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診療報酬の不正請求、コンサル会社が悪い?

7月24日のDPC評価分科会.jpg 「経営支援ツール」などを謳い文句にしたソフトを通じて診療報酬の不正請求に手を貸すコンサルティング会社などに対し、厚生労働省が調査のメスを入れようとしている。(新井裕充)

 中央社会保険医療協議会(中医協)のDPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)は7月24日、厚労省が示した「平成21年度DPC評価分科会における特別調査(案)」を了承した。

 この調査は、DPC(入院費の包括払い)を導入している病院の中から、不適切な請求方法をしている病院を選び出すために実施する。選ばれた病院は厚労省に呼び出され、あれこれと追及される。

 名目上は、厚生労働大臣の諮問機関である中医協の調査専門組織(DPC評価分科会)がヒアリングを実施するという形式を取る。しかし実際には、「問題のあるDPC病院」を厚労省が選定するため、実質は厚労省主導のヒアリング調査。

 このヒアリングは、毎年秋に行われている。DPC評価分科会の委員らが「3日以内の再入院がこんなに多いのはなぜか」などと各病院の院長らに厳しい質問を浴びせる。"厚労省の代理人"とも言うべき医療関係者が、臨床現場の医師らを叩く。

 これは、見ていてあまり気分の良いものではない。「厚労省の医療事故調査委員会ができたら、こんな風になるのだろうか」などと、ふと思ってしまう。

 今回、厚労省から呼び出しがかかる可能性があるのは、①特定の診断群分類で診療内容が他の医療機関と比べ大きく異なる ②後発医薬品等の薬剤の使用状況が他の医療機関と比べ大きく異なる ③DPC導入前と導入後で、診療内容が大きく変化した ④データの質に関して確認が必要であると思われる─のいずれかに該当する病院。

 調査案によると、すべて「病院」が対象になっている。このため、委員から「データの構築やコーディングでは『ベンダー』がかなり大きく関与している」、「勝手に(診療報酬が高くなる)『アップコーディング』をしちゃうようなソフトを作っているので、ぜひ調べていただきたい」などの意見が出た。

 現在、DPCを導入している病院は1500を突破し、急激な拡大を続けている。この立役者として、DPCデータを作成するソフトを販売する「経営コンサルティング会社」が挙げられることがある。
 よく聞くケースは、DPC病院に自社のソフトを導入させ、保守・管理から経営支援まで幅広くサポート。同じソフトを導入している病院と自院のデータを比較する「ベンチマーク」によって、経営の効率化が図れるようアドバイスしてくれる。これならば問題は少ない。

 ところが、コンサル会社などが提供するDPC用のソフトには、より高い診療報酬が得られるように「診断群分類」を選び出してくれる機能が付いているものもある。このため、同分科会の委員らは、ソフトを提供する会社もヒアリングしないとDPCの不正請求の実態が明らかにならないことを指摘する。
 しかし、このようなソフトが広く流通していることはもっと前から知られていることであり、「何を今さら」という唐突感がある。なぜ、こんなことを突然言い出したのだろうか。

 昨日の記事(E・Fファイルの統合)でも触れたが、厚労省は、医療機関の情報システムに深く関与する狙いがあるのだろう。今後は、厚労省の「お墨付きソフト」を全国のDPC病院に導入することもあり得る。
 ただ、これが医療の標準化や透明化につながるかどうかは疑問があるが、医療機関のコスト調査を進める上では効果を発揮するように思える。
 今年度のコスト調査分科会でも、ソフト開発の話題が出た。もし、DPC病院を対象とするソフト販売などで多額の利益を生み出したら、それはどのような団体を通じて、どこに還流されるのだろうか─。

 ヒアリング調査案に関する厚労省の説明と委員らの発言は、次ページ以下を参照。
 

 【目次】
 P2 → ヒアリングを実施するための調査案 ─ 厚労省の説明
 P3 → 「ベンダーからのヒアリングも考えて」 ─ 小山委員
 P4 → 「何らかの権限を持って呼び出さなければいけない」 ─ 山口(俊)委員

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