の転帰などについて調べる。年内に速報値を出すとしている。

医療機関記入用紙.JPG救急隊記入用紙.JPG

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