文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

中央社会保険医療協議会 (中医協) ― 09年度第10回(7月29日)

7月29日の中医協.jpg 中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は7月29日、総会と診療報酬基本問題小委員会を開催した。(新井裕充)

 総会の議題は、▽医療機器の保険適用 ▽先進医療専門家会議の報告 ▽平成22年度診療報酬改定 ▽医療費の動向等─の4項目。

 基本問題小委員会の議題は、▽診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会からの報告 ▽その他(社会医療診療行為別調査の検証等に関するワーキンググループ)―の2項目。

■ 総会

1. 医療機器の保険適用
 7月1日付けで保険適用した医療機器について厚労省の担当者が報告。質問や意見はなく、「中医協として特段の意見なし」とした。新たに保険適用したのは、医科と歯科を合わせて100件。

2. 先進医療専門家会議の報告
 保険診療と併用できる先進医療として、▽無拘束型多点感圧シートセンサを用いた検査(第2項先進医療) ▽内視鏡下手術用ロボット支援による冠動脈バイパス移植術(第3項先進医療)─の2件を認めることについて、厚労省の担当者が報告した。

3. 平成22年度診療報酬改定
 社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で、次期診療報酬改定に向けた議論がスタートしたことを厚労省の担当者が報告。両部会で出された主な意見を紹介したが、日本医師会常任理事の藤原淳委員が「私のメモと印象が違う」などと噛み付いた。
 藤原委員は7月15日の医療保険部会で、「地域医療の荒廃の原因の1つとして『選択と集中』があった」などと述べ、診療報酬の配分見直しよりも全体の底上げを強調する趣旨の発言をした。ところが、厚労省のまとめでは「選択と集中」の考え方を是とするような書きぶりになっている。
 ※ 詳しくは、診療報酬の配分見直し論は、是か非かをご覧ください。

 このほか、意見交換では今後の議論の進め方が議論になった。前回の診療報酬改定では、中医協の議論が社会保障審議会の医療部会と医療保険部会に先行。厚労省は両部会で改定の議論を開始する前に、中医協に「診療報酬改定の検討項目」を示した。
 今回の改定では、両部会が策定した基本方針に基づいて中医協が議論するという"建て前"を重視する方針。このため、厚労省は「今後の議論のスケジュール」という形式で、「検討項目」を示す方向とみられる。
 ただ、実際には社会保障審議会も中医協もすべて厚労省主導で進められるため、形式だけの問題に過ぎない。総選挙前の現時点では、診療報酬改定の基本方針は「社会保障国民会議」の最終報告で既に決まっているとの見方もできる。
 ※ 詳しくは、中医協の位置付け、見えないままをご覧ください。

4. 医療費の動向等
 2008年度の医療費の動向について、厚労省の担当者が20分以上かけて詳細に説明。資料自体は既に厚労省のホームページで公表されている。08年度の概算医療費は前年度から約6000億円増加して34兆1000億円、医療費の伸び率は対前年度比1.9%。
 担当者は、2008年度診療報酬改定の改定率がマイナス0.82%だったことを考慮して、医療費の伸び率を例年通り3%台であると説明した。

 これに対し、日本医師会常任理事の中川俊男委員が「稼働日数補正をしなければ2.67%の伸びにとどまる」と主張。「3%台という主張を堅持したいがために、稼働日数補正を行った」などと批判した。

■ 基本問題小委員会
 
1. 診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会からの報告
 中医協の調査専門組織である「医療機関のコスト調査分科会」が実施した2008年度「医療機関の部門別収支に関する調査」の結果について、田中滋分科会長(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)が報告した。
 同調査について田中分科会長は、「調査結果も安定しており精度の高い調査となった」と評価した上で、調査対象を広げるために簡素化した調査方法を検討することを提案し、了承された。

 田中分科会長は、同調査と診療報酬改定との関係には言及せず、委員からの意見や質問も出なかった。質疑で、全日本病院協会会長の西澤寛俊委員は「計算手法としては確立された」と評価したものの、今回の調査結果をそのまま診療報酬改定の基礎資料とすることに慎重な姿勢を示した。
 支払側の対馬忠明委員(健保連専務理事)も、レーシック手術など自由診療の収入が含まれていることが診療科別の収支(眼科黒字など)に影響を与えていることを指摘した。

 会議終了後、厚労省の担当者は記者団に対し、「(今回の調査結果は)次の改定では使えない」と明言。今年度はまず調査の簡素化を検討し、それを踏まえた上で来年度の調査につなげたいとの意向を示した。
 ※ 詳しくは、「コスト調査」という名の医療費抑制ツールをご覧ください。

2. 社会医療診療行為別調査の検証等に関するワーキンググループ
 厚労省大臣官房統計情報部の「社会医療診療行為別調査」のデータが、同省保険局の「メディアス」(医療費の最近の動向)と大幅に乖離している原因を調べるため、中医協の遠藤会長ら4人を検証メンバーとするワーキンググループを設置することを決めた。ワーキンググループの第1回会合は、8月中に開催する予定(非公開)。
 「社会医療診療行為別調査」は、外来管理加算の影響額をめぐる日本医師会と厚労省との議論に決着を付けるカギを握っていただけに、どこか腑に落ちない部分もある。
 
 
 
 (この記事へのコメントはこちら

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス