「救える命」か「予算確保」か―0.14%の子どもの命、どう考える
エピペン実施に関する関係機関の連携体制について、阪井委員は「声を発するのは上流にいる医師と義務付けておけばいいのではないか。医師が先生や所轄消防署に回っておけば、現場の消防署や先生たちもやりやすいのでは」と、自身が在宅医療にかかわった時に関係機関を回ったことが奏功した例を示した。
大友委員はこれについて、医師の手間が増えたり、知識の乏しい医師が委縮したりすることを懸念して「処方数が減るのではないか」と述べた。
また、永井氏は、アナフィラキシーについて、「救急隊が一生に一度遭うか遭わないかのケース」とした上で、細かい連携体制を作っても有効活用されるかどうかが不安だとした。
海老澤委員は、「実際のアナフィラキシーは亡くなっているのが60人だが、有病率は0.14%。医師にも救急をやったことがない人がいて恐怖心もあるため、医療レベルの違いで処方率が違う。アドレナリンが効くと実体験している患者欲しがっている。ターゲットは相当大きいということをぜひ知って頂きたい」と述べ、実際の患者はかなり多いと指摘した。
このほか、救急救命士がアナフィラキシーを疑ってエピペンを使用したが、実際は発症していなかった場合のリスクも議論に上がった。海老澤委員は、「100メートル走をした時の緊張感などが15分間続くような感じ」と例示し、心臓病や脳血管疾患などがない若年の患者であれば大きな問題になる可能性は低いと指摘。リスクを懸念して使用しないことと、使用して助かることについて「秤にかけて、どう捉えるかでは」と投げかけた。
会合終了後、阪井委員は取材に対し、「確かに予算の面からするとエピペンを積むのに消防機関が厳しいというのは理解できる。ただ、アナフィラキシーによってその後に障害を持つことなどを考えた場合、医療費や患者の生活からしてもよい結果になるはず。そうした医療経済の観点をもっと議論の中に入れていくべきではないか」と話した。海老澤委員は、年間にアナフィラキシーの患者が約10人は入院しているとして、「エピペンは打つタイミングさえ間違えなければ確実に救える命を救える。それをどう考えていくか」と語った。
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