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「眼科」「外科」「産婦人科」は黒字 ─ 診療科の収支を改定に反映か

コスト調査分科会2009.jpg 医療機関の運営コストをいかに診療報酬に反映させるか─。この課題に取り組んできた池上直己・慶應義塾大教授のグループが開発した計算方法によると、最も黒字だったのは「眼科群」で、「外科群」と「産婦人科群」は辛うじて黒字を維持、「内科群」は収支差額がゼロだった。「2010年度の診療報酬改定に反映させるか」について、厚生労働省は「中医協で決めていただく」との回答にとどめている。(新井裕充)

 厚生労働省は7月10日、中央社会保険医療協議会(中医協)の医療機関のコスト調査分科会(分科会長=田中滋・慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)で、「平成20年度医療機関の部門別収支に関する調査報告(案)」を示し、了承された。

 調査によると、ほとんどの診療科で外来が赤字、入院は黒字だった。入院について見ると、「レセプト診療科別」で2桁のプラスが出ているのが、小児科、外科、形成外科、呼吸器外科、産婦人科、婦人科、眼科、耳鼻いんこう科。入院と外来を合わせると、眼科と呼吸器外科が大幅な黒字だった。

 今回の調査の特徴は、類似するレセプト診療科をまとめた「診療科群」を設けたこと。「標榜診療科とレセプト診療科の対応付けは病院により異なる」という問題があったため、36区分の「診療科」を11区分の「診療科群」にまとめた。 「診療科群」は3ページを参照。

 診療科別の収支(コスト)を診療報酬改定の基礎資料とする場合には、この「診療科群」という区分を使うものとみられる。

 そこで、「診療科群」別の収支状況を見ると、入院の収支差率で2桁のプラス(黒字)が出ているのが、小児科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科。2桁のマイナス(赤字)が出ているのが精神科。外来では、内科だけが1桁のマイナスにとどまり、ほかは2桁のマイナスになっている。

 入院と外来を合わせると、「皮膚科群」が最も赤字(収支差率マイナス46%)。次いで、「放射線科群」(同22%)、「精神科群」(同19%)、「麻酔科群」(同17%)、「整形外科群」(同5%)などの順。
 一方、最も黒字だったのは「眼科群」(収支差率プラス18%)。「外科群」と「産婦人科群」はともに同5%と、辛うじて黒字を維持した。「内科群」は収支差率がゼロだった。

 今回の調査結果について委員らは、「精度が高まった」などと好意的に受け止めた。厚生労働省の担当者は「今回の調査結果を今後どのように活用するかは、(同分科会の上部会議に当たる)中医協・基本問題小委員会で議論して決めていただく」としているが、同小委員会で受け入れられるかは未知数だ。

 昨年7月16日、2007年度の「調査研究」の結果を報告した中医協・基本問題小委員会では、支払側の対馬忠明委員(健保連専務理事)が次のように指摘した。
 「入院の収支を見ますと、かなり高いところに位置しているのが外科とか整形外科、このあたりが非常に高い。そして下の表、これも同じ科別だが、高いのが産婦人科、こういったところが高めに出ている。そういったところは私ども、日ごろかなり厳しいんじゃないかというふうに伺っている」

 これに対して、田中滋分科会長(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)は調査客体の性格などを挙げた。
 「1つは対象病院の特殊性。DPCをめぐる病院が対象であるということが挙げられる。それから、経営が厳しい、院長として経営が大変だとおっしゃる理由のうち、人の採用が難しい、医師の獲得が難しい、維持が難しいという話と、収支あるいはコストなどの会計上の話は多少違っていて、医師が獲得できていればどうなるかがこちらに載っている。実際にそもそも科目として開設するのが難しい、医師が獲得できないケースと、治療を提供できる病院の会計上のデータが多分ずれているんだと思う」

 今回の調査は、190病院に調査票を発送して127病院から回答を得た(回収率66.8%)。回答した病院はすべてDPCを導入している病院だった。調査内容が複雑で多岐にわたるため、厚労省は「最後まで付いて来られた病院が結果的にDPC病院だった」と説明している。

 同分科会の委員の関心は、「調査結果や調査手法をどのように活用するか」という点に集まったが、厚労省は明確な回答を避けた。
 また、池上直己・中医協調査専門組織委員(DPC評価分科会委員、慢性期入院医療の包括評価調査分科会長)は、「こういう収支の実態であり、現在の診療報酬点数の構成からするとこのような実態となったということ。それについて、どういう行為を行ったからプラスであるとかマイナスであるということまでの分析はできていない」との回答にとどまった。

 医療機関のコストと診療報酬との関係をめぐっては、2003年3月に「健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針(医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針について)」が策定され、診療報酬体系の見直しの方向性として、「医療機関のコスト等の適切な反映」が示された。

 具体的には、「入院医療について必要な人員配置を確保しつつ、医療機関の運営や施設に関するコスト等に関する調査・分析を進めるとともに、医療機関等の機能の適正な評価を進める」とされた。
 この方針を踏まえ、同分科会は、2003年度から厚労省保険局医療課委託事業として、財団法人・医療経済研究機構が着手していた「医療機関の部門別収支に関する調査研究」を継続。これを受け、2003年度以降、「統一的な医療機関の収支把握のための研究」が進められることになった。2006年度までの経緯は、下表の通り。

調査研究の経緯.jpg なお、調査結果を公表した7月10日の同分科会で、厚労省が説明した内容(要旨)は次ページ以降を参照。

 【目次】
 P2 → 調査の概要
 P3 → 調査の内容
 P4 → 入院、外来別
 P5 → レセプト診療科別
 P6 → 診療科群別
 P7 → 患者1人1日当たりの医業収支
 P8 → 収支率の分布
 P9 → 「等価係数」について

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